Re: 兄と娘と恋人と |
- 日時: 2014/09/04 23:45
- 名前: タッキー
- ハヤッス!タッキーです。
プロフィールにも載せましたが、アカリちゃんはオムライスが大好きです。実は彼女にとって、とても思い入れのある料理だったりするんですが、それは今回の冒頭の内容にもなってきます。 それでは・・・ 更新!
これはハヤテやヒナギクたちにとっては6年後、アカリにとっては5年前の話。アカリが生まれてからハヤテは仕事が忙しく、毎日家に帰るのは夜遅くなってからと、娘の世話を妻であるヒナギクに任せっきりの状態が続いていた。しかしそんな日々の中で、一日だけアカリと二人きりで過ごす日があった。
(仕事続きで全然世話してないとはいえ、実の娘にここまで避けられると傷つくんだけどな〜。)
ただ、アカリはドアに隠れてハヤテを初対面の人のように見ているだけで、全然なついてこなかった。それどころかハヤテが近づくとママー!と、出かけて家にはいない母親の名を呼んでまた別のドアに逃げてしまう。それでもドアごしに顔を半分だけ覗かせて自分のほうをじっと見てくるアカリが、ハヤテには可愛くて仕方がなかった。俗に言う親バカである。 しかしせっかくの休日を無駄にはしたくないので、ハヤテはもう一度近づいてみた。アカリはビクッと体を震わせたが、今度は逃げなかった。ハヤテはこれをチャンスとばかりに身をかがめ、まだ小さいアカリと同じ高さまで目線を合わせてから話しかけた。
「アカリ。今日はパパと遊ばないか?」
「パパと?・・・ママは?」
ハヤテはアカリにここまで好かれているヒナギクが正直羨ましかった。
「残念だけどママは出かけているから・・・ああ!泣かないで!いい子だから、ね!」
ハヤテはアカリが自分で目をこすろうとしたのを止めて、ハンカチを取り出してアカリの涙をそっと拭った。そして頭に手を置いて、優しくアカリの頭を撫でた。
「ヒナはいないけど、僕がいるから・・・だから、一緒に公園でも行こう。」
「こうえん・・・?」
まだ涙ぐんで尋ねてくるアカリにハヤテはうんうん、と顔を上下に振った。そしてアカリも同じように頷いたのを確認すると、彼女を抱きかかえて肩車の状態にした。最初はヒナギクと同じように高いところが苦手かもしれないと思ったが、肩車されてはしゃいでいるアカリを見ている限りその心配はなさそうだった。少し安心したハヤテはそのままアカリを肩に乗せて、玄関を出た。
(アカリってこんなに軽くて・・・温かいんだな・・・。)
自分の娘の体重や体温を感じるのは初めてではない。ハヤテがまだ17歳のころ、未来からきた7歳のアカリを抱え上げたことがあったし、彼女が実際に生まれあとも、少ない休みの日に抱きかかえることもあった。ただ、あらためて感じたのは想像よりもはるかに儚くて力強い存在だった。
ハヤテたちは遊具で遊ぶわけでもなく、ただ公園の道を歩いていた。紅葉の季節もとっくに終っていて、そんな味気ない景色を楽しむことさえもしなかったが、それでもアカリはなんだかずっと嬉しそうにしていた。
「パパはなんでいつもおウチにいないの?」
「お仕事がたくさんあるからね。僕がいなくて寂しい?」
「ママがいるからあんまり。」
「そ、そう・・・。」
予想はしていたとはいえ、まだ2歳の娘からそう言われると父親としては泣きたくなってくる。アカリがまだ懐いていなかったら、ハヤテの心は完全に折れていただろう。
「ねぇ、パパ?」
「ん?どうした?」
「おなかすいた・・・。」
気づけばもう12時を回っていた。外出したのが11時ごろだったので、なんだかんだで1時間以上も歩き続けていたらしい。ハヤテはニコリと微笑むと、すぐに踵を返して自宅のほうへ、アカリを落とさないように駆けていった。アカリは怖がるどころか逆に楽しんでいたので、ハヤテはついスピードを上げてしまい、家についたときには息が上がっているのをアカリに心配されてしまった。
「えっと、アカリは何を食べたい?」
「おいしいもの!」
そりゃそうだろ、とハヤテは内心思いながら娘の期待に答えるべく、腕によりをかけて取り敢えずオムライスを作ってみた。
「これな〜に?」
「へ〜、アカリはオムライス食べるの初めてなんだ。」
「オムライス?」
しばらく眺めていたあと、アカリはスプーンを突き刺したがぼろぼろと崩れてしまい、上手く口まで運ぶことができなかった。それを見たハヤテは自分のスプーンで上手に切り取り、一口サイズになったオムライスを手を添えてアカリの口元まで持っていってあげた。
「はい、あ〜んして。」
「・・・あ〜ん。」
アカリは自分でできなかったことが面白くないのか少しブスっとしていたが、ハヤテに促されるままに口を開き、そのまま口に入ってきた卵のふわふわした感触と、それによくマッチしているチキンライスのコクのある風味を堪能した。
「おいしい!!」
「ホント!?よかった。」
それからアカリはがっつくようにハヤテの作ったオムライスをたいらげ、さらにはおかわりまでしてきた。アカリの食いっぷりに気をよくしたハヤテが自分の分を食べるのも忘れてずっとアカリのことを見ていると、アカリはなにか勘違いしたのか、今度は自分でオムライスを切り取ってハヤテの方に差し出してきた。
「はい。パパもあ〜ん。」
キュン・・・!
正直にハヤテの思ったことを述べるなら、死んでもいい、だった。ただでさえ自分の大好きな妻に似ている愛娘が、無邪気な笑顔であ〜んをしてくる。ハヤテはこれが自分のような父親や、どこぞの特別な性癖をもっている人でなくとも同じ感想を抱いたに違いないと思った。しかし食べてくれないせいかアカリが泣きそうになっているのに気づき、ハヤテは急いでスプーンをくわえてから必死に笑顔を作った。
「おいし?」
「うん!すごく美味しいよ。」
親子にしては甘すぎる昼食のあと、アカリはお腹いっぱいになって寝てしまった。ソファに横になっていたアカリをベッドに運び、布団をかけたあと、ハヤテはしばらく娘の寝顔を眺めていた。
(小さい頃のヒナってこんな感じだったのかな?それにしても、僕ってアカリのことほとんど知らなかったんだな・・・。)
今の仕事にもやっと終りが見えてきた。あと一年近くはかかるだろうが・・・。それでも、それが終わったあとはもっと自分の娘のことを知れる、そして家族三人でいられる時間が増える、そう考えると俄然やる気が出てきた。
「ヒナのためにも・・・、アカリのためにも・・・、頑張らなくっちゃな。」
呟きながら娘の頭をなでると、アカリはくすぐったそうに寝返りをうった。それに微笑みながら、ハヤテは再び呟いて、部屋を出て行った。
「おやすみ・・・。アカリ。」
これは現在のハヤテたちにとって6年後、未来のアカリにとっては5年前の、ある一日の話。そして現在のように、アカリの心がハヤテを拒むきっかけとなる事件が起こるのは、これから一年後、アカリの4歳の誕生日前の話。
第25話 『父娘』
(久しぶりに見たな・・・。昔の夢・・・。)
目を覚ますと私を包んでいるのはふかふかしてて温かい感触。あ、でもまだ頭がクラクラするし、体も重い。え〜と、私はアパートを飛び出してから転んで、いつひいたか分からない風邪で立つことができなくて・・・今、布団で寝ている。
「お、目が覚めたんだね。よかった。」
「あ、パパ・・・」
「え?」
「い、いや!違うの!お願いだから忘れてー!!」
わ、私なんでお父さんのこと「パパ」って・・・・ゆ、夢のせい!さっき昔の夢なんか見てたから流れで呼んじゃったんだ。うん、そうに違いない!だいたい夢の中の人が本当にお父さんかなんて覚えてないし・・・まぁ、思いっきり「パパ」って呼んじゃってたけど。 それにしても恥ずかしい。きっとお父さんは布団に隠れた私を見てニヤニヤしているに違いない。
「アカリ?」
「なに・・・?」
「いや、具合は大丈夫かな〜って。なにがあったかは聞くはないけど、無理はしちゃダメだよ。」
あれ?なんでホッとしてるんだろう?
「笑わないの?」
「え?なんで?」
「だ、だから、さっき私がお父さんのことを・・・ぱ、パパって呼んだこと。」
お父さんはなんで意外そうな顔をするんだろう?いつもと呼び方が変わったら普通気になると思うのに、これっぽっちもそんな顔してない。
「まぁ、ヒナギクさんをママって呼ぶみたいに僕のこともパパって呼んでくれたら嬉しいけど・・・アカリ、僕のことそんなに好きじゃないんでしょ?」
「う、うん。好きじゃない。」
「はは・・・。そこまでストレートに言われると・・・。」
なんでだろう?お父さんが苦笑いしているのを見てるとなんだかモヤモヤする。お父さんの質問に答えたときは、もっと・・・
「アカリ?どうしたの?」
「へ!?い、いや、なんでもないよ。それよりお腹すいちゃった。晩御飯作ってる途中だったから。」
「それじゃ、ちょっと遅いけど作るよ。おかゆとかの方がいい?」
「あ、別にのどは痛くないから、できればオムライスが食べたい・・・かな。」
「了解。ちょっと待ってて。」
なんか自分でも驚くくらい素直に話しているというか、優しくしてくれるのが嬉しいというか・・・。風邪で人恋しくなってるだけだよね、きっと。 そういえばお父さんって、まだバイトなんじゃなかったっけ?終わって帰ってきてもすぐ次のバイトに行っちゃうし、お休みなのかな?もしかしたら私のために休んでたりするのかな?迷惑かけるの、嫌だな・・・。
「お待たせ。はい、あ〜んして。」
「!!」
同じだ。私の過去と・・・そのまんま。 なんでだろ?お父さんが心配そうな顔してる。ああ、私が食べないからか。まったく、これだけせかしておいて味がイマイチだったらダメ出ししてやるんだから。
「あ〜ん。」
「あ、アカリ・・・!?」
あれ?なんで、私泣いてるんだっけ?なんで、涙が止まらないんだっけ?
「ご、ごめん!なんか変なもの入ってた!?もしくは味がいけなかったとか!?と、とにかく水持ってくるから!」
気づけばお父さんの裾を握って引き止めていた。まだ涙は止まらないけど、それでも伝えないといけないと思った。
「ちがうの。おいしいの。おいしい・・・よう・・・。」
ダメだ。やっぱり泣きながらだと上手く話せないや。でも、同じだったから。あの日、初めてパパの料理と変わらなかったから。 私はそのあと抱きしめられた。お父さんは何もいわないで、ただ優しく、ただ温かく・・・。もう、涙が止まらなかった。
「う、うぅぅ!あぁぁぁぁぁああああ!!ごめんなさい!ごめんなさい。お父さんのこと悪く言ってごめんなさい!ママとの仲を邪魔してごめんなさい!ママを不幸にするなんて言ってごめんなさい!大嫌いなんて言って、ごめん・・・なさい・・・。」
私、さっきからごめんなさいしか言ってない。でもそんな私をお父さんは笑いながら、優しく抱きしめてくれる。
「アカリはヒナギクさんに・・・ママに幸せになって欲しくて頑張ってたんだよね?だったらそれは凄く立派なことだよ。今の僕なんかよりもずっと、ずっと・・・。 アカリの言った通り、未来の僕はヒナギクさんも、アカリのことも幸せにできていないのかもしれない。でも、僕のこと、信じてあげてくれないかな?説得力がないかもしれないけど、僕は好きな人を絶対に裏切るようなことはしない。それが妻と娘だったらなおさら。 だから待ってて。絶対に戻ってくるから。家族・・・だからね。」
なんで目を背けてたんだろう?本当は気づいていたはずなのに、分かっていたはずなのに。こんなに優しいお父さんがママを不幸にするわけない。家族を捨てるなんてありえない。なのに、私は・・・。 ママの相手がお父さんじゃなきゃダメだってことも分かってた。そして・・・
「過去でも、未来でも、どんな時だってアカリは僕の・・・大切な娘だよ。」
私のパパは、この人しかいないってことも。
あの後泣き止んでからきちんと晩御飯を食べて、私は眠ってしまった。つまり今は朝、それも5時半という早朝で、私、綾崎アカリは寝起きということだ。 隣には・・・よし、眠ってる。寝顔だけ見てるとホント女の子みたいだと思う。 おっと、そういえば今日から新しく始めることがあるんだった。取り敢えずいつものリボンをもって鏡の前に立って・・・えっと、後ろ髪を全部束ねてリボンで結べばいいんだよね?あれ?なかなか上手くいかない。・・・お、できたできた。これ見たら驚くだろうな〜。ちょっと楽しみ。 前の髪型も好きだったけど、結局ママっぽくなるために後ろまでは結んでなかっただけだし、もう私にはママだけってわけじゃないから・・・それの表れってことで。いやぁ〜、なかなかいいアイデアだと思う。我ながら。 そうそう、朝御飯も作るんだった。えっと、簡単にトーストと目玉焼きでいいよね?
ガタン
お、起きてきた。
「おはようアカリ。なんか早いね・・・って、どうしたの!?その髪型。」
お〜、やっぱり驚いてる。なんかこういうの嬉しいかも。
「えへ。前からやってみたかったんだけど、どうかな?ポニーテール。」
そう、私は昨日まで横髪だけ結んでサイドテールだったのを、同じ位置で後ろ髪まで結んで、ポニーテールにしている。鏡を見たかぎりでは結構イケルと思ったんだけど、おかしかったかな? でも、私のそんな考えに反して笑ってくれるこの人って、本当に優しくていい人だと思う。
「すごく・・・すごく似合ってるよ。とても可愛いと思う。」
「うん!ありがと。朝御飯できてるから座って。ああ、そうそう・・・」
「?」
ママに幸せになって欲しいのは変わらないけど、それにちょっとだけ付け加え。 だからそのスタートは最高の笑顔で言うんだ。
「おはよう!
・・・パパ!」
ママとパパと、それから私も、家族みんなが幸せになれますように!
アカリちゃんいい子やぁ〜!!! と、自分の作品のオリキャラなのに、そんなことを考えております。
それにしてもアカリちゃんがオムライスを好きな理由、伝わったでしょうか?母親の味ならぬ父親の味って感じですね。 アカリちゃんのポニーテールについてはのちのちイラストを載せたいと思います。まぁ、これといって変わったというわけではないのですが。ただ、当初は髪型を変える予定はなかったんですが、こういうのもアリかな〜と。これからのアカリちゃんにはポニテで元気にやってもらう予定です。 ということで突然ですが、アカリちゃんのプロフィール(2)です。
綾崎 愛虹(アカリ)
誕生日 12月12日
身長 133.2cm
体重 29.7kg
年齢 7歳
血液型 O型
家族構成 父(ハヤテ)
母(ヒナギク)
好き、得意 パパ,ママ,オムライス,勉強,運動(剣道)
嫌い、苦手 暗い場所,お化け
ぶっちゃけ、嫌い、苦手の部分から「お父さん」が抜けて、好き、得意のところに「パパ」が入っただけです。ただ、このときにはもうファザコンです、はい。普通にハヤテ大好きっ子です。いや〜、実の娘までも落とすとかホントにハヤテはしょうがないヤツですよ。ま、これは最初っからこうするつもりだったんですけどね。 ちなみに暗い場所やお化けが苦手なのは未来のほうでナギからいろいろ吹き込まれたのが原因という設定です。ただ、ナギからいろいろ吹き込まれている=アニメとかは大好き、という感じでもあります。上に書き忘れましたが。
さて、冒頭の最後の部分の話は別スレでやるつもりなのでスルーとして、次回からは岳君のお話です。これは個人的にやりたいことなので、ハヤヒナどころかハヤテにすら少しかすってるぐらいの話です。最初に謝っときます。すいません。 取り敢えず彼の正体や、三人目のオリキャラが出てきます。まぁ、オリキャラが出てくるのはそのまた次の回なのですが。
それでは ハヤヤー!!
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