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対象スレッド 件名: Re: 兄と娘と恋人と
名前: タッキー
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Re: 兄と娘と恋人と
日時: 2015/01/08 23:51
名前: タッキー

ヤッス!!タッキーです。一応完結はしましたが、アフターというこで更新させていただきます。
ま、いろいろ喋るのもなんなので、それでは・・・
更新!!








いつもの黒い執事服ではなく、白いモーニングを着ているハヤテが落ち着かない気持ちで控室の中をぐるぐると歩いていると、唐突にドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ。」

「どんだけ緊張しているのだ。お前は・・・。」

「だって結婚式ですよ!!結婚式!!緊張しないほうがおかしいですよ!!」

「分かった。分かったからそんな大声を出すな。」

落ち着きのないハヤテを片手で制したナギが着ている黒いパーティードレスは彼女がハヤテと初めて会ったときと同じもので、それは彼女なりに今日の出来事を祝いたいという気持ちの表れなのかもしれない。ナギは自分の後ろで手を組むとハヤテと向かい合った。

「私はさ、小さい頃からいろんなことに恵まれていて、望んだらなんでも手に入ると思ってたんだ。でも本当に欲しいものは手の届かないところにあって、それを知ってしまった私は見上げることすらやめてしまっていた・・・。」

「お嬢様・・・。」

「だけど2年前のクリスマス・イヴ。あの日にお前と出逢った。あれからお前が私に微笑んでくれて、そんなお前を私は好きになって・・・いろんなことがあって・・・生まれてきた意味っていうか、とても大切なことを知れた。だから今、お前が幸せであることを私は心から祝福したい。結婚おめでとう・・・そして、今までありがとう。」

ナギが見せた笑顔にハヤテの目は潤んでいた。抱きしめたい衝動を必至に抑え込んだハヤテは執事らしく、片手を胸に手を当てて主に頭を下げた。

「本当に・・・ありがとうございます。」

「うむ。ハヤテ・・・今のお前はヒナギクがこの世界にいると思うだけで生きていける・・・それぐらいヒナギクのことを愛しているのだろ?それはヒナギクも同じだ。だから、ちゃんと支えてやるんだぞ。」

ナギはそう言いながらドアノブに手をかけ、勢いよく開け放った。

「さ!そろそろ式が始まるぞ!!行って来い!!」

「はい!!!」

緊張が完全に消えたわけではない。しかしそのドキドキは今のハヤテにとって心地よいものでしかなかった。ハヤテは真っ白なウエディングドレスに身を包んだ恋人を・・・この後彼が絶対に目を奪われるだろう花嫁を・・・ヒナギクのことを・・・迎える準備ができていたのだ。












     After〜Prequel〜

        『CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU』










電気の点いていない部屋にテラスからの月明かりだけが差し込んでいる。決して自分に陰影を作っている光のほうを見ようとしないヒナギクはそんな薄暗い生徒会室のソファで、クッションを抱きしめながら置時計のことをにらんでいた。今日は彼女がハヤテと付き合い始めてから訪れる二度目の誕生日。もはや白皇の恒例行事と化してしまったと言っても過言ではないヒナギクのにぎやかすぎる誕生日パーティーは今回も去年、一昨年と同じように行われ、その中でヒナギクはハヤテから生徒会室へ来るよう呼び出しを受けていた。実際のところ去年も呼び出されて生徒会室で二人きりになっていたのだが今回は少しハヤテの様子が違っていた。どこか煮え切らない感じで、それでいて何か決心をしていたような表情をしていたのだ。

「な、なに緊張してるのよ。去年だってこんな感じだったんだから問題ないじゃない。」

意味のない言い訳をしているヒナギクはかれこれ30分くらい前からここにいる。今までとは何かが違うハヤテにドキドキしているのはあきらかなのだが、負けず嫌いの彼女がそれを認められるわけがないので待ち時間も退屈せずにすんでいるわけだ。

「あと5分か・・・。」

待ち合わせは午後9時、現在は午後8時55分。ヒナギクが寂しそうに声を漏らしたその瞬間に扉をノックする音がして彼女はソファから飛び上がった。その慌てていた行動が一変してそっと扉を開けたヒナギクの目に映ったハヤテはなぜか少しだけ頬を赤らめていた。

「えっと・・・あらためて18歳の誕生日おめでとうございます。ヒナギクさん・・・。」

「あ、ありがとう・・・。」

ハヤテはヒナギクをテラスの前、ちょうど月明かりが二人を包む場所まで連れていくと彼女の手に小さな袋を握らせた。シャカシャカと音が出るその袋の感触はヒナギクがよく知っているもので、それに触れているだけで自分にとって特別な時間の記憶が鮮明に蘇ってくる。

「あんまり大きくないですけど、このクッキーが僕からの誕生日プレゼントです。もちろん手作りですよ。でも、今日はそれとは別に大事な話があるんです。」

「え?」

ヒナギクがクッキーを持っていないほうの手、つまり彼女の左手をハヤテは両手で優しく包んだ。ハヤテの左手薬指にはめてある指輪が自分の肌に当たるひんやりした感触と、自分の指輪が彼の手のひらに当たっている感覚をヒナギクはハヤテの手の温かさの中で感じていたが、ハヤテはその指輪をヒナギクにできるだけ違和感を感じさせないように優しく抜き取った。ヒナギクはがそれに驚かなかったと言えば嘘になるが、不思議なことに彼女がそれで不安をつのらせることはなかった。

「ホントはもっと早く伝えたかったんですが、ヒナギクさんの誕生日である今日がもっと特別なものであってほしかったので・・・。」

そう言ったハヤテはもう一度ヒナギクの左手薬指に指輪をはめた。それは彼がさっき抜き取った指輪ではなく、まったく別のもの。ヒナギクがハヤテに渡したような装飾の綺麗な指輪でもないし、ハヤテがヒナギクに渡したような可愛らしい指輪でもないが、そのいたってシンプルなプラチナのストレートリングはヒナギクにとってとても美しく見えた。

「これは・・・?」

本当は分かっているのに聞かずにはいられない。そんなヒナギクの気持ちを察したのかハヤテはクスリとほほ笑むと、温めようとするようにヒナギクの手の甲を自分の手のひらでゆっくりとなぞった。

「もちろん、結婚指輪です。」

「も、もちろんって・・・。いつ買ったのよ・・・?」

少しおどおどとしているその小さな問いかけにハヤテは首を横にふった。

「自分で作ったんです。」

「え?」

「岳さんとレナさんの結婚式を覚えていますか?あのとき二人が交わしていた指輪を見て素直に素晴らしいと思いました。それでどこで買ったのか聞いてみたんですが、どこでも買ってないと・・・。あの指輪、岳さんが一から作ったものらしいですよ。」

誰よりも幸せな二人がいたあの日、自分もこんなふうになれるのかなと心を躍らせたあの結婚式をヒナギクは鮮明に覚えている。彼らのような愛の形に少しでも近づきたい。そう思ったのはハヤテもヒナギクも同じだった。

「それに・・・僕たちだけのものが欲しかったんです。今までいろんな人に助けられて、救われて・・・。感謝はしきれないほどしていますし、そんな環境の中にいれることを幸せに感じています。でも、やっぱりヒナギクさんを支えるのは僕だけだって言いたいんです。岳さんのように神さまじゃない僕には無理だって分かってますし、この指輪だって結局岳さんに教えてもらいながら作ったんですけど、そんな気持ちでいるんだってことを、ヒナギクさんには知ってて欲しかったんです。」

自己満足でもいいから、ハヤテはそんな気持ちなのだろうが、ヒナギクにはそれでもよかった。ハヤテと同じことを少なからず考えていたヒナギクにとってはそれを言葉にしてくれたことに意味があり、とても嬉しいことだったのだ。
月明かりがハヤテの指の合間に見えるリングを照らすと、鏡面で仕上げられているそれは輝きをより一層引き立たせた。うっとりとした表情で指輪をしばらく眺めていたヒナギクは模様だと思っていた少ない溝が文字を形作っていることに気づいた。

「can't take my eyes off you・・・。君の瞳に恋してる・・・か。」

「いや、ここでは少し違うんですよね。」

「?」

不思議そうに首をかしげたヒナギクに、ハヤテは嬉しさを隠せずに思わず笑ってしまった。

「な、なによ!!この訳であってるでしょ!!」

ヒナギクの言ったことは正しい。曲の題名でも有名なこのフレーズの訳は彼女の言った通り「君の瞳に恋してる」で正解だ。

「でもそれは意訳じゃないですか。もっと直接的に訳してみてください。」

ムスッととしているヒナギクはニコニコとしているハヤテを一度だけにらみつけて、彼に言われた通りもう一度自分の指に視線を落とした。

「えっと、たしか・・・。あなたから、目が・・・離せない・・・。」

訳し終えたヒナギクはハヤテの意を理解して赤くなっていたが、ハヤテは満足したように微笑むと姫に忠誠を誓う騎士のように身をかがめ、彼女の手の甲にそっと唇をあてた。

「僕は今も、これからもずっとヒナギクさんのことが好きです。愛しているって、今ならちゃんと言えます。だから伸ばした手が届かなくても、何度もくじけたって構いません。ヒナギクさんの隣にいるために絶対に乗り越えてみせます。だからヒナギクさん・・・。」

ハヤテの優しい青色の瞳がヒナギクの少し潤んだ瞳をしっかりと見据える。伝えたいことをちゃんと伝えられるように、絶対に彼女の心に残るように、そんな気持ちで動かした唇につられてハヤテの手には少し力が入っていた。

「ずっと僕の隣で・・・
























 













 ずっとそこで微笑ってて・・・くれませんか?」











「・・・。」

ヒナギクは答えなかった。その代わりに目から涙を流し、震える体を無理やり押さえつけて一度だけコクリと顔を前に傾けた。少し間違えば誤解されてもおかしくないその仕草にハヤテは再び微笑み、立ち上がると自分の恋人・・・これから自分の妻になる女性を優しく、だけど力いっぱいに抱きしめた。

「僕と・・・結婚してください。」

ヒナギクは泣き止まなかった。

「・・・はい。










































 これからもずっと・・・ずっと、よろしくね・・・。」
















  いや、泣き止めなかった・・・。



































どうも、アフターのほうはいかがだったでしょうか?一応あと一話あります。
今回はハヤテのアニメ3期でお馴染み、eyelisの「CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU」を使わせていただきました。個人的に3期のこのオープニングは素晴らしいと思っています。だっていいもん!スゲー感動したもん!!ちなみにこのSSはハヤヒナでそれにこの曲を使ったんですけど、実際のところこれはハヤナギにぴったりの曲だと思うんですよね。冒頭のほうでナギちゃん出しましたし。
さて、ハヤテくんには直訳のほうで使ってもらいましたが本当は大して変わるわけではありません。ただ、ロマンチックを求めるよりもハヤテには直接的に気持ちを伝えてほしかったですし、それをヒナさんにも聞かせてあげたかったので。
次で本当にこのSSは最後です。今まで読んでくれた方、本当にありがとうございました(これ何度目だっけ?
それでは  ハヤヤー!!