Re: 兄と娘と恋人と |
- 日時: 2014/09/01 16:36
- 名前: タッキー
- ハヤッス!タッキーです。
なんだか書き始めよりうんと更新ペースが落ちてしまいました。 で、でも飽きたというわけではないですよ!今回だってアカリちゃんのいも・・・ゲフン!ゲフン! と、とにかくイラストに時間をさいていたわけですよ!載せてはいませんけど・・・ 取り敢えずペンタブでも買ってみようかなと思っているのでイラストのほうは後ほど。 さて今回はアカリちゃんのお話。ちなみに夕方、放課後からの設定です。 それでは・・・ 更新!
アカリがハヤテとヒナギクのキスを阻止した日から五日、ヒナギクはハヤテに会っていない、というより会うことができずにいた。毎日岳の家を訪ねてはいるものの、ドアを開けるのは決まって家主である岳か、ハヤテと同じように居候しているアカリだった。今回もハヤテではなくアカリが出てきて、ヒナギクは思わずため息をついてしまった。
「えっと・・・私、何かした?」
「ああ!違うの!こっちのことだから・・・、ごめんね。」
アカリが不安そうな顔をしのはキスを邪魔した罪悪感からなのもあっただろう。しかしヒナギクはそのことに対して怒ったりはしなかった。不満がなかったと言えば嘘になるが、それでもアカリなりに自分のことを想った行動なのはきちんと伝わったし、まだキスをするには早すぎる気もしていたから、止めてくれたことには少しだけ感謝していた。 それに、せっかく未来から来て、いつ帰ってしまうか分からない娘と喧嘩をするようなことはしたくなかった。
「今日もハヤテ君はバイト?」
「うん。でもママってさ・・・」
アカリは話しづらそうに目を伏せた。ヒナギクはその動作だけで彼女が言おうとしていることが分かったが、あえて黙って次の言葉を待った。
「・・・やっぱり、岳さんと付き合う気はないの?」
そう、アカリはヒナギクを、ハヤテではなく岳と付き合わせようと考えていた。それがうまくいけば自分が消えてしまうかもしれないということを承知で。 しかし当然と言えば当然なのだが、いっこうに二人が付き合う様子は見られず、アカリも自分の考えに不安を持ち始めていた。
「岳さんのほうが、カッコいいし、頭もいいし、お金持ちだし、それに・・・絶対守ってくれるよ?」
まだ自身なさげに俯いているアカリを、ヒナギクはそっと抱きしめていた。不思議と怒りは湧かなかった。アカリの言った通り、岳はハヤテより、いや、どんな男よりも条件がいいだろうということはヒナギクも分かっていた。でも・・・
「・・・私がガウ君を好きなることはないし、ガウ君が私を好きになることもないわ。アカリだって、本当は分かっているんじゃない?」
アカリがヒナギクの腰に腕を回すのと同時に、ヒナギクがアカリを抱きしめている腕に力が入った。
「アカリは・・・幸せって何色だと思う? これは答えになっていないけど、私は人それぞれだと思うの。もしかしたら最初から決まっていて塗り替えることができないものなんだとも思う。だから・・・」
その瞬間アカリの脳裏にある光景がフラッシュバックした。それは自分の過去であり、これから起こるはずの未来。 今より大人になっているヒナギクが、今と同じように自分を抱きしめて、今と同じような言葉をかけてくる。
(ママが次に言う言葉はきっと・・・)
「私の幸せの色も・・・きっと決まっているの。」
第24話 『風は吹かずに花は揺れて』
お互い離れたあと、ヒナギクはバックの中から折りたたみ傘を取り出した。外は激しくはないものの雨が降っていて、傘なしに出歩くのは厳しかった。
「ほら、今日はアパートに遊びに行くんでしょ?早く入って。」
温かい・・・自分の母親の隣にいて、アカリは素直にそう思った。アカリが少しだけ近づこうとする前に、ヒナギクは濡れちゃうからとアカリの肩を抱いて自分のほうへ引き寄せた。
「ママ・・・。」
「ん?」
「ごめんなさい・・・。」
アパートには住人のほぼ全員がいて、ヒナギクは生徒会の用事があるからと歩たちにアカリを任せ、学校のほうに駆けていった。
「よ〜し、アカリちゃん。この歩お姉ちゃんが美味しい夕御飯を作ってあげよう。何がいい?」
「う〜ん、じゃあオムライス。」
「よし、それじゃ今日のご飯は決まりだな。」
アカリの答えに反応したのは歩ではなく千桜で、さっそく台所へ向かった彼女の後にアカリも手伝おうとついていった。
「ちょっ!私のことはスルー!?さすがにひどいんじゃないかな!かな!」
「まったく・・・、何を騒いでいますの?」
「聞いてよアリスちゃん!千桜が私をスルーしてアカリちゃんとご飯作りにいっちゃたんだよ!」
「いや、それが正しいと思いますが・・・。」
正直、料理ができるのかよく分からない人よりも、できると確定している人にまかせるほうが安心である。しかし歩はアテネが止めるのも聞かず、ふくれっ面のまま台所へ行ってしまった。
「・・・で、なんでこんなに人口密度が高いんだ?」
今、台所にはアカリ、千桜、歩、アテネ、そして何故かカユラとルカ、つまりアパートの住人が全員集合している。三千院家のように広い厨房ならともかく、彼女たちがいるのは台所だ。せまく感じないほうがおかしいだろう。
「てか、なんでルカとカユラがいるんだよ?さっきまでいなかっただろ。」
「私はアカリちゃんが来てるって知ったから。」
「面白そうだったから。」
千桜は二人の理由にため息をついた後、諦めて料理を始めることにした。しかし、いつのまにか材料が用意されていて、さらにはトントンとリズムよく野菜を切る音も聞こえてくる。千桜がふと横を見ると、既に必要な野菜を切り終えて次に肉を切ろうとしている、エプロンに身を包んだアカリがいた。
「あ、お姉ちゃんたちにはスープと和物をお願いしていいかな。」
「え?あ、うん。別に構わないけどさ・・・」
「?」
「オムライスも、私たちが作ろうか?」
アカリはおどおどしている千桜たちを見て、自分が何かやらかしたのかと考えていたので、それから大きく外れた問に少し呆気にとられてしまった。しかしアカリの方としては作ってもらうだけなのは少し申し訳ないと思ったから手伝っているだけなので、すぐに顔を戻すと、笑顔でせっかくの提案を断った。
「大丈夫だよ。私料理とか得意だから。」
その言葉で、アカリ、千桜の料理する組と、アテネ、カユラ、ルカ、歩の料理ができるのを待っている組に別れることになった。
「てか、歩って料理できたの?」
「う〜ん、あんまり。そういうルカもどうなのかな?」
「まぁ、私もできるわけじゃないけど・・・」
「「はぁ・・・」」
ルカと歩は台所から出た後、共同スペースで一緒にゴロ寝していた。ちなみにカユラは自室に戻り漫画を読んでいて、アテネは・・・
「年上としての威厳は台無しですわね。」
「ヒドい!!それはヒドいんじゃないかな!!」
「そうよ!私だってアイドルやってるんだから料理とかする暇ないもん!」
アテネはため息をつき、二人と同じように畳の上に仰向けになった。
「そういうアリスちゃんも料理できるかな?」
「私はまだ6歳ですから。」
「アカリちゃん7歳だけどね。」
「そ、それは言っちゃダメですわ!」
ルカの一言は勝ち誇っていたアテネの顔を赤く染めるのには十分だった。アテネはそのまま勢いよく上体を起こし、まだ上体すら起こしていない二人に言い訳を始めたが、聞いている二人はそれを軽く流すだけだった。
一方、料理組である千桜はアカリの手際の良さに舌を巻いていた。咲夜のメイドをしていることもあって料理などの家事はそこそこ自信があったが、アカリから味見を頼まれたときは正直驚いてしまった。
(この子、私よりうまい!!。)
「えっと、どうかな?」
身長差で上目遣いになったアカリに千桜は不覚にもときめいてしまい、それを隠そうとしたたが、逆に声が大きくなってしまった。
「う、うん!美味しい、すごく美味しいよ!」
「・・・なんだかよそよそしいけど、ホント?」
「ああ、ホントだって!それより、アカリちゃんはホントに料理が得意なんだな。」
動揺を隠すためでもあったが、それは正直な感想だった。その言葉にアカリはエッヘンと胸を張り、自慢気な顔をした後いたずらっぽく笑った。
「ママからたくさん教えてもらったからね。あとマリアお姉ちゃんからも。」
アカリの答えには納得できた。ヒナギクとマリアの二人から教えてもらえれば料理上手なのもうなずける。しかし、千桜には彼女の言い草に少し違和感を感じていた。
「あれ?綾崎君からは教えてもらってないのか?」
「・・・! お、お父さんは、その・・・」
アカリが表情を暗くして俯いたのに疑問をもったが、千桜はその続きを待った。しかしアカリが答える前に玄関のほうから別の声が聞こえ、その内容に自分が今していたことを忘れてしまった。
「あー!ナギちゃん!よかった〜、心配してたんだよ。」
「ハムスターに心配されることなど何もない!ところでハヤテはいるか?」
「えと、ハヤテ君は・・・」
歩たちはヒナギクから話を聞いていたが、ナギはよく事情を知らないようだ。ルカが少し話しづらくて言葉を探していると、その横を何かが猛スピードで走り抜け、そのままナギに抱きついた。その何かとは言わずもがなアカリである。
「ナギお姉〜ちゃん!!」
「わっ!な、なにいきなり抱きついてるのだ!てか誰だよ!」
「アカリちゃんって凄く人懐っこいよね・・・。」
「うん・・・。」
歩とルカは蚊帳の外で、アカリはしばらくナギとじゃれた後、息を切らしているナギに自己紹介をした。
「ナギお姉ちゃんもこっちじゃ初めましてだね。綾崎アカリです!よろしくね。」
「あ、綾崎?お前、ハヤテの妹か?いや、でもそれだったらヒナギクの妹にしか・・・。」
「私は未来から来たの。ヒナギクは私のママだよ。」
「へ?」
歩たちがそうであったようにナギもしばらく固まっていた。未来から来ただとか、ヒナギクの娘だとか、いろんなことが分からなくて、頭がパンクしそうだった。
「えっと、お前は未来から来て、ヒナギクがお前の母親で、名字が綾崎ってことはヒナギクとハヤテの・・・」
「うん。娘だよ。」
正直ナギはアカリの言ったことを信じきれなかった。ただ、彼女が言っていることが真実ならばハヤテは幸せになれたということで、自分の望みが叶ったことになる。
「じゃあ、ハヤテとヒナギクはちゃんと付き合っているんだな?」
それはナギ自身にとって辛いはずなのに、少しだけ心地よくも感じた。しかしその温もりも目の前の少女にすぐに奪われることになった。
「ママとお父さんは・・・付き合ってないよ。」
「は?」
「私が邪魔したの。私は・・・ママに、お父さんと付き合って欲しくない。」
さっきから想像できないほどアカリの声は暗く、俯いたまま上がらないその顔の表情も、きっと辛いものだろうと安易に想像できた。しかしナギにとってそれは問題ではなく、彼女の言った内容が気になって気になって仕方なかった。
「邪魔って・・・、お前は自分でハヤテとヒナギクは親だって言ったじゃないか!」
「そうだよ!でも・・・でも、お父さんはママと付き合っちゃいけないの!結婚したらいけないの!そうしたら・・・ママは幸せにはなれないの!」
気づけばお互いに大声で言い合っていて、あふれる感情をぶつけていた。
「ハヤテが自分の女を幸せにしないはずないだろ!なんでそんなことも分からないんだ!?」
「だって未来ではママは泣いてるもん!お父さんそれなのにどこにもいないんだよ!これって幸せにしているって言えるの!?」
「未来から未来からって!そんなの嘘なんじゃないのか?どうせ娘ってことも嘘で、ハヤテとヒナギクの仲をよく思わないやつからそうしろって言われたんだろ!?」
「・・・!!」
ナギが言った言葉は、ナギが思っている以上にアカリの心をえぐった。ナギも含めてみんな優しい人たちだと知っていたから自分のことを拒絶されるなんて思っていなかった。いや、アカリはそう考えるのやめていた。この時代が過去だと分かったときは不安でしかたなかった。認めてもらえないんじゃないかと怯えていた。ただヒナギクが信じてくれたから・・・そしてハヤテが真っ先に信じてくれたから、安心しきっていた。
「ち、違うよ・・・私、本当にママの娘だよ。ほら、歩お姉ちゃんたちからも何か言ってよ・・・。」
信じてもらえないのが、自分を認めてくれないのがここまで辛いとは思わなかった。ひきつった顔を動かして歩たちに助けを求めたが、彼女たちからも顔をそらされてしまった。
「な・・・んで?」
実のところ、歩たちはアカリのことを信じきれずにいた。未来から来たということも、ハヤテとヒナギクの娘ということも。それに、彼女たちが信じきれない大きな理由として、アカリがハヤテを好きではないということがあった。ハヤテの娘ならきっと父親のことが大好きな子に育つだろうというのが全員のイメージだったのだ。イメージや先入観は偏見につながり、それにナギの言葉が加わったのが今回の原因だった。
「私・・・私・・・!」
アカリは耐え切れずにアパートを飛び出した。雨は土砂降りになっていて、冬の寒さで痛い程に冷たくなったそれは容赦なくアカリを叩いてくる。まるでアカリを責め立てるように、そして蔑むように。
(ママ・・・!!ママ・・・!ママ・・・)
呼吸は荒くなり、心臓は悲鳴を上げ、さらには視界までも霞んできた。勢いのあった足の回りもだんだんと衰え、ついにはフラフラの状態でアカリは雨の中を歩いていた。
「うわっ!!」
小さな石につまずいて転んでしまった。跳ね上がった泥水が顔にかかり、口に入ったものは正直に苦いという感想を与えた。立ち上がろうとしても身体に力が入らない。
(頭痛いし、クラクラする・・・。身体の節々も痛いし・・・風邪、ひいちゃったのかな?)
誰かが通って助けてくれるわけでもなく、濡れた服はアカリの体温をどんどん奪っていく。このまま死んでしまうかと思うと悲しくて、寂しくて、涙がこぼれてきた。
(助けて・・・誰か助けて・・・!
ママ・・・!ママ・・・!ママ・・・!)
だんだんと意識が薄れていくのが分かった。重くなった瞼はアカリの意思を無視してゆっくり閉じていく。
(助けて・・・
パパ・・・)
そこでアカリの意識が完全に消えてしまったが、それと同時に一人の人間が彼女のもとに駆けつけた。その人間は濡れて冷たくなってしまったアカリを抱えあげると、自分の服をかぶせたあと、念のため息があることを確認した。
「よかった・・・。寝てるだけみたいだ。」
ほっとした感情をすぐにしまって、ハヤテは走りだした。早くアカリを助けたい、早く自分の娘に元気になってもらいたい、その一心で。
「ちょっとだけ我慢しててね。アカリ・・・。」
それこそ、疾風のごとく。
どうも、タッキーです。 自分で書いておいてアカリちゃんがかわいそうになってきたというのが今の心情です。まぁ、必要な話ではあったので飛ばすことはしませんでしたが。
最後のフレーズを使うのは二回目だったので少しためらったのですが、これしか思いうかばないし、これを使うだけでそれっぽくなるので(何も言わないで欲しい)使っちゃいました。
あと、アカリちゃんの料理スキルというか家事スキルはとても高いです。理由としては母親であるヒナギクさんの手伝いをしているのと、マリアさんから凄く気に入られているから、よく教えてもらっているというのがあります。マリアさんがアカリちゃんを気に入っているわけは、アカリちゃんが年相応に「お姉ちゃん」と呼んでくれることだったりしますね。なんだかんだ言ってそういうのに弱いんじゃないかというのが自分のイメージです。年上のお・ね・え・さ・んとして接してもらえることが。
それにしても、今回のアカリちゃんとナギが絡むシーンが少なかったような・・・でも、やりたいことはできたから・・・う〜ん・・・。ま、取り敢えずナギも悪気あったわけではなくて、せっかくハヤテとヒナギクさんのことを応援しようと努力したのに、アカリちゃんに台無しされた怒りからつい言ってしまったという感じですね。 ちなみに題名はナギとアカリちゃんを名前からイメージして考えました。凪というのは風がおさまった状態で、愛虹はもともとアイリスの花から思いついたので。
さて、次回はいよいよ・・・ と、盛り上げておいて普通にアカリちゃんの話です。彼女の心情の変化に注目してくれると嬉しいです。
それでは ハヤヤー!!
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