Re: 兄と娘と恋人と |
- 日時: 2014/09/16 22:15
- 名前: タッキー
- ハヤッス!タッキーです。
イラストの方も続いて投稿しています。前載せたのとは雰囲気が違いますが、アカリちゃんです。取り敢えず未来に戻ってハヤテにお弁当を作ってあげたという設定で描いてます。小さいですけど小学2年生ですから。 さて、今回で岳君のお話は終了です。ほんとにやっとですね。 それでは・・・ 更新!
「で、結局また世界を作り直して十分に力をつけたあと、外の世界に出てきたってわけだ。ちなみに俺が一人でここを出ることができたのは最初から外の世界に王を作って、城に縛られないようにしていたからなんだ。ある時は石に、ある時は植物に、ある時は人に、お前らの知ってるところで言うと三千院紫子なんかがそうだな。ん?どうした?」
「いや、岳さん・・・体が・・・。」
ハヤテたちは岳の体の変化に目を見開いていた。彼の身体はどんどん透明になっていき、その周りを白い光が包み込んでいる。まるで岳の話にあった、レナの最後のように・・・
「あ〜、もう時間か。簡単に言うとな、もう俺の存在が消えかかっているということだ。これくらいだったらあと1分ってところだな。」
なんで?それをハヤテたちが言うより先に岳が口を開いた。
「まぁ、この世界にきたのは下見だ。それからナギちゃんをここに連れてきた理由も、単に念を押したってだけの話だ。無理やり道を開いても良かったんだが、その反動でまた城のどこかが壊れても困るからな。だから丁度世界に絶望していたナギちゃんに道を開いてもらったってわけだ。お前に見捨てられて絶望していたナギちゃんにな。」
岳の声には誰にでも分かるくらいの皮肉が込められていて、ハヤテはそれに対して何も言えなかった。
「で、ここにまた戻ってきた理由は過去に戻るため。この世界と外の世界じゃ時間の流れが違うから、ここの過去に行きたい場合は絶対にここにいなければならなかった。そして、俺が過去に戻った理由、それは俺とレナを・・・
出会わせないためだ・・・。」
「「「「!!!!」」」」
岳はとても寂しそうな顔をしていた。
「レナは俺と出会わなければ消えてしまうことはなかった。俺と一緒にいなければ失うことはなかった。だから過去に行って、逃げた俺を追いかけるレナに嘘の道を教えた。絶対に俺と出会わない道を・・・。」
「でも、それは・・・。」
岳は自嘲的な表情をしていた。
「それから俺自身にはレナを避け続けるように言った。理由も全部話したし、こうして俺が消えているんだから上手くやってくれたんだろう。」
岳は嬉しそうな顔をしていた。
「多分、レナはここから抜け出しているだろう。もしかしたらぴったしここに現れるかもだろうから、その時はレナのことをよろしくな。」
もう岳の身体でハヤテたちの視界に映るのは上半身だけだった。見えなくなった部分には白い光が酷く幻想的に舞っていて、岳は泣きそうな顔をしていた。涙は・・・流れていなかった。
「悲しいけど、辛いけど・・・こうするしかなかったんだ。俺のいない世界でレナは笑って、怒って、そして泣くだろう。俺じゃない人のことを想い、その人と結ばれて幸せに過ごすんだろう。お前たちは、それを支えてやってくれ。」
「「「岳さん!!!」」」 「ガウ君!!!」
岳は・・・最後に笑っていた。
「俺は・・・レナのことが・・・」
ついに、岳の全身を白い光が包んだ。残酷なほど綺麗で、認めたくないほど輝いていて、悲しいほど神秘的なそれは、しばらく一箇所で揺らめいていた後、はじけて・・・消えてしまった。
そして、彼に代わるように人が立っていて、それはハヤテたちをこれまでの比にならないほど驚かせた。いや、一番驚いていたのはその人物だった。そこには・・・
岳が・・・立っていた。
第29話 『〜Encounter〜どんな過去でも』
「な、なんで・・・?」
「どんな過去でも・・・岳さまと、レナさんは出逢っていたということでしょう。」
いつのまにか落ち着きを取り戻したのか、伊澄がふとそんな言葉を口にした。岳はしばらく自分の身体を信じられないというような顔で見ていたが、やがて諦めたように両手をダラリと下ろした。
「そんなの・・・嬉しんだか、悲しんだか、分かんねえよ・・・。」
無言。それからは何とも言えない、身を圧迫するかのような静寂が続いた。言葉をかけてやらねばと口を開けても、その言葉が見つからずにすぐに閉じてしまう。だが、それは仕方のないことだった。ハヤテたちと岳とでは生きてきた年月も、その中で必死になってきたことの重さも、計り知れないほどの差があった。自分たちが何かを言う資格なんてないことぐらい痛いほど理解していた。
「なぁ、ハヤテ・・・。」
「は、はい!」
重い沈黙を破った岳の声色は、自分たちがさっきまで感じていた重さとは比較にならないほど重くて、そして黒く、恐怖すら覚えるほどだった。簡単に表せば、岳は怒っていた。
「これは八つ当たりだって自分でも理解してるから、別に答えなくてもいい・・・。お前は・・・何故、ヒナから距離を取った?」
「!!!」
ハヤテの身体が震えたのは岳に対する恐怖だけではなかっただろう。その質問をされた瞬間、自分の中の感情がぐちゃぐちゃに掻き回されたみたいで、めまいがするような感覚に襲われた。
「そ、それは・・・僕が、ヒナギクさんを幸せにすることができないから・・・。」
「じゃあ、俺の過去を聞いてどう思った・・・?」
ハヤテは何も言えなくなってしまった。これから自分が言われることなど簡単に想像がついた。ヒナギクたちも雰囲気に飲まれて割って入ることができず、ただ彼らを見ていることしかできなかった。
「自分の事情なんてむしのいい話だと思わなかったか?そりゃ、お前は俺ではないし、できないことだって数え切れないほどあるだろう。それでもお前が背負っているものなんて、ほんの小さいものだとは思わなかったのか?」
「ぼ、僕は・・・」
岳の責めてたてるような声は、ハヤテが言い訳するのを許さなかった。
「別にヒナを失うわけではないだろう?ヒナが消えてしまうわけではないだろう? それなのに幸せにすることができない!?甘えたようこと言ってんじゃねぇよ!たかが人間一人の力で誰かを一生幸せにすることができるなんて考えるな!毎日が不幸でも少しぐらい幸せだって感じることがあるだろ!いつか必ず幸せにするって誓うことができるだろ! そこにいるんだから!!存在しているんだから!!!」
彼の声は怒気より、まるで自分の願いが込められいるように感じた。
「それからヒナも、いつかハヤテは戻ってきてくれるなんてぬるい考えしてんじゃないだろうな!?相手のこと理解しているようなフリして、全部知っているようなフリして怖気づいてんじゃねぇよ!待っているだけじゃダメなんだって知っているなら自分から向かっていけよ!なんでそんなこともできないんだよ・・・!なんで、そんなことでウジウジできるんだよ・・・。 お前らズルいんだよ・・・。羨ましんだよ・・・。」
俯いた岳の表情はハヤテたちには分からなかった。ただ、辛くて、悲しくて、寂しくて、だけど泣いていないことだけは・・・はっきりと分かった。
「言いすぎたな・・・。すまない・・・。」
そう言って岳は背を向け、ハヤテたちについてくるよう首だけで合図した。彼が向かったのは天球の鏡のある部屋で、そこに着くと岳はハヤテたちに鏡の中、つまりは水のなかに入るように促した。彼の話によると白皇の生徒会室、天球の間につながっているらしい。よく考えればわかることだった。学院全てを見下ろすことのできる天球の間はここにある天球の鏡の役割をしていて、時計塔・・・ガーデンゲートのガーデンがさすのはこの庭城のことであること。白皇がアテネたち天王州家のものであることや、理事の一人に三千院帝がいればそれなりにつじつまが合う。
「ナギちゃんのことは心配ない。その身体を外に戻せばちゃんと意識がもどる。まぁ、三千院家の屋敷で呑気にあくびでもしながらだろうがな。」
「岳さんは・・・?」
「俺も一旦外に戻るよ。ここにいたってすることもないし、レナがいるわけでもないしな。別に諦めたわけじゃない。俺にはお前らと違って時間があるから別の方法を考えるさ。」
岳はニコリと笑顔を作った。ハヤテたちにはそれが作られたものだと分かっているはずなのに、完璧ともいえる彼の笑顔は心の底から笑っているように見えた。 そしてまず伊澄が入り、その次に咲夜、ヒナギクが入って、外に戻っていった。
「岳さん・・・。」
「なんだ?」
「僕にはまだ、どうすればいいか分かりません。あれだけ言われたのに、情けないですね。」
岳はハヤテの肩をポンと叩いた。
「あれはほとんど俺が心の内をぶちまけただけだからそんなに気にしなくていい。大切な人のことで悩むことができるんだから、今はそれを大切しておけ。」
「はい・・・。」
ハヤテは静かに外に戻っていった。それを見届けた岳はふと天井を仰ぎ、手をかざした。
「全く、俺はなんでこういうことばかりできるようになったんだか・・・。」
この手を少し集中して振り下ろせば、また世界を作り直すことができるだろう。そうすることでもしかたらレナがいる世界を作れるかもしれない。そんなことが頭をよぎったが、岳は単に手を下ろしただけだった。今更という感じもしていたし、レナという存在が特異なもので、運良く世界に現れることなどないことも、苦しいほどに理解していた。
「ごめん・・・。ごめん・・・。」
何度も同じ言葉を繰り返して、岳は水の中に身体をあずけた。
「本当に・・・ごめん。・・・・・・レナ。」
ザッ
どうも、ようやく岳君のお話が終わりましたね。ほんとにやっとって感じです。 取り敢えず自分なりに原作謎妄想してみましたが、矛盾があったらすいません。てか、無理やりこじつけた感が凄まじくてすいません。こういうのは多分これっきりです。多分。 さて、次回からはドキッ!ハヤテとヒナさんが急接近!?的な感じです。あ、すいません!お願いだから殴らないで! そ、それでは ハヤヤー!!
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