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対象スレッド 件名: Re: 兄と娘と恋人と
名前: タッキー
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Re: 兄と娘と恋人と
日時: 2014/08/12 00:42
名前: タッキー

ハヤッス!タッキーです。
いやぁ〜、このSSの長くなりましたね。おかげさまで参照が2000越しました。読んでくれたかた、本当にありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いします。
さて、今回は記念として番外編でも・・・やりません。普通に前回の続きでハヤテとヒナさんがデートに行く前の話です。
それでは・・・
更新!





ハヤテたちが完全に寝静まった頃、アカリに名付けられた子猫、ヒナは裏庭を歩いていた。夜の闇に足音一つ立てない歩みの向かう先にはひとつの人影があり、その人影はヒナに気づくと座り込んで、出来るだけ目線をあわせるようにして話しかけた。

「ごくろうさま。アカリちゃんの相手は大変だっただろ?あぁ見えてやんちゃなところあるからな。」

岳が顎を撫でると、ヒナは首をあげてゴロゴロと気持ちよさそうに鳴いた。

「ヒナ・・・か。紛らわしいというか、俺も未練がましいというか・・・。まぁ、とりえずありがとうな。」

岳は頭を撫でたあと、ヒナの額に自分の人差し指を当てた。すると彼らの間からプツンと糸が切れるような音が聞こえ、そのままヒナはふらりと倒れてしまった。しかし、しばらくすると何もなかったかのように立ち上がり、そのままアカリたちの寝ている寝室のほうへ走って行ってしまった。

「結構なついてるんだな・・・。」

岳はふと空を見上げた。今日はよく晴れていて、都会でもたくさんの星を見ることができた。

「あと一週間か。遠いな・・・。」

ヒナが寝室に足を踏み入れるのと、夜空に独り言がすいこまれたのは同時だったが、その空の下に人影はなかった。





  第22話  『幸せの色』





11月13日、未来からきた綾崎家の長女、アカリはこれから自分の親になる予定の二人、ハヤテとヒナギクを朝食の間ずっと睨みつけていた。理由としては朝っぱらから顔を赤くさせてピンク一色なオーラを見せつけてきているのもあるが、一番は何だかよそよそしく、自分に何か隠し事をしているっぽいということだった。

「ねぇ、ママたち。私に何か隠し事してない?」

「へ!?べ、別に何も隠してないわよ!隠し事なんてあるわけないじゃない!」

隠し事とは遊園地に行くことなのだが、ヒナギクはハヤテと二人きりで行って仲直りをしようと考えていたため、アカリには悪いがハヤテにも協力してもらって必死に隠そうとしていた。もちろんハヤテには隠す理由を伝えていない、というより伝えきれていないが、それでも彼はなんとなくで了解してくれた。しかしこれからデートということで二人とも緊張してしまい、結局隠すどころか逆に感づかれているというわけである。

「わ、私は用事があるからもう出るわね!ごちそうさま!」

「あっ、ちょっとママ!?」

しかしアカリが手を伸ばしたときにはもう遅く、彼女の目には閉まろうとしているドアが映るだけだった。当然、怒りや疑問の矛先は残ったもう一人に向くわけだが、そのもう一人は危険を感じて既に食器を片付けて椅子から立ち上がろうとしていた。ハヤテの顔には少し冷や汗がにじんでおり、その後彼が発する言葉は何故か棒読みだった。

「さて、僕もバイトに行かないとな〜。」

「お父さん、この前バイトは月曜からって言ってたよね?今日は日曜なんだけど?」

ハヤテは冷や汗の量を2倍にしてしばらく固まっていたが、解決策を見つけられずに結局強行突破、つまり逃げ出した。こちらの速さも凄まじく、アカリは手を伸ばそうともしなかった。
隠し事をされたことは結構ショックで、アカリはしばらくうつむいたままだったが、子猫の鳴き声が彼女の顔をあげさせた。

「あ、ヒナ・・・。」

アカリはしゃがみ込むとヒナを優しく抱きしめた。ヒナの心配するような鳴き声はアカリの心を揺らし、弱音を隠す強がりの壁を溶かしていった。

「ヒナ・・・。私ね、夢を見たんだ。未来に帰る夢。そこではママはお父さんとちゃんと付き合って、とても嬉しそうに笑ってるの。私だってとても楽しかったし、お別れのときだって笑ってサヨナラできたんだけど・・・未来に帰ると、ママは一人で泣いてるの。お父さんの名前を呼びながら・・・。」

ヒナの顔はアカリのこぼした雫で濡れていた。しかし落ちてきた涙を払おうともせず、ヒナは泣いているアカリをじっと見つめているだけだった。

「ママは幸せになれないのかな?私は・・・どうしたらいいのかな?
ねぇ、ヒナ・・・、幸せって何色?ママが幸せになる方法ってなに?」

「それは人それぞれなんじゃねぇの?」

振り向くと笑顔の岳が立っていて、その後アカリは自分の頭に大きくて温かい感触を感じた。アカリと同じようにしゃがみこんだ岳は、彼女の頭を優しく撫でながら話を始めた。

「たいていの人は明るいのを選ぶだろうけど、暗い色を選ぶ人もいるかもしれない。今欲しい色を選んで未来がぐちゃぐちゃになってしまったり、未来をいい色にするためにあえて嫌いな色を選んだりもする。もしかしたらずっと好きな色でいられるかもしれないし、その逆もあるかもしれない。結局自分にとっての幸せの色すらも分からないんだ。」

アカリは岳の言葉に、どこか説得力があるような気がした。
この世界の全てを知っているような・・・















そう、まるで神様みたいな・・・

「分からないんなら、それが間違いになるとしても、後悔してしまうとしても、前に進んでみるしかないんじゃないか?」

岳はアカリを立ち上がらせると椅子に座らせた。そこにはまだ残っていた朝食があり、少し冷めているようだったが、それでも美味しそうだった。

「せっかく作ってもらったんだから全部食べないとな。子猫ちゃんのほうも腹空かせてるようだし、ちょっとなにか用意するか。」

「あ、牛乳ならここに・・・。」

アカリはテーブルに置いてあった牛乳を手渡そうとしたが、手で制された。その手の持ち主はとびきりの笑顔で、それを見たアカリはあることを思ってしまった。

「はは。子猫にはちゃんとネコ用のミルクをあげないと・・・。牛乳だとお腹壊しちゃうからな。」

この人なら、自分の母親を幸せにできるんじゃないかと・・・。

















ハヤテはアカリから逃げたあと、ゆっくりと待ち合わせ場所まで歩いていた。ゆっくりなのは時間的な余裕があるからで本人としても別に他意があるわけではなかった。しばらく歩くと待ち合わせ場所である駅に着き、ハヤテは時間を確認するためにiPhoneを取り出したが、そこで着信が入っていることに気づいた。それは伝言で、画面に表示された名前を見た瞬間ハヤテは自分の手が震えだしたのが分かったが、いろんな感情を押し殺して、iPhoneを耳に近づけた。

〈もしもし、ハヤテか?ていうか、これちゃんと録れてる?まぁ、いいや。〉

「っ!!」

〈まず・・・すまなかったな。その・・・私がお前と恋人だと思っていたこと・・・・。で、でもハヤテだって悪いのだぞ!お前があんなこと言うから・・・、仕方ないじゃないか。〉

「・・・」

ナギは明るい声で話していたが、本当はつらいのを我慢していることがハヤテにはすぐ分かった。

〈でも、本当は気づいてたんだ。お前が私を大切ししてくれるのは執事だからであって、別にそれ以上の感情があるわけないじゃないって。まぁ確信がもてたのは最近で、その時にはもう遅いことも、私がお前の特別じゃないってことも悟ったよ。
なんというか、私の漫画に似ているな。いろいろ立場とかは違うけど、先輩とブリトニーに。執事としてお前をしばってしまえばずっと一緒にいられるけど、本当のことを言ったりしたら、どこかに行ってしまう・・・て、ところかな。〉

「お嬢様・・・。」

ナギの声はだんだん勢いがなくなっていく。思わず呼んでしまっても、機械を通した自分の声が響くだけだった。たとえ一番が決まってしまっても、それ以外のものが無くなったわけでないし、ましてや大切でなくなったわけでもなかった。ハヤテがそのことに気づいても、謝罪の言葉を告げることも、やり直したいと伝えることもできなかった。

(僕は、僕は・・・)

〈あ、でも子どももいないから、やっぱり結構違うな。〉

ケータイの伝言機能って素晴らしい。シリアスな雰囲気は壊れ、ハヤテは特に気にもしなかったそれに大いに感謝した。
しかし、おどけた声はそこで終り、その後は真剣なナギの声が聞こえてきた。

〈ヒナギクを・・・幸せにしてやれよ。話したかったことはそれだけだ。
それからかけ直したりはするな。今お前の声を聞くとまたワガママ言っちゃいそうだから。それじゃ。〉

ナギの声が聞こえなくなった後も、しばらくの間ハヤテの右手は動かなかった。やがて無機質な電子音を止め、大切な人の声が入った機械をポケットにしまったあと、離れた場所にヒナギクの姿を見つけてその方向に歩みを進めた。

「あら、結構早かったのね。」

「ええ、ヒナギクさんを待たせるわけにはいきませんから。」

ハヤテは別に決意ができたわけでもないし、悩みが晴れたわけでもない。ただ踏ん切りがついただけ。

「それでは行きましょうか。ヒナギクさん。」

ただ、ほんの少しの勇気をもらっただけ・・・
















「ところで、岳さんって昨日なんで帰ってこなかったの?」

朝食後に岳の作った特製オレンジジュースを飲みながらアカリはふと思ったことを口に出してみた。岳は今アイロンがけをしていて、ヒナはそのアイロンから出てくる蒸気に手を触れては引っ込めを繰り返して遊んでいる。岳はアイロンのスイッチを切り、台の端に置いたあと、少しバツが悪そうな顔をして質問に答えた。

「なんというか・・・、ヒナの親を探してたんだ。」

「えっ、それじゃ・・・。」

アカリはヒナのほうを見た。ヒナは再び遊び道具が出てくるのを待っていたが、もう出てこないと分かると、アカリのほうに歩いて行った。

「ああ、見つけたから、今日かえそうと思う。元々怪我していたところを保護しただけだから、ヒナにとってもそっちのほうがいいんだ。・・・な?」

「・・・」

アカリはしばらく無言だったが、顔を上げると歩いてきたヒナを抱え上げ、抱きしめた。

「パパとママがいるって・・・素敵なことだもん。我慢しなくっちゃね。」





夕方、ヒナとその親ネコの再会は特に何があったわけでもなく無事にすんだ。ヒナは見つけた自分の両親のほうに駆けていき、アカリはそれを見守った。

「ねぇ、岳さん。お別れって、何色?」

「相変わらず難しい質問をするんだな。まぁ、多分それも人それぞれだろうな。多分ほかの出来事も全部自分次第なんだろう。でも、もしアカリちゃんの心が今、寂しいって色をしているなら、別に泣いたっていいんじゃないか?」

アカリの目尻には確かに涙が溜まっていたが、彼女はそれを決して流そうとはしなかった。

「泣かないもん。」

「そうか・・・。
でも、きっと後悔しない別れなんてないし、やっぱり寂しい。だから大切な人の時間を・・・大事にしなくっちゃな。」

岳はアカリの頭に手を置き、家のほうに歩いて行った。アカリは岳について行こうとはせず、しばらくそのままヒナたちが歩いて行った方向を見つめていた。

「ヒナ・・・、私決めたよ。」

アカリは反対方向を向き、全力で走った。そして先に帰っていた岳に追いつくと彼の服の裾を掴んだ。

「岳さん!お願い!ママたちのところにすぐに連れてって!」

「・・・いいのか?」

「私は、ママに幸せになって欲しいから。」

岳は頭をガリガリとかくと、アカリの小さな手を引いた。まだ10年も生きていない子どもとは思えない程アカリの手は強くて、そして・・・寂しい感触をしていた。













どうも。
今回はデートの前ということでハヤテとアカリちゃん、この二人の心境の変化を書きました。いかがだったでしょうか。個人的には岳君がキザ過ぎたり、アカリちゃんの精神年齢いくつ?とツッコミたくなるような感じで少し・・・ね。
ま、まぁここから話の展開が変わっていく予定ですのでお楽しみに。

それと、少し前なんですが、アカリちゃんのイラストをお絵かき掲示板に投稿してみました。手描きで。いや、そういうソフトとか機材持ってないですし、買うお金もありませんし仕方ないじゃないですか。でも、これからもたま〜に描いてみようと思ってるので、リクエストとかあったら言ってください。ちょうど管理人さんが伝言板をリニューアルしてくれたので使ってみるのもいいかと。ちなみに全部手描きになるのはご了承ください。

それでは。