Re: 兄と娘と恋人と |
- 日時: 2014/12/25 12:17
- 名前: タッキー
- ハヤッス!!タッキーです。メリークリスマスです。
今回の冒頭はアカリちゃんがいなくなったその後・・・をやろうと思ったんですが気づけば岳くんたちがイチャイチャしています。取りえずネタとしてやりたいヤツを放り込んだ結果なんですよね。 それはともかく本文は現実と日付を合わせてクリスマスの話です。 それでは・・・ 更新!!
「ヒナちゃんたち大丈夫かな?少し心配かも・・・。」
「別に心配するだけ無駄だろ。ほれ、ホットミルク。」
「ありがと・・・。」
ガウスから受け取ったマグカップはそれほど熱くはなく、むしろ両手をほっこりと温めてくれた。ホント、こういう細かい気遣いはさすがだと思う。そういやガウスって甘いほうが好みなんだっけ。ゆっくりと口をつけてマグカップを傾けると、自分好みの甘さが口の中いっぱいに広がり、そのまま喉に絡みつくことなくすんなりと私の食道を通っていた。好みが同じなのは恋人としてとても嬉しいかも。
「でもさ、アカリちゃんがいないとやっぱり寂しいじゃない?」
「だ、か、ら・・・っ」
ビシッ!!
「あうっ!!」
イタタ・・・。いつだってガウスのチョップはキレがある。結構痛いんだからもうっちょっと手加減してもいいじゃない。いや、今のガウスの強さを考えたら手加減は十分してるのかな?
「ハヤテにはヒナがいるし、ヒナにはハヤテがいる。どちらも欠けてないのなら何も問題はない。」
それまでずっと立っていたガウスはようやく私の向かい側に座り、マグカップを置くと私の頭をくしゃくしゃと撫で始めた。
「そうだろ?」
「・・・うん。」
そうだった・・・。それは私たちが一番分かっていなきゃいけないことだったね。 ガウスに頭を撫でられているのが気持ちいい・・・。多分自覚はないんだろうけど、私にとってはすごく特別な瞬間なんだよ?ガウスが私の頬まで手を落とし、その手に引かれるように私はゆっくり顔を近づけていく。何秒だったか分からない時間のなかで、私は目の前の、おそらくホットミルクのような甘い味がするだろうその唇のことしか考えられなくなって・・・男の子のくせに艶っぽくて、うるうるして可愛いその唇が恋しいくらいに欲しくなって・・・そして・・
「あの・・・あなたたちの家には現在クラスメートが二人泊まってるんですけど・・・。」
「うわぁあっ!!!ヒナちゃん起きてたの!!??」
「たまたま目が覚めたのよ。そしたらもう深夜だっていうのにリビングの明かりがついてたから見に来たら、あなたたちが・・・その・・・。」
ヒナちゃん顔も赤かったけど私の顔も多分あんな感じになってるんだろうな。それにしてもこのタイミングで割って入ってきたってことは私たちの会話も聞かれていたってことだよね?なんか・・・マズクない?
「別に俺たちはお前らのことを心配してただけだぞ?その流れでキスしようとしていただけであって。」
「え!?それ言っちゃうの!!??」
「まぁいいじゃねぇか。それより・・・」
ガウスはそっと私に耳打ちをする。
(ジャマされたんだから・・・な?)
わざと耳に息を吹きかけるようにしてくるのはそこが私の弱い所の一つだと知っているからだろう。もっとも、私の弱いところなんてガウスには熟知されているんだろうけど・・・。 背中をなぞるようにくすぐったい感触が私の身体を這い上り、頭の中はまるで夢心地ともいえるボーッとた感覚が広がっていく。なんにか体をビクンと震わせたのは隠せたと思うけど、どうしても顔が赤くなってう。かろうじて残った力でヒナちゃんの方を見てみると案の定さっきより顔が真っ赤になっていたんだけど、それより問題なのはガウスがイジワル・・・半分八つ当たりみたいなモノなんだろうけど。とにかくこういう時のガウスはあまりロクなことを考えていないってことなんだよなぁ〜。ま、付き合うけどさ・・・。 私は覚悟を決めてガウスに身を寄せる。胸を押し付けるぐらいに近づくと、身長差で顔を見るには見上げる感じになる。そしたらできるだけ甘く、囁くように口から声を漏らす。やっぱり緊張するなぁ。ドキドキするし私の心臓の音がやけにうるさい。
「ねぇガウス・・・もっと近くに来て、私に触れて。・・・私に、キスして・・・。」
「っ!!レナ、いきなり何言ってるのよ!!」
服の上からじゃ分からない、ガウスの骨ばった・・・男らしい体つき。胸に手を置くとガウスの心臓がドクンと鼓動するのを感じる・・・。私と同じように緊張してくれてるのかな・・・。
「ヒナの言った通りだ。見られてるぞ・・・。」
甘い声が聞こえる。寄り添っているうちにガウスの香り・・・男の子に使う言葉だったっけ?とりあえず何故か甘酸っぱい果実のようなその香りを吸い込んでしまい、私は脳が溶けていくような感触に襲われた。だからその後の言うはずのなかった台詞が口から出てしまったのはきっとガウスのせいだろう・・・。
「いいの。だから私のこと・・・メチャクチャにしてもいいよ・・・?」
バタンッ!!!
まぁ当然の結果だろう。ヒナちゃんが乱暴にドアを閉めた音と同時に私たちもバッと体を離した。ていうか今さらだけど私ったらなんてこと言っちゃったんだろう!!?? 火照りが収まらない顔をあげるとガウスが私に背を向けてうつむいている。そういえばガウスって押すときはガンガン押してくるくせにこういうとこではちゃっかりウブというか・・・押しに弱いというか。いや、引きにも弱いのかな。
「あのさ・・・さっきの何か意味あったの?」
「いや、こうすればアカリちゃんに早く会えるぞ〜的な?そんな流れにしようとしたんだけど、レナが・・・。」
「え!?私のせいなの!!??。」
「だからその・・・。ああもう!!だ、か、ら・・・っ!!」
私が反論しようと口を開く前に、ガウスの唇が私の唇に蓋をした。まるでさっきできなかったからとでも言うように深く、濃厚で、息が苦しくなるくらい長いキスだった。私が非力ながらガウスの胸をグーで叩かなければいつまで続けられていたか・・・。ま、なんにしてもそれで私が落ち着いたのも事実だ。ドキドキはしているから大人しくなったの方が正しいとは思うけど・・・。
「レナが俺をその気にさせたんだから、さっきの言葉は取り消させねぇぞ。」
「・・・うん。」
第41話 『お嬢様の執事』
12月25日、世間ではクリスマスと呼ばれる日であり、1年前のハヤテのように不幸な者と、恋人がちゃんといる現在のハヤテのように幸せな者との差がはっきりする日でもある。それにしてもハヤテは人生の負け組からたった1年で勝ち組の最高峰まで昇り詰めたのだから本当に大したヤツである。 そんな勝ち組の綾崎ハヤテは恋人であるヒナギクと二人きりでデート・・・というわけではなく、三千院家の屋敷で主のためにコーヒーを淹れていた。無論、ハヤテがヒナギクをデートに誘わなかったというわけではなく、ヒナギクが用事があるからとハヤテの誘いを断ったのだ。そのことで午前中は落ち込んでいたのだが、今は取り敢えず立ち直っている。
「そういえばお嬢様は今日、どこかのパーティーにご出席されるんですか?」
「まぁ招待はされたが全部蹴った。ウチでやるってわけでもないから準備とかはしなくていいぞ。」
「ふ〜ん、そうなんですか・・・って!!え!?パーティーやらないんですか!!??」
予定が入ると思っていた日に予定が入らず、三千院家で何かをやることを期待していたのもあったのだろうが、大金持ちの令嬢であるナギがクリスマスに何もしないということがハヤテを一番驚かせた。
「いや、だって最近パーティーばっかだったじゃん?お前だろ?ちっこいのだろ?私だろ?昨日もマリアの誕生日でパーティーやったし・・・なんか疲れたっていうか・・・。」
「は、はぁ・・・。」
「ま、そうでなくとも今日は大事な用事だあるんだよ。大事な用事が・・・な?」
コーヒーとは称されているが、実はカフェラテだったりするそれを飲み干したナギはティーカップを置くと席を立ち、まだ納得のいかなさそうな顔をしているハヤテに一言だけ告げて部屋を出て行った。
「ヒナギクをここに呼んでおけ。いいな。」
「え?でも・・・!!」
ヒナギクには用事がある・・・それを言う前に扉は音を立てて閉まってしまい、ハヤテもその言葉を口の外へは出さなかった。まだ微妙に薄茶色の水滴が残っているティーカップを片付けたハヤテは仕方ないのでダメ元でヒナギクに電話はかけてみたが、意外と早くヒナギクはコールを切り、ハヤテの予想していた答えとは真逆の返事をしてきた。
〈私ならもうそっちに向かってるわよ。〉
「え!?でもヒナギクさん、今日は用事があるって・・・。」
〈だから用事よ。よ・う・じ。それにしても昨日はちゃんと二人で過ごしたっていうのに、ハヤテくんったら寂しがり屋さんね。〉
電話越しに聞こえるクスクスと品のある笑い声にハヤテは固まってしまっていた。しかし少しずつ頭の整理をしていくと1つのキーワードが残っていった。
「えっと・・・じゃあその用事ってなんなんですか?」
〈強いて言うならハヤテくんのこれからのこと・・・かな?あ、もう屋敷に着いたから切るね。〉
「え!?ちょっとヒナギクさん!?」
ハヤテはスマートフォンをしまうとすぐさま玄関のほうへ駆け出した。途中でマリアから呼びかけられた気もしたがスピードが緩むことはなく、そのまま大きくて重い扉を難なく開け放つと丁度よくヒナギクも玄関に着いたところだった。
「こんにちはハヤテくん。メリークリスマス。」
「め、メリークリスマス・・・。」
アカリが未来に帰ってしまった日からヒナギクには少し積極性が出てきたとハヤテは感じていた。もちろんそれは少しだけで、人前で腕を組むこともできなかったりキスも最初の一度だけしかしていなかったりで、それなりにウブではある。しかし二人きりの時などは前よりずっと甘えてきたり電話の回数も増えたりで、ハヤテとしては嬉しくはあるのだがどうにも戸惑いを隠せずにいた。 それはともかくヒナギクはクリスマスだというのに学校に行っていたらしく、制服に上にコートを着ている状態だった。しかしマフラー以外は防寒具を着用しておらず、ヒナギクの指先が赤くなっているのに気づいたハヤテは彼女を急いで屋敷のなかに入れると温かいコーヒーを出した。
「それで用事って?僕、お嬢様から何も聞かされてないんですけど・・・。」
「まぁ決まったのはつい昨日だし、ナギの口からは少し言いづらいでしょうね・・・。」
「え?昨日何かあったんですか?」
「うん。えっとね・・・簡単に言うとハヤテくんは昨日の時点でナギの執事じゃなくなったというか・・・。」
ティーカップの中の液体をくるくると回し、少し申し訳なさそうな表情で話すヒナギクにハヤテは何も反応することができずにいた。理解ができずにもう一度問い返そうとしても口を動かすことができず、ヒナギクの伏せた顔を見ていることしかできなかった。
「勘違いするな。執事をクビにしたワケじゃない。」
その声で我に帰ったハヤテが振り返るとナギがマリア、そしてクラウスと一緒に部屋に入ってくるところだった。
「え?それじゃあ何で・・・。」
「ナギ専属の執事ではなくなったということですよ。ハヤテくん。」
いまいち思考が追いついていないハヤテを見てナギはため息をつき、一瞬顔を曇らせた後、一回だけ息を吸い込むと笑顔を作った。
「なんにせよハヤテ。執事長昇格おめでとう。」
「へ・・・?」
「え!?お嬢様、そしたら私はどうなるんですか!!??」
このことを聞かされていなかったのはクラウスも同じらしいがナギはあまり気にしてなさそうな感じで、クラウスへの対応もそっけないものだった。
「だって・・・お前もう今年で定年だろ?」
「・・・。」
「まぁ、ジジィのところに移る手筈になってるから、そこで頑張ってくれ。」
石になって崩れこそはしなかったが、とにかくクラウスはそこからピクリとも動かなくなってしまった。しかしそれはあまり問題ではなく、同じように固まっているハヤテにちゃんと説明するためにナギは彼と向かい合った。
「お前はこの1年間、私のことをよく守ってくれた。成長させてくれた。本当に感謝している・・・。」
ゆっくりと話すナギは懐かしい思い出でも話しているようで、その表情は嬉しそうなのと同時に寂しそうでもあった。
「お前のおかげで私はいろんなことを知って・・・学んで・・・。まだまだ難しいかもしれないけど、私は一人でも生きていけるくらいに強くはなれた・・・と思う。」
ヒナギクもマリアも微笑んでいる。クラウスは相変わらず固まったままだが、だんだんとハヤテの表情は驚きから落ち着きを取り戻し、彼の頭も状況を飲み込み始めた。
「ヒナギクに遠慮してとかでは決してないし、ましてやハヤテの力がいらなくなったわけでもない。でも、私はもう大丈夫だから・・・だから、ありがとう。」
「で、でも・・・僕にはまだ借金があります。白皇の行事で500万くらいまで減ったとはいえ、それでもきっちり返さないと・・・。」
「それなら問題ないわよ。」
気づけばヒナギクが隣に来ていて、ハヤテの手を握っていた。温かい感触が手だけではなく全身に広がっていくのをハヤテが感じたのは、決してヒナギクだけの影響ではないだろう。
「ガウくんがね、ハヤテくんが今までハヤテくん以外のために稼いだお金・・・例えばあなたのご両親に使われてしまったお金とかを集めてくれたの。まぁ、取り戻してくれたっていう方が正しいんだろうけど、とにかくそれは本来ハヤテくん自身のお金であるべきだからってね。」
気づけば誰かに助けられている。支えられている。今のハヤテはそのことを情けないとは思わず、純粋に感謝することができた。
「ヒナギクの言った通り、借金についてはもう全部返済してもらっている。だから改めて言う・・・。私の執事をしてくれてありがとう。これからは執事長としてよろしく頼む。」
「お嬢様・・・。」
ハヤテがヒナギクの方を向くと彼女もハヤテの方を見ていた。ハヤテは自分とヒナギクが考えていることが一緒なのだと感じて嬉しく思い、そしてこうなったからにはきちんとケジメをつけなくてはという責任感も感じた。
「「ありがとうございます。」」
「うむ。それにしてもハヤテはともかく、ヒナギクに敬語を使われるとなんか気持ち悪いな。」
「き、気持ち悪いってどういことよ!!」
「そういうことだよ。そうだヒナギク、ちょっと隣の部屋に来てくれないか。」
「な、なんでよ・・・。」
ヒナギクは最初こそ抵抗したがナギが彼女に耳打ちすると途端に態度を変えてナギについて行ってしまった。残されたハヤテとマリアは顔を見合わせると二人とも肩をすくめておかしそうにクスリと笑った。
「執事長昇格おめでとう。ハヤテくん。」
「ありがとうございます。でも大丈夫なんですか?ほら、いくら成長した言ってもお嬢様やっぱり危なっかしいし・・・。」
「それなら大丈夫ですよ。さすがにハヤテくんみたいに人間離れした肉体とか家事スキルはありませんけど、ナギ自身が見つけた執事がいますから。」
「そうですか・・・。」
誰とは聞かなかった。もちろんハヤテに寂しい気持ちがなかった訳ではないが、今は前に進もうとしているナギを応援しようと決めていたのだ。
「じゃ、執事長としての最初の仕事はその新しい執事さんにいろいろと教えることですね。」
「そうですわね。でもナギの選んだ執事ですし、意外とできる子だと思いますよ。」
「ハヤテー!ハヤテーー!!」
すると再び扉が開き、すごく・・・本当にすごくニコニコしているナギが入ってきた。それがあまりに今まで通りの光景だったのでハヤテもマリアも、本当はあまり変わるものは無いんじゃないかと少し吹き出してしまった。
「ん?どうしたのだ?」
「いや、なんでもないですよ。それよりどうしたんですか?お嬢様。」
「まぁこっちに来てみろ。」
手を引かれるハヤテの表情は晴れ晴れとしていて、手を引くナギの顔も一切曇っていなかった。立場が変わったからといってそれまでの関係が変わるわけでもないし、ましてや壊れることなど決してない。ハヤテがヒナギクの恋人であっても三千院家の執事であることに変わりはないし、逆に三千院家の執事である綾崎ハヤテもヒナギクの恋人であることに変わりはない。そのことに気づいたハヤテは、これからはもっと執事として精進できると感じ、もっと真剣にヒナギクのことを想うこともできると感じた。
「よし。ハヤテ、これが私からのクリスマスプレゼントなのだ!」
扉が開いた先にハヤテが見たのは真っ赤な布と真っ白な毛皮の装飾で作られた服に身を包んだヒナギクの姿。その顔も服と同じように真っ赤に染まっていて、とても可愛らしいとハヤテは率直に思った。
「ちょっとナギ!!なんで私がこんな格好・・・って、ハヤテくん!!??」
去年のように想像の中の白ひげサンタではなく、可愛らしいミニスカサンタが目の前にいる時点でハヤテは既に人生の勝ち組なのかもしれない。
「ヒナギクさん・・・すごく、可愛いです。」
「あ、ありがとう・・・。」
気づけばナギたちはいなくなっていて、二人きりになった彼らがクリスマスをどう過ごしたのかは・・・また別のお話。
どうも、 原作でハヤテがナギちゃんの執事をやめてしまう描写があったのでそれを元にしてみました。本当は24日でやるべきなんでしょうけど、ハヤテが執事長になったのが24日ってことで勘弁してください。 今回は歌というわけだはありませんがハヤテ劇場版のサントラCDから「お嬢様の執事」を使わせて頂きました。サントラってキャラソンとかとはまた違った形で楽しめると思っているのでぜひ聞いてみてください。 ちなみにヒナさんの積極性が少し上がったのはアカリちゃんがいなくて寂しいからというのもあるんですけど、どちらかと岳くんたちを見て羨ましいと感じているからとう設定です。互いが互いに刺激しあっているとう状態でしょうか。まぁ、赤面しているヒナさんは個人的に大好きなのでそれがなくなってしまうことは絶対にないです。 さて、次回はいよいよ最終回です。アフターもやりますけど、一旦終了みたいな感じです。 それでは ハヤヤーー!!
|
|