Re: 兄と娘と恋人と |
- 日時: 2014/08/21 00:37
- 名前: タッキー
- ハヤッス!タッキーです。
前回(?)アカリちゃんのイラストを投稿したので今回は性懲りもなく岳君のイラストを投稿してみました。なんというか・・・すいません。まさか宗谷君イメージのキャラがここまで変わるとは思わなかったので。 と、ということで今回はハヤテとヒナさんが再びデートをする話です。ちなみにアカリちゃんはあまり出てきませんよ。 それでは・・・ 更新!
ナギは自分の声を録音した機械を耳から離したあと、重力に引かれるがままに身体をベッドに預けた。すると、まるでベッドが軽くきしんだ音を合図にしたかのように部屋の扉が開き、マリアが心配そうな顔をのぞかせた。
「ナギ・・・それでよかったんですか?」
ナギは枕にうずめた顔をあげようとはせず、マリアの質問にもそのまま答えなかった。しかし、しばらくしてマリアが諦めて扉に手をかけたとき、ナギはボソボソと呟くように話し始めた。
「ハヤテが執事を辞めた理由・・・多分ヒナギクじゃないと思うんだ。執事をしているからって主以外の誰かと付き合うことができないわけじゃないし、そうでなくとも、ハヤテだったらきっと続けようとするだろう。あいつはそういうやつなんだ・・・。」
「でも、ハヤテ君は・・・」
さすがにその先は言いづらく、マリアは最後まで言葉が続かなかった。枕から顔をあげたナギはやはりつらそうにしていたが、それでも心配をかけまいと精一杯の笑顔をつくった。
「そうだな。でも、それはまた不幸に巻き込まれているからで、ハヤテがちゃんと幸せになることができたら、きっと戻ってきてくれると思ってるんだ。別に諦めたわけじゃないけれど、たとえハヤテがヒナギクを選んでも、あいつは私の大切な執事だから・・・。」
ナギは無理をしている。それはいつも近くにいたメイドだからではなく、赤の他人が見てもそう分かるほどだった。ナギが散歩に行ってくるとガラにもないことを言って横を通り過ぎたとき、マリアは優しく声をかけてあげることも、そっと抱きしめてあげることもできなかった。
それは、長い廊下を歩いていく主の背中がいつもより小さく見えたから・・・
一人になりたいという悲しい声が聞こえてきそうだったから・・・
まるで、この世界にはもういたくないと叫んでいるようだったから・・・
第23話 『メリーゴーランドメロウ』
ハヤテ君はどこまで行くんだろう?遊園地に入ってすぐ、人が多いからと手を繋がれたときにはドキッとしたけれど、そのあとは何かのアトラクションに乗るわけでもなく私はハヤテ君に引かれるままに歩いているだけだった。
「ね、ねぇ!ハヤテ君!?」
「は、はい!なんでしょうか?」
なんだかボーッとしていたみたい。少し問い詰めてやろうと思ったけど、振り返ったハヤテ君の顔は赤くなっていて、それを見てたら緊張してしまって上手く話せなくなってしまった。無自覚なんだろうけど、ホント、ずるいと思う。
「いや、なんでしょうかじゃなくて・・・せっかく遊園地に来たんだから何かに乗りましょ。それがここの醍醐味なんだし。」
「そ、そうですね!すいません、少し考え事をしてしまっていて。」
その考え事について聞く前に、ハヤテ君はまた私の手を引いてさっきとは逆方向に進んでいった。今度はちゃんとアトラクションのほうに向かっているようだけど、もう少し優しくエスコートして欲しいって思っている私は・・・ちょっと我が儘なのかな。
「えと、ヒナギクさんは高いところダメですから・・・」
「ちょ、ちょっと!ダメって言うほどじゃないわよ!苦手・・・そう、苦手なだけよ!」
「はいはい、それじゃ最初はあれに乗ってみましょうか。」
私を軽くスルーしておいて彼が指差した乗り物はまさかのメリーゴーランド。さすがに子供扱いしすぎだとか、この年で乗るようなものじゃないと憤慨している私をハヤテ君はまぁまぁの一言だけでなだめようとしてくる。まったく、本当に子供扱いしすぎなんじゃないかしら。
「まぁまぁ、でも僕たちぐらいの人も結構乗ってるみたいですし、ヒナギクさんが思っているより楽しいんじゃないですか?それに、メリーゴーランドに乗ったことはないんでしょ?」
た、確かに遊園地自体これが二回目だし、前は夕方からだったから時間的に乗れなかったけど。でもメリーゴーランドって・・・
な、なんだか楽しそうね。よく見てみたらカップルで乗っている人たちも少なくないし、もしかしたら私たちも恋人同士に見えたり・・・。
「わかった。乗る・・・。」
「はい!」
なんだか負けた気がするけど、彼の笑顔を見てると許せてしまう自分も現金なものなんだと思う。 でも、待ち時間のあいだハヤテ君は一言も喋らなかった。彼が無口なせいなのか、周りは賑やかなのにまるで沈黙の中にいるようで、二人でいるはずなのに一人ぼっちのほうが正しいような気がした。話かけようとしても声が震えてしまって、結局乗り込むまでをカウントダウンしているような鼓動を聞いていることしかできなかった。
「じゃあ、僕は前に乗りますから。」
「あ、うん。」
確かに意外と楽しかった。楽しかったけど・・・ 前に乗っているハヤテ君に追いつけないってところが、まるで自分を表しているようで少し悲しい気分になってしまった。
それからのハヤテ君はニコニコとしていていつもより優しい感じだったけど、なんだろう?この違和感。
「どうかしましたか、ヒナギクさん。も、もしかしてあまり楽しくないとか・・・。」
「い、いや楽しいわよ!私はすっごく楽しい。・・・でも、ハヤテ君は楽しんでるの?」
私の質問にハヤテ君は豆鉄砲をくらったような顔をした。まったくこの人は相変わらずというか、自分のことを全く考えていないというか・・・。
「ぼ、僕はヒナギクさんが楽しんでくれればそれで・・・」
「あのね、その気持ちは本当に嬉しいし、そういうところがハヤテ君のいいところでもあるとも思ってる。でも、もう少し我が儘になったら? ハヤテ君が私から離れようとした理由なんて分からないし、それでハヤテ君が苦しんでいても今の私には助けることができない。だけどそれはハヤテ君が苦しみを背負おうとするからなの。もっとあがいてよ。自分も幸せになりたいって言いなさいよ。前にも言ったじゃない・・・私は隣にいるよって。」
私はハヤテ君が好き。大好き。だから優しい言葉だけなんていらないし、彼の横顔のむこうにある存在だって受け止めたい。目を伏せてなんかいられないんだ。
「ハヤテ君が呼んでくれれば、助けに行くから・・・。ハヤテ君が言ってくれたように私はハヤテ君に頼るから、ハヤテ君も私に頼って欲しい。これじゃ、ダメかな・・・?」
私は今どんな顔をしているんだろう?多分自信のなさそうな表情なんだろうから、らしくないって言われると嫌だな。でも私の予想に反して、彼は笑ってくれた。それは作ったものじゃなくて、私の知っている、本当のハヤテ君の笑顔だった。
「ヒナギクさんは、優しい人ですね・・・。」
それはあの時とはまったく逆の言葉。嬉しいけれど、なんだかムカつくから、私もハヤテ君と同じように笑ってやった。
「私はハヤテ君より優しい人を知らないんだけど?」
「僕はヒナギクさん以上に優しい人を知りませんよ。」
嘘つき。私は心の中でそう悪態をついた。だってハヤテ君にはナギっていう命の恩人がいるんだもの。そのアドバンテージが簡単に埋まるわけないじゃない。 でも、本当にハヤテ君が私のことをそう思ってくれているのなら・・・
「それじゃ、ハヤテ君に一番優しい私がエスコートしてあげる!」
エスコートされたいとは思っていたけど、やっぱりされているだけじゃ・・・ね。 私が言ったんだから、ちゃんとハヤテ君にも我が儘言わせてあげなくちゃ。
「僕はヒナギクさんの行きたいところならどこでもいいですよ。」
いや、まぁ、分かってたんだけどね。ハヤテ君がこういう人だってことは・・・。とりあえずいろいろ吹っ切れたみたいだからいいけど。 ため息をこぼしたあと、私は一つの乗り物を指差した。
「それじゃ、あれに乗りましょ。」
「え?また乗るんですか?メリーゴーランド。」
「ハヤテ君がちゃんと決めてくれなかったら何度でも乗るからね。」
「えぇ!!それはあんまりなんじゃ・・・。」
冗談ですよねと顔で訴えてくるハヤテ君をわざとスルーして本日二回目のメリーゴーランドに乗り込んだ。今度は私が前で、ハヤテ君がうしろ。 なんというか・・・すごい優越感!恋は追いかけるより追いかけさせた方が勝ちって歩は言っていたけれど、その通りなんじゃないかしら。あ、でも追いついてくれないことがちょっと残念・・・って!私ったら何考えてるよ!たしかにデートしてるけど私たちはまだそんな関係じゃないんだし・・・ そ、そんな・・・ハヤテ君と追いかけっこだなんて・・・でも、アリかも。
「あの〜、ヒナギクさん?」
「もうハヤテ君ったら、ちゃんと掴まえてくれないとダメじゃない。」
「は?」
「え?」
その瞬間自分の顔の温度が急上昇していくのが分かった。ハヤテ君はちょっと赤い顔でオロオロとしていて、気まずそうに手を差し出してきた。
「と、取り敢えず降りませんか?ほかのお客さんもいますし・・・」
「う、うん・・・」
やっちゃった・・・!私ったらハヤテ君の前であんなこと!これからどうやって顔合わせればいいのよ! ハヤテ君もさっきから何も言ってくれないし・・・って、あれ?ハヤテ君は?もしかしてはぐれちゃったとか!?私ったらこの歳で迷子なんてカッコ悪すぎない!?いや、冷静に考えよう。別に私は迷子になったわけじゃない。迷子になったのはハヤテ君のほうなのよ。そう私は迷子になんかなっていないのよ!
「あ、ヒナギクさん。ソフトクリーム買ってきましたよ。」
「よし、今すぐハヤテ君を・・・あれ?ハヤテ君?」
「えっと、僕は今すぐ何をされるんでしょうか・・・?」
なんか空回ってばかりだな・・・私。 取り敢えず事情を恥ずかしながら説明して、ハヤテ君の恐怖で引きつった顔を直したあと、立っているのもなんだし、近くのベンチに座ってからソフトクリームを受け取った。
「ヒナギクさん・・・緊張してます?」
「なによ。悪い?」
「いえ、別に。」
私の不機嫌な返事を笑顔で、そして一言で返してくるハヤテ君には正直ムカついた。ホント、誰のせいだと思っているのかしら。
「僕だって緊張しているんですよ?だから、お互いもっとリラックスしましょう。せっかくのデートなんですから。」
食べ終わったハヤテ君はハンカチで手を拭いて私の前に立ち、気取った感じで胸に手をあて、会釈をしてきた。
「僕を・・・エスコートしてくれませんか?」
そんな風にされたら断れないというか、断りたくないというか、本当にずるい人だと思う。
「し、仕方ないわね・・・。」
「楽しかったですね。」
「そうね。」
帰り道、私たちは前と同じように・・・というわけではなく、ハヤテ君もちゃんと電車賃を払って普通に公園を歩いていた。もう真っ暗で、街頭の明かりが照らしてくれる道には私たち以外誰もいなかった。そういえば私とハヤテ君って結局決別とかしなかったわね。多分アカリが未来から来てくれたおかげかな。 ハヤテ君との会話は続かない、お互いに手を握っているわけでもない。でも彼との繋がりが確かにあるような気がした。
今、大好きなんて言ったら、5秒後に私たちはどうなっちゃうんだろう?
「ハヤテ君・・・。」
「ん?なんですか?」
「結局あんまり我が儘言わなかったわね・・・。」
心の内をそう簡単に伝えられるはずもなく、とりあえず振ってみた話にハヤテ君は真剣な顔をした。
「そんなことないですよ。今日は今までで一番欲張りになった気がします。」
「まったく、本当に欲ってのがないんだから。せっかくだし、あと一つだけ我が儘聞いてあげる。何でも言って。」
何でもはちょっと言いすぎたかな?まぁ、ハヤテ君だから変なことはお願いしてこないだろうし、こんなこと言うのはハヤテ君だけだから・・・いいわよね。 気がつくと自販機のすぐ横を通り過ぎようとしていた。ハヤテ君はまだ考えているみたいだし、ジュースでも買ってあげようかしら。
「ヒナギクさん。」
「あ、決まった?ジュース買うからちょっと待って・・・きゃっ!!!」
私がボタンに手を伸ばそうとしたとき、いきなり肩を掴まれて無理やり振り向かされた後、私はハヤテ君と自販機に挟まれるような図になった。
「いきなりすいません。でも、ヒナギクさんが悪いんですよ?僕に我が儘になっていいなんて言うから・・・。」
えっ!?ちょ、ちょっとどういうこと!?えと、ハヤテ君が私を押さえつけて、顔を近づけてきて・・・ま、まさか!う、嬉しいけど心の準備が!
「いい・・・ですか?」
まるでゴメンと言っているような顔は許可を取りながらもゆっくりと、本当にゆっくりと近づいてくる。ハヤテ君の吐息がかかるぐらいまで近づいたときには、脳が溶けてしまっているかのように何も考えられなくなっていて、口から出たのは自分でも驚くほど素直な言葉だった。
「ハヤテ君になら・・・。」
私はそう言って目を閉じた。ロマンチックにそっと閉じたんじゃなくて、不安とかがいっぱいで・・・ぎゅっと。感じる彼の吐息と、聞こえる息遣い。それらが近づいてくるにつれて私の心臓はうるさく鼓動する。私たちの距離がゼロになるのはあと何秒だろう?5秒?3秒?それとも・・・
ありがとうございます・・・
そんな小さな囁きが聞こえた気がした。そしてその瞬間・・・
「ダメーーー!!!!」
私は見事にファーストキスを邪魔されてしまった。驚いて目を開けると前にいたのはハヤテ君ではなく息を大いに切らしているアカリで、ハヤテ君はというと結構離れた場所にうつぶせに倒れていた。えっと、アカリがハヤテ君を突き飛ばしたっていうことでいいのかしら?
「もうやめてよ・・・。」
アカリはハヤテ君のほうに近づいて、起き上がったハヤテ君の胸ぐらをつかんだ。そのあとのアカリの言葉は悲しくて、そしてその内容に私の思考は真っ白になってしまった。
まるであと一つまで埋めていたパズルを裏返されたみたいに・・・
真っ白に・・・
「もう・・・
もうこれ以上ママを不幸にしないでよ!!」
どうも、タッキーです。 今回はアルバム「HiNA2」から「メリーゴーランドメロウ」を使わせて頂きました。いかがだったでしょうか?・・・と聞く前になんかいろいろグダグダな感じになってしまってすいません。そこはアドバイスなり、文才の無さということで見逃してくれるなりしてくれればありがたいです。 さて、次回はアカリちゃんに注目してもらいたいですね。まぁ、注目もなにも彼女の話なんですけど・・・。とりあえずはアカリちゃんとナギを会わせる予定です。 それでは ハヤヤー!!
何故か前回この形じゃなかったんですよね。こだわっているというか、今更やめられなくなってしまったというか・・・。 そ、それでは今度こそ ハヤヤー!!
|
|