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対象スレッド 件名: Re: 兄と娘と恋人と
名前: タッキー
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Re: 兄と娘と恋人と
日時: 2014/09/26 04:00
名前: タッキー

ハヤッス!タッキーです。
岳君の話も終り、今回から本格的にハヤヒナやっていきます。あ、ちなみに自分の方針はハッピーですので、レナちゃんの話も後々やります。
それでは・・・
更新!





ナギはいつも通り屋敷の、自分の部屋のベッドで目を覚ました。寝起きでダルイのも、少し小腹が空いているのも、もうちょっと寝ていたいのも毎日とさほど変わっていなかった。変わっていることがあるとすればいつもよりさらに遅い時間に起きたこと、そして・・・泣いていたことだった。

「あれ?なんで私は泣いているのだ?」

それがあくびと一緒に出てきたものではなく、純粋に悲しいから出ているものであることはすぐに分かった。

「あら、今日はいちだんと起きるのが遅かったですわね。何か悪い夢でも・・・て、な、何泣いているんですか!?」

マリアがいてくれることをこんなに嬉しいと思ったことがいつぶりだったかは思い出せない。ただナギは、マリアの声が聞こえた瞬間からポロポロと涙をこぼしていて、マリアがいつも通り呆れ顔で部屋に入ってきたのを見た時にはもう顔がぐしゃぐしゃになってしまっている程だった。

「マリアぁぁ・・・!!!」

「ちょ、ちょっと!いきなりどうしたんですか!?」

ナギは思わずマリアに抱きついていた。マリアはナギの様子にワケが分からず慌てていて、取り敢えず彼女の具合が悪いのかと質問したが、ナギは首を左右に振り、そして謝った。

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。」

「い、いきなり何を謝って・・・」

ナギがメイド服をぎゅっと握ってきたのを見た時、マリアには彼女の気持ちが少し分かったような気がした。だから何も言わず、ただ、小さい自分の主を抱きしめてあげた。

「早起きもする、学校だってちゃんと行く。もう迷惑かけないから・・・だから、どこにも行かないでくれ・・・。一人は・・・一人は嫌なのだ・・。マリアまで居なくなったら、私は・・・」

「生活を改めてくれることはとても嬉しいですが、たとえそうでなくても、私はナギの傍にいますよ。ずっと傍にいます。だから・・・大丈夫ですよ。」

すすり泣くナギにマリアがかけた言葉は決して多くはなかったかもしれない。しかし、今のナギにはそれで十分だった。未来でどうなるか分からなくとも、今、ここにいてくれると誓ってくれたことが、何よりも彼女の心を満たしていた。
大丈夫、その言葉だけが何度も繰り返し聞こえてきて、ナギは本当に幸せだと思ったが、それでもあと一つだけ足りないものがあることにもちゃんと気づいていた。今更自分に嘘はつけない。もっと自分の心に正直に、そして素直に生きなければいけないと思った。





























ここに、ハヤテがいてくれれば・・・そう思った。





















その次の日、11月21日の昼ごろに、三千院家に客の来訪を知らせるチャイムが鳴った。

「あら、ヒナギク・・・さん?」

ヒナギクと酷似しているナギぐらいの大きさの少女は、マリアには何も言わず、ただナギに会いたいと言ってきた。取り敢えず信用できそうな少女だったので屋敷に通し、ナギの部屋まで案内した。

「お、お前・・・」

「ナギお姉ちゃん!行くよ!」

「へ!?行くってどこに!?てかそんなに引っ張るなー!!!」

ナギはそのまま連れて行かれてしまったが、マリアはあまり気にしないで、別のことを考えていた。

「それにしても、あのヒナギクさんに似ている子、誰だったのかしら?なんかハヤテ君みたいな面影もありましたし、もしかしたら未来から来た二人の子供とか・・・て、そんなことありえませんわね。」

自分の言った事を軽く笑い飛ばしながら、マリアは屋敷の掃除に戻っていった。このときのマリアは、まだアカリのことを知らなかったのである。





  第30話 『Heart of Flower』





11月21日、庭城から戻ってきた次の日、ハヤテはバイトも放ったらかしで岳の家で一人悶々としていた。昨日岳に言われたことが引っかって何もする気にもなれず、だからといって気持ちが晴れることもなかった。自分のやり方が間違っていることも痛い程分かっていたし、自分が今何をするべきなのかも分かっているはずなのに、どうしても一歩を踏み出すことができずにいた。

「僕は・・・何をやっているんだろう?」

ハヤテがそう呟くと同時にリビングのほうから大きなため息が聞こえた。覗いてみると岳が椅子に座っていて、背の部分に全体重を預けているような感じでだらしなくくつろいでいた。







「はぁ〜、いっそもう一回世界滅ぼしてみようかなぁ・・・。」

なんだか物騒なことを言いながら。

岳の正体を知っているハヤテにとってはシャレにならないことだったので、念のためやめてもらうよう話しかけた。岳は冗談だと言って呑気にお茶を飲んでいたが、それでもハヤテには冗談には聞こえなかったのだ。

「まぁそんなに心配するなって。さすがに反省してるから今はそんなことをするつもりはない。」

「今は!?今はって言いましたよね!?」

「ま、最終手段ってことだ。それじゃ、俺は出かけてくるから。バイト行かないんならアカリちゃんと留守番よろしくな。」

まだ朝は早く、アカリはまだ起きていなかった。もっともハヤテが一睡もできていなかっただけで、彼女が起きるのが遅いというわけではない。むしろヒナギクと同じくらいの早起きである。
岳が出て行ったあと、ハヤテは朝食の準備をしてアカリを起こしに行こうとしたが、ドアを先に開けたのはアカリの方だった。さすが早起きである。

「あ、おはよう、アカリ。」

「おはようパパ・・・。」

「朝ご飯はもうできてるから、顔洗って着替えてきてくれる?」

「は〜い。」

ハヤテは少しおぼつかない足取りで歩いていくアカリの背中を、しばらく見つめていた。髪をまだ結っていない彼女は本当にヒナギクに瓜二つで、本当に娘なんだなと改めて実感させられた。

(僕とヒナギクさんが結婚しなかったら、アカリはいなくなっちゃうんだよな・・・。)

ハヤテはアカリのこと、ヒナギクのこと、そして自分自身のことを考えていると頭が破裂してしまいそうなほどに悩んでしまい、もうどうしていいか分からくなってしまっていた。それこそ顔に出てしまう程で、朝食の時にアカリから心配されてしまった。

「なんかパパ、今日元気ないみたいだけど・・・大丈夫?」

「へ?いや、いつも通りだよ。いつも通り・・・。」

そう言ながらハヤテが箸を口に運んだ直後、アカリが盛大にため息をついた。

「まったく、パパもママも、本当に嘘をつくのが下手だよね・・・。」

「え?」

アカリは礼儀正しく箸を置いたあと、ハヤテに真剣な表情で向かいあった。ハヤテはそんなアカリにポカンとしていたが、彼女は気にせず話し始めた。

「パパはママのこと・・・好き?」

「はへ!?い、いきなり何を・・・」

「いいから・・・!」

ハヤテは知らないが、今のアカリの表情は、彼女がヒナギクにハヤテのことを好きかと尋ねた時と、全く同じ顔をしていた。つまり、どんなに真剣かがハヤテにも伝わってきたのである。

「好き・・・だよ・・・。」

小さくそう答えたハヤテの顔は彼自身でも分かるくらいに情けないものだった。ハヤテはそんな自分が嫌で、そんな自分の表情を娘に見せたくなくて、俯いてから顔を上げようとしなかった。

「こんなこと言ったら岳さんに怒られるんだろうけど、それでも、僕には・・・ヒナギクさんを幸せにできる力がないから・・・。」



   バンッ!!!


それはアカリが机を叩いた音だった。それにビックリしてハヤテが顔を上げると、アカリが机越しに詰め寄ってきた。

「そんなことない!!」

「そ、そんなことないって・・・未来で僕がヒナギクさんを幸せにできてないって言ったのはアカリのほ・・・」

「あ、あれは嘘!!!言葉のあやって言うか・・・と、とにかく!あれは嘘だったの!」

あからさまに「え〜」という表情をしているハヤテにアカリは申し訳無そうに俯いた。

「だって・・・だって・・・」

「!!!」

心配して席を立ち、向かい側のアカリのところまで行った時にはじめて、ハヤテは彼女が泣いていることが分かった。

「私、パパが優しいってこと・・・気づいて・・・なかったんだもん・・・。」

「な、なんでそれでアカリが泣くのさ。未来での僕が悪いんじゃ・・・」

「パパは・・・パパは未来にはいないの・・・。」

「!!!」

その言葉にハヤテは目を見開いた。しかしそれは当然の反応で、未来に自分がいないとすれば、それは・・・

「僕・・・死んでるの?」

「分からない。でもパパは私が物心ついたときにはもういなくなっていて、だからといってお墓とかそういうのもないし、ママは何にも言ってくれないけど・・・ただ、絶対に帰ってくるよって、凄く悲しそうな顔で言うの・・・。」

アカリが抱きついてきたのをハヤテは反射的に受け止めたが、その手には力が入っていなかった。アカリがハヤテのことを好きではなかったのは、結局ハヤテのことをよく知ることすらできていなかったのが原因で、そして結局、ハヤテはヒナギクのことを悲しませることになる。その運命を突きつけられて、ハヤテの頭の中は黒く塗りつぶされてしまった。

「パパ・・・?」

「ごめんアカリ、いきなりだったから頭の整理をしたいんだ。少し散歩に行ってくるけど、留守番よろしくね。」

そう言ってアカリから身を離し、ハヤテは出て行ってしまった。

「でも、パパの話をするママは・・・とても楽しそうな顔もしているんだよ・・・。」

アカリの言葉は、ハヤテが閉じたドアによって遮られてしまった。



















アカリも予想はしていたが、ハヤテは2,3時間たっても戻ってこなかった。その代わりとして、岳は戻ってきていたが。

「で、アカリちゃんはハヤテとヒナの仲を戻そうとしたけど、逆効果になってしまってどうしていいか分からなくなってしまったと・・・。」

一部始終を話したら、それを簡単にまとめられてしまったが、アカリはコクンと小さく頷くことしかできなかった。

「アカリちゃんはまだ自分が消えてもいいって思っているのか?」

「・・・あんなこと言ったけど、本当は消えたくなんかないよ。私、ママと・・・パパの娘でいたい。」

「じゃぁ、そうハヤテに伝えればいい。さすがにそこを言われるとあいつも覚悟を決めるだろうさ。」

ハヤテの性格や、アカリが彼の娘であることをふまえて、岳はそんな意見を出した。少し縛ってしまう感じもあるが、そうでもしないと動かないのも事実なのだ。それでもアカリは、岳の意見に頷くことはできなかった。

「そうしたら、きっとパパは笑わなくなる。いつかママを悲しませることに怯えてしまう。それじゃダメなの。もっと・・・ちゃんと幸せになって欲しいの。」

岳は思わずため息をついてしまった。

「まったく、親子そろって理想が高いというか・・・。」

「?」

岳は不思議そうな顔をしているアカリの頭に手を置き、そのまま撫で始めた。

「ま、ハヤテもヒナもいいやつで、娘であるアカリちゃんも、本当にいい子ってことだ。」

アカリは少し納得のいかなさそうな顔をしていたが、そのことについて特に噛み付いたりはしなかった。自分の両親がいい人だと言われたことが嬉しかったし、そして、岳に撫でられていることで少し気分が落ち着いた。
それでも問題が解決したわけではなかったが、岳は他に解決策を考えていないわけではなかった。ただ、それはアカリにとってシンプルで分かりやすく、そして抽象的な答えだった。

「でも、アカリちゃんが言うようにハヤテを本当に幸せにしたいんだったら、取り敢えず頑張るしかないな。」

それを岳が言い放ったあと、少し間が空いた。結構重大なことについて悩んでいて、それは彼も知っているはずなのに、出てきた答えが「頑張れ」。アカリでなくとも不満を持つだろう。

「えっと、岳さん?なんかちょっと投げやりすぎな気がするんだけど・・・。」

「そうか?俺は結構まっとうな答えだと思うぞ?それに、頑張るのはアカリちゃんもだけど、ハヤテと・・・それからヒナもな。」

その言葉にアカリは何かを見つけた気がした。思わず岳の顔を見てみると、彼はニコニコと微笑んでいた。

「ハヤテなら公園にいるだろうけど、その前にナギちゃんのところに行くといい。ハヤテが今抱えている借金をどうにかしてくれるだろう。」

「でも、パパはそれじゃ意味がないって。」

「勿論、その後のことは俺がちゃんと片付けとく。それに、今優先しているのはハヤテとヒナの幸せ、だろ?」

アカリは知らないが、岳は一応神様なのだ。その気になれば借金の存在自体を消すことも、誰かの記憶を改竄して誤魔化すこともできる。彼がそれをやらないのは面白さ半分、そしてハヤテたちに頑張ってもらいたい気持ちが半分なのである。ただ、岳は力を合わせてもどうにもならないこともある事を知っているから、少しだけ力を貸すのだ。
彼の正体を知らなくとも、アカリには岳がなんとかしてくれると信じることができた。

「うん!それじゃ、行ってきます!」

「ああ、行ってらっしゃい。」

アカリの姿が見えなくなっても、岳はしばらく手を振っていた。












































ハヤテは公園のベンチに座っていた。

「未来に僕はいない・・・か。」

アカリからこれを聞いたときは正直信じることができなかった。しかし、最初のアカリの自分に対する接し方などを考えてると、それが事実なんだと嫌でも実感させられた。

「ヒナギクさんに迷惑をかけてないだけマシなのかもしれないけれど、それでも・・・。」

どうやっても彼女を悲しませるという事がどうしても受け止めきれずに、ハヤテはただ頭を抱えて悩むことしかできなかった。岳に頼み込むという考えも浮かんだが、それも一瞬で消えてしまった。20代で亡くなる人間などたくさんいるというのに、自分だけというのはムシが良すぎる話で、ハヤテの性格ならなおさらだった。仮に頼み込んだとしても、岳も了承しないだろう。

「なんで・・・こうなっちゃったのかな・・・?」

泣きそうなくらいに打ちひしがれていると、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえた。それは名前で呼ばれたわけではなかったが、それでも自分を呼んでいるとわかったのは、大切な存在だったからだろうか。

「パパ!!」

「あ、アカリ!?それと・・・お嬢様!?」

「三千院さん、じゃないのか?」

ナギの皮肉たっぷりの発言にハヤテは俯いてしまった。反省だってしているし、後悔すらもしていた。だからそこを突かれると胸が張り裂けるほどに痛かった。

「もう!ナギお姉ちゃん言い過ぎ!」

「あーはいはい。親子そろってまったく・・・。」

アカリとナギは隣に並んでいるだけで、まるで姉妹のように見えた。顔立ちが似ているというわけではないが、雰囲気的に、そう感じられた。

「ところでハヤテ。」

「は、はい!」

「お前、ヒナギクのところに行かなくていいのか?」

いつの間にかナギたちはハヤテの目の前まで来ていて、アカリはハヤテに抱きついていた。ナギはそれをジト目で睨みながらも、彼の言葉を辛抱強く待った。

「僕には・・・ヒナギクさんと一緒にいる資格も、力もないんです。運命にだって見放されて、結局は悲しませてしま・・・」

「そんなことないもん!」

それは朝と同じだった。アカリはハヤテの腕の中でまた泣いていた。

「パパは弱くなんかない!ママと一緒にいる資格だってある!それにパパは優しいもん!ママだってそこが一番好きだって言ってたもん!」

ハヤテはなんとかアカリを落ち着かせようかしたが、彼女は泣き止まず、ハヤテに訴えるのもやめなかった。

「パパは優しいから、私たちをおいてどこかに行ったりしない。ママも、私も、パパのこと大好きだから・・・パパのこと、信じてるんだよ?だから・・・大丈夫だよ・・・。」

「アカリ・・・。」

最後のほうはとぎれとぎれになってしまっていたが、ハヤテには彼女の言いたいことがきちんと伝わっていた。

「前にも言っただろ?本当の愛は、不運なんかに負けないって。」

「お嬢様・・・。」

少しだけ、本当に少しだけ、ハヤテは気持ちが晴れたような気がした。

「ま、ナギちゃんとアカリちゃんの言うとおりだな。」

気がつくと岳まで来ていて、ナギの肩をポンと叩いていた。

「お前が幸せになったからって誰も咎めやしないし、事情があるのなら、お前がヒナを悲しませても誰も怒ったりはしない。それにそんな世界があっても・・・ヒナが壊してくれるんだろ?」

「!!!」










-私がその世界を壊してあげる-


-ハヤテ君のために、ハヤテ君の隣にずっといるから-


-悲しくて泣いているときは私が手をかしてあげる-











ハヤテは忘れていた。

夕方の生徒会室、二人きりで街の景色を見たこと・・・

彼女が自分を必要だと言ってくれたこと・・・

彼女が優しい言葉をかけてくれたこと・・・










-絶っっ対に笑いなさいよね-










ヒナギクの差し伸べてくれた手がとても温かかったことを。

この時はまだ、愛なんて呼べなかったのかもしれない。恋だと言ったならば、きりがなかったのかもしれない。咲き始めた想いは、大きなものではなかったのかもしれない。でも、ハヤテにはそれで良かった。
それがよく分からなくてモヤモヤした感情でも、本当は叫びたいほどに胸を焦がす感情でも・・・心地よかった。








「ハヤテ、お前がヒナギクのことを好きなら私はお前たちを応援する。だからちゃんと幸せになれ。本当はどうなるか分からない未来より、今を精一杯に生きろ。そうじゃなければ、お前もヒナギクも、幸せではないだろ?」

ナギに言われるまでもなく、ハヤテは気づいていた。
いろんなことがあって、自分のこととか、ヒナギクの幸せとか、アカリやナギ、自分と関わりのある全ての人のことなどを考えていると、何が正しいのかが分からくなっていた。
ハヤテはアカリを抱きしめる腕に、優しく力を込めた。

「アカリ・・・ありがとう。僕はもう、大丈夫だから。」

「ホントに?もう悩んだりしない?」

「それはちょっと難しいかな。でも、今やらないといけないことは・・・ちゃんと分かってるつもり。」

「・・・。そっか・・・。」

アカリはハヤテから身体を離したあと、涙を拭って、ニコリと笑ってみせた。ハヤテも彼女に笑いかけ、優しく頭を撫でてあげた。

「パパの方が気持ちいいや・・・。」

「ん?どうかした?」

「ううん、なんでもないよ。」

アカリの嬉しそうにしている顔が、ハヤテの出した答えとも言えるのかもしれない。
庭城で岳が言ったように、人間一人、いや、たくさんの人が力を合わせたとしても、人の一生を全て幸せにするのは無理な話なのだ。少しでもいい、今だけでもいい、いつかの話でもいい。一番は大切な人をどれだけ多く幸せにすることができるかなのだと、今のハヤテはそう結論をだしていた。

「岳さん。ヒナギクさんは今どこにいるんでしょうか?」

「むこうで待機中だ。でも、その前にナギちゃんからあと一つ大事な話があるみたいだぞ?」

「お嬢様が?」

ナギの方を見てみると、彼女は恥ずかしそうに俯いていた。ハヤテはその様子にどこか既視感を感じ、その答えは案外早く見つけることができた。それは鷺ノ宮邸の地下でギルバートを巨大ロボごとボコボコにした後のこと・・・


「は、ハヤテ・・・?私はさ、我が儘で、いつもお前やマリアに迷惑をかけてばかりだけど、それでもお前のことがす・・・好きだ。お前がヒナギクを選んでも構わない、だからせめて・・・せめて・・・!」

執事として戻ってきてくれ、そうナギは言うつもりだったが、つもりだっただけで言うことはできなかった。それは申し訳ないという理由もあったが、一番はハヤテがナギを抱きしめたことだった。

「ありがとうございます。お嬢様・・・。」

「ふぇ!?は、ハヤテ!?お前ヒナギクのことが好きならこんなことしちゃ・・・!!」

それでもハヤテはナギを離さなかった。

「ホント、パパって相変わらずだね。」

「さすが天然ジゴロだな。」

すっかり蚊帳の外になっている二人からのジトーとした視線も気にしなかった。半分ほど・・・。
そんな雰囲気がぶち壊れた中でも、ハヤテはナギに伝えたいこと、伝えなければいけないことを口にした。

「僕は、ヒナギクさんのことが好きです。異性としてではありませんが、お嬢様のことだって大好きです。だから、もう勝手に執事を辞めるようなことはしません。約束します・・・。」

本当はもっと伝えなければいけないこと、謝らなければいけないこと、感謝しなければいけないこともあったのだが、今は少なくてもいいと、ハヤテは思った。それは自分の言葉にナギが微笑んでくれたから。

「そっか・・・。だったらハヤテ。もう一度・・・」

ナギはもう執事に戻って、と言うつもりはなかった。最初も、二回目も、そして今回も、この言葉がふさわしいと思った。





















「私の執事を・・・やらないか?」













「はい!お嬢様!」

そう言ってハヤテは一度だけ頭を下げ、さっき岳が指した、ヒナギクのいる場所へ走っていいた。ナギは嬉しさなどからしばらくボーっとしていたが、肩に手を置かれて我に返った。

「道には飛び越えられるくらいの水たまりができていて、空にはぽつりとちぎれ雲が浮かんでいる。そんな雨上がりの空は・・・好きか?」

ナギは少しだけ悩むふりをしたが、そのことに意味はなかった。ただ、こういうのは雰囲気が大事で、漫画っぽくしたかった。







「うむ!大好きなのだ!」
























どうも。
今回はアルバム「HiNA」から「Heat of Flower」を使わせて頂きました。ま、少しですけど。個人的には途中で「Power of Flower」が入っている部分が好きですね。
さて、今回はなんかギザったらしくなりましたけど、ようやくハヤテが覚悟を決めました。実を言うと次回がクライマックスです。最終話でありませんし、泣けるかどうかも怪しいですけど。ほんぼのした感じには・・・もうちょっとかかるかな?岳君とレナちゃんの話があるので。
あ、ちなみに未来のハヤテのことですが、別スレでやるつもりです。前々から言っているアカリちゃんがハヤテを拒むようになった理由の詳しい話ですね。実際この回でばらすつもりはなかったんですが、流れ的にヤッちゃいました。てへぺろ☆
ま、最悪の話になると岳君を使えばなんとかなりますけど、彼はそんな性格ではありませんし、大体に流れもできているので、中編ぐらいでやりたいと思っています。
ということで次回は・・・て、もう話したのも同じですね。取り敢えずハヤテが泣きます。
それでは  ハヤヤー!!