Re: 想いよ届け 〜病篤き君に |
- 日時: 2014/08/03 06:45
- 名前: どうふん
- 第2話と第3話、続けて投稿します。
ところで、ヒナギクさんの父親って本編に出てきたことがありましたかね。 私が忘れているだけなら、ごめんなさいです。
<第2話>
ヒナギクの周りに亡霊とも悪霊ともつかない連中が群がっていた。 「よくも俺たちの宝を」「今すぐに返せ」「八つ裂きにしてくれる」・・・・ 「待って。これにはわけがあるの。人助けのためにどうしても必要だったのよ」 当然奴らは聞く耳など持ち合わせていない。じりじりと近寄ってくる。 「ご、ごめんないさい。あなたたちに必要なものだったら返すわ。だからしばらく待って」その声も届かず、亡霊の一人が飛びかかってきた。ヒナギクは宝剣を召還して身構えたが、もともと悪いのはこちら、という意識が振り下ろすのをためらわせた。 ヒナギクは四方から押し寄せる亡霊たちに一瞬にして飲み込まれて悲鳴を上げた・・・。
「ヒナギクさん。ヒナギクさん」目を覚ましたヒナギクをハヤテが心配そうに覗き込んでいた。 「怖い夢でも見たんですか」 「ハヤテ君は大丈夫?変な夢を見たりしない?」 「ヒナギクさん、僕より自分を心配して下さい」ハヤテの目には大粒の涙が浮かんでいた。「ヒナギクさんがこのまま元気にならなかったら、僕は一体どうしたらいいか・・・」「何を言ってるの。私は大分楽になってきたし大丈夫よ」 昨日も聞いたセリフだと思ったが突っ込みを入れる気にもなれなかった。 「皆は帰ったのね。」 「は、はい」 「ハヤテ君ももう帰ったら」意外なセリフにハヤテは反応できなかった。 「あたしなら大丈夫だから・・・。ハヤテ君にはやらなきゃいけないことがあるんでしょ。」 「な、何でそんなことを言うんです。僕の大切な人が、僕のせいで苦しんでいるのに、それを見捨てて帰れと言うんですか」 取り様によってはかなり際どいセリフであるが、この天然ジゴロにそんな意識はない。 さらにはヒナギクにも期待というか勘違いする気が起こらない。病気で気力・体力が落ちているのがその原因であるが、無人島でハヤテに繰り返し告白した(つもり)にもかかわらず、全く気付いてもらえなかったことが相当ショックであったからに違いない。 結局ハヤテ君にとって、私なんてどうでもいいんだ・・・。そんな思いが胸を占めていた。 その時、バタバタと慌ただしい足音が近づいてきた。
<第3話>
病室に飛び込んできたのはヒナギクの両親だった。ハヤテにとっては、母親とは何度も会っているが、父親と顔を合わせるのは初めてだった。 「君が、綾崎君か。いったいなぜこんなことに。説明してくれ」その声は怒りに満ちていた。 「実は・・・(カクカクシカジカ)」 「そんな危険なところにウチの娘を連れて行ったのか」ハヤテは反論できない。 「君はヒナギクを何だと思っているんだ。何のつもりだ。恋人をそんなところに連れて行くような男にウチのかけがえのない娘はやれない」 「へ、あの・・・」それは違うんですけど・・・とハヤテは思ったのだが、ハヤテが口を開くより早く、父親はハヤテの襟首を掴むや懇親の力で突き飛ばした。 「待って、あなた。それじゃヒナちゃんが可哀想よ」割って入ったのは母親だった。ハヤテのことも良く知っている優しい母親だったが、「ヒナちゃんが」というセリフは意外だった。
「ヒナちゃんはしっかりした子よ。知っているでしょ。それにオバケが嫌いなヒナちゃんが、そんなところに無理強いされて行くわけない。ヒナちゃんはきっと自分の考えで大好きなハヤテ君の力になりたかったに決まっているわ」 父親は、ハヤテを突き飛ばしただけでは収まらず、引きずり起こして今まさに殴ろうとしていたのだが、母親の叫び声を聞いてハヤテを放した。
しかしハヤテにしてみればどう反応していいものか混乱していた。そっとヒナギクの方に目を遣ったのだが、ヒナギクはいつの間にか眠っていた。 「あ、あの・・・。別に僕はヒナギクさんの恋人というわけでは・・・。大体ヒナギクさんにいつも迷惑かけているだけでして、困らせて怒られてばかりなんです。ただ、ヒナギクさんにはいつも助けてもらっていまして・・・今回もそうです。ヒナギクさんが、手伝ってくれると言ったんで甘えてしまいましたが、あんな所とは思わず・・・。本当に済みませんでし・・・」
最後までは言えなかった。ヒナギクの母親が強烈な平手打ちをハヤテの顔に食らわせたのだ。
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