Re: 想いよ届け 〜病篤き君に |
- 日時: 2014/08/29 23:27
- 名前: どうふん
- ロッキー・ラックーンさん、感想ありがとうございます。
当方も、ロッキーさんの「しあわせの花」シリーズは愛読しておりますので、光栄です。 また、気が付いたことがあればコメントして下さい。
で、ご明察のとおり、今回はナギの心情について触れたいと思います。 ご期待に添えれれば幸いです。
第13話
ナギは自室に戻った。 パーティの喧噪が聞こえてくる。 あの歌声はカラオケパーティかルカのゲリラライブか。 どちらにしても興味はない。
「ちょっとカッコをつけすぎたか・・・」 ナギはしばらくぼんやりしていたが、寝っ転がったままゲームのスイッチを入れた。
部屋に戻ったナギをマリアが追いかけてきたのだが、部屋には入れなかった。 無性に一人になりたかった。
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クリスマスの「真実」を知ったのが10日程前だった。 しばらく部屋に引き籠っていた。今まで以上に。
マリアの顔も見なかった。 食事の時も部屋の外に出なかったが、マリアは部屋まで運んでくれた。 食べ終わった食器と盆を外に出しておくといつの間にか片付いていた。
その5日くらい後だったと思う。マリアのメモが食事に添えられていた。 「ヒナギクさんが快方に向かっており、間もなく退院できる」とのことだった。
「良かった」これだけは本当にそう思った。 しかし、ヒナギクが退院すればハヤテも戻ってくる。 どうする。クビにするか。
同様にクビを宣告したマリアとはまだ口を利いていないが、自分の心情を思い遣り、ワガママを許してくれているマリアへの怒りは失せている。 「マリアには悪いことをした」という程度には反省もしている。 だが、問題はハヤテだ。
思いがまとまらないまま食事を頬張るナギの携帯が鳴った。 あの着信音はハムスターだ。 「またあいつか」
あの日以来、誰の電話にも出ていなかったが、あんまりしつこく掛けてくるハムスターに根負けして出たところ、ヒナギクの退院パーティに誘われた。 会場は「どんぐり」ということだったが、 「どうせやるなら屋敷でやれ。広すぎてうんざりしている」 なぜあの時あんな答えをしたのか自分でもわからない。
ヒナギクが元気になったのは嬉しかった。しかしそれだけではないだろう。 自分から黒いオーラが出ているのは気づいていた。 会場を提供し、主催者となったのはハヤテへの精一杯の嫌味だったのかもしれない。 ちょっとは針のムシロに坐ってみやがれ。
しかし今日、当のハヤテは悪びれるどころか、あのザマだ。 私の意地悪を受け流し、というより素直に好意と受け取り、喜んでいた。
果ては、告白のお膳立てをしてくれたと本気で考え、私に向かって感謝を繰り返し述べていた。
考えてみれば当たり前か。 そもそもハヤテは私を愛するどころか、私の気持ちにすら気付いていないのだから。 意地悪される理由も思いつかないのだろう。
「結局は恥の上塗りだった・・・のか。ハヤテ、お前は本物の馬鹿だ・・・。 一体何をやっているんだ、私は」
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ナギは自分の愚行に悪寒を覚える一方で、その馬鹿を憎めない自分が不思議だった。 しかし、一年にも満たない間、これを長いとみるか短いとみるかはともかく、自分がどれだけハヤテを頼りにし、救われてきたのか、それを忘れることはできなかった。
ノックの音がした。 今度は誰だ。ハヤテか。あいつに言うべきことはもう言った。 ヒナギクとのデートだって許してやった。
相変わらずデリカシーのないやつめ。 今は一人にしろ、ハヤテ。
しかし聞こえてきたのは違う声だった。 「ナギ、開けて」その声を聞いたナギは、跳ね起きた。
「ヒナギク」
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