Re: 兄と娘と恋人と |
- 日時: 2014/08/02 12:03
- 名前: タッキー
- ハヤッス!タッキーです。
今回は半分ぐらいまで書いてたのに全部消えちゃいました(涙) だから最初からやり直しなんです。ちゃんとバックアップはとっておきましょうね。 さて今回はヒナギクさんとアカリちゃんが本格的に絡むお話です。ちなみに冒頭はヒナギクさん視点でいきます。 それでは・・・ 更新!
昨日ハヤテ君と喧嘩してしまったせいだろうか・・・いや、きっとそれが原因だろうけど、今日は全くと言っていいほど調子が出ない。朝にしようとした勉強も結局1ページも進まなかったし、部活でいくら竹刀を振っても気持ちが晴れることはなかった。当然、生徒会の仕事が手につくはずもなく、部活が終わるとすぐにアパートに帰った。帰り道で何度も大きなため息をついて、我ながららしくないと思う。昨日、絶対に諦めないって、ハヤテ君を助けてみせるって決めたのに、こんなんじゃダメだな・・・。私はアパートに着くともう一度ため息をついきながら玄関に入った。
「ただい・・・は、ハヤテ君!?」
えっ!?なんでハヤテ君がここにいるのよ!?そりゃ、ちゃんと話をしなくちゃって思ってたけど、心の準備ってものがあるじゃない!何をするにも準備って必要なんだから・・・て、こんなのは逃げるための言い訳よね。それよりも・・・
「なんで正座なんか。・・・て な、何で歩たちはそんなに険しい顔してるのよ。」
正座しているハヤテ君を囲むように立っている歩たち全員から出ている怒気というか、とにかくただならぬ雰囲気に怯んでしまった。
「ヒナギクさん・・・」
ハヤテ君が私の名前を呼ぶのと廊下からドタバタと慌ただしい足音が聞こえてくるのは同時で、その足音の正体は勢いよく私に飛びついてきた。
「ママー!」
「え?えっ!?」
ママ?私が!?た、確かに何だかこの子私に似ているような気がするけれども・・・。何がなんだか分からず周りを見てみると、すっごい笑顔の歩が目に映った。
「取り敢えずヒナさんも座ろうか。正座で。」
なんだか昨日励ましてくれた親友が遠くに行ってしまったような気がした。
「ちょ、ちょっと待ってください!確かにこの子は僕とヒナギクさんの子どもですけど・・・」
うそ!?本当に私の娘ってどころかハヤテ君との間に生まれた子!?でも私は子どもを産んだことも、子どもを生むような行・・・ゴホン、ゴホン! と、に、か、く!そんなのありえるわけないじゃない!だってハヤテ君は・・・
「ママ、すごいニヤニヤしてる。」
「えっ!?うそ!?」
慌てて口元を隠したけど、この子は相変わらず無邪気に笑っている。仕方ないじゃない!そりゃ好きな人との間に子どもができたなんて聞いたら嬉しいに決まってるでしょ!
「ヒナさん。たとえ付き合っていたとしてもその年で子どもをつくるのは良くないんじゃないかな。」
「年齢的に考えなさいよ!大体16歳の私にこんな大きい娘がいるわけないじゃない!」
よくよく考えてみればそうよ。ハヤテ君と出逢ったのはつい一年前なんだからそんなのありえないわよ。
「その事なんですが、この子・・・アカリっていうんですけど、実は未来から来てるんですよ。」
「「「へ!?」」」
「い、いや、いくらなんでもそれは・・・。」
「ほ、本当なの?えっと・・・アカリ?」
私に名前を呼ばれたことが嬉しかったのか、アカリは今まで以上の笑顔で答えてくれた。
「うん!だからママたちにとってははじめましてだね。あらためまして綾崎アカリです。よろしくねっ!」
第21話 『母娘』
アカリの熱心な説明に歩たちは取り敢えず納得したということにし、今は普通に彼女と遊んでいる。
「た、楽しそうですね。」
「そ、そうね。」
アカリたちが楽しそうにしている中、ハヤテとヒナギクの間には気まずい空気が流れていて、正直二人とも逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。それではいけないと何か話を振ってみても全くと言っていいほど続かなかった。
「ママもこっち来ようよ〜!」
「じゃ、じゃぁ私行くね。」
「あっ・・・」
アカリに呼ばれたのを好機とばかりに立ち上がったヒナギクの手をハヤテは無意識のうちに掴んでいた。
「は、ハヤテ君!?」
「ヒナギクさん、僕は・・・」
ヒナギクの手はずいぶん鍛えられていたが、それでもハヤテには小さくて、少し力を入れてしまえば壊れてしまうんじゃないかというほど儚く感じた。彼女の手を握るのは初めてではないはずなのにドキドキが止まらなくて、自分がヒナギクのことを好きになったことや、彼女を遠ざけたのを後悔していることをあらためて実感した。そうなるとハヤテは自分の気持ちを抑えることはできなかった。
「もぉ!二人ともなにイチャイチャしてるの!」
ただし第三者の介入があった場合は別である。ハヤテとヒナギクが慌てて手を離しお互いに背を向けたのはまさに一瞬と言えるほどだった。 アカリはぶすっとしていた顔を笑顔にするとヒナギクの空いた手を両手で引っ張り、ヒナギクも自分の娘に断ることができずそのままついて行ってしまった。
「ねぇアカリ、ハヤテ君は一緒じゃなくていいの?」
「お、お父さんは別にいい・・・。」
先程は逃げようとしてしまったが、やはりハヤテと少しでも話をしなくてはと考え直したヒナギクは疑問に思っていたことも重ねてそれとなくアカリに質問したが、彼女は顔を曇らせて、曖昧に答えるだけだった。 ヒナギクがアカリという名前を考えついたとき想像していた未来は三人が笑っているもので、少しも暗いものはなかった。それはヒナギクにとっての希望であり、そして目標でもあった。
「もしかして、ハヤテ君のこと好きじゃないの?」
「・・・!!だ、だってお父さんは! ・・・・・・何でもない。」
アカリは何かを言いたげだったが、すぐに顔を俯かせて黙ってしまった。ヒナギクはそれについて言及しようとしたが、それは横から出てきた小さい手によって制された。
「せっかくの母娘なんですから陰気臭い話はもうやめですわよ。」
「アテネお姉ちゃん・・・。」
アカリはアテネの気遣いに感謝したが、あらためて彼女を見て、そういえばと口を開いた。
「アテネお姉ちゃんってママたちとおない年だよね?」
「ええ、まあそうですけど・・・それが何か?」
アテネは当然とばかりに答え、その口調には何言ってるのというようなニュアンスがあったが、アカリは首を傾げたままで、そのまま疑問をストレートにぶつけた。
「なんだかちっちゃすぎない?」
「なっ!今は事情でこうなってるだけですわ!6歳なんですからこれぐらいが普通ですわよ!」
アカリに痛いところをつかれてアテネは必死に言い訳しようとしている。小さい子同士がじゃれているようで、なんだか微笑ましい光景だった。
「そういえば、アカリちゃんって何歳なのかな?」
「ん?7歳だけど。」
「・・・あ、アカリちゃん大きいね〜。」
それを聞いた歩たちはすぐにアカリとアテネの身長を見比べ、そしてたった1歳で30cm以上の差があることに驚かずにはいられなかった。
「アカリが大きいだけなのか、それともアリスが小さいだけなのか・・・。」
「千桜、どちらともっていう選択肢もあるわよ。それよりヒナは一体何を食べさせているのかしら?」
ルカの疑問に真っ先に答えたのはアカリだった。彼女は驚いている皆に対してずっと首を傾げていて、自分の発育の良さにもこれが普通と言わんばかりの表情だった。
「別にママの料理はとっても美味しいけど、メニューはいたって普通だと思うよ。あ、でも牛乳は毎日飲みなさいって言われてたっけ。なんでも気になりだしてからは遅いとかなんとか・・・。」
「ヒナ、入れ知恵するのは少し早すぎるんじゃないか?」
「み、未来の話でしょ!それにきっと変な意味なんかないんだから!・・・多分。」
ヒナギクは心の中で未来の自分に悪態をつきながら言い訳をしている。当然その顔は赤く染まっていた。
「とりあえずヒナはずっと変わらずやっていけてるってことで。」
「何が変わらないのよ!もぉーーー!!!」
それから夕方になった頃、アカリは遊び疲れて眠ってしまった。ヒナギクは彼女に自分の上着を被せると、アパートの屋根裏部屋に向かった。
「途中から姿が見えないとは思ってたけど、やっぱりここにいたんだ。あ、隣座ってもいいかしら?」
そう言っておきながらヒナギクはハヤテが頷く前に彼の横に腰を下ろし、それをハヤテは黙って見ていた。屋根裏部屋にはもうハヤテの私物はなく、少し広くて暗い空間に、窓から差し込んでくる四角い夕焼けの明かりだけが温かみを作っていた。その中にすっぽりとおさまっている二人の距離はゼロに近く、しかしゼロではないとてももどかしいものだったが、ヒナギクはそんな中あえてハヤテに話しかけた。
「アカリと・・・何かあったの?」
「未来の僕みたいですよ。結局ヒナギクさんのことも、せっかくできた娘のことも幸せにできないなんて本当にダメな人間ですね。」
自嘲的に含み笑いを浮かべていたハヤテに、ヒナギクはそんなことはないと詰め寄った。ハヤテはヒナギクとの顔の近さにドキッとしたが、それは彼女のほうも同じようで、ヒナギクは顔を赤らめたまま、しかし真剣な表情で話始めた。
「ねぇ、ハヤテ君。アイリスの花言葉って知ってる?」
「え?た、確かあなたを大切にします・・・でしたっけ?」
「そう。実はね、愛虹(アカリ)って名前はそのアイリスの花からきてるの。ほら、アイリスってギリシャ語で虹って意味じゃない。」
そう言ってヒナギクがあらためてハヤテを見てみると、彼は目をパチクリさせて、いかにもマジですかというような顔をしていた。
「と、とにかく!そんな名前をつけたハヤテ君がアカリを大事にしないわけないじゃないってことよ。きっと事情があってアカリが少し勘違いしてるだけだから、心配しなくても大丈夫よ。ハヤテ君がお人好しなほどに優しいことは、私が一番知ってるんだから・・・。」
「・・・」
ヒナギクいると励まされてしまう、頼ってしまう、安心してしまう、もっと一緒にいたいと思ってしまう。ハヤテは黙って立ち上がって彼女に背を向けた。あとちょっとでも傍にいるとまた自分を抑えることができなくなってしまいそうで、少し怖かった。
「昼間、何言おうとしたの?」
階段のほうへ向かっていたハヤテは後ろからの問いかけに足を止め、逆にヒナギクに問いかけた。
「僕は間違っているんでしょうか?いろんなものを捨てて、ヒナギクさんのためにって。でも結局傷つけてしまって・・・はっ!!」
自分がとんでもないこと言っていたのに気付いて慌てて振り返ると、ヒナギクが顔を真っ赤にして目を見開いていた。彼女はえ、あ、その、と口をパクパクさせて必死にハヤテに答えようとしていたが、やはり呂律がまわらず結局そのまま顔を俯かせてしまった。
「え、えっと・・・あ、アカリのことよろしくお願いします!」
ハヤテもその場の雰囲気に耐え切れずに逃げ出してしまった。 彼が勢いよく玄関の戸を開ける音が聞こえて、ヒナギクは我に返った。
「私ってば・・・何やってるんだろう?」
ハヤテにも問題はあったが、せっかくのチャンスをふいにしたのはヒナギク自身だ。しかし彼女は後悔するよりも早く顔を上げ、階段を駆け下りた。そして共同スペースに行き、そこでまだスヤスヤと眠っているアカリを悪いと思いながらも軽く叩いて起こした。
「ん〜、なに?」
「ねぇ、ハヤテ君帰ったんだけど今どこに住んでるの?」
「え?お父さん帰っちゃったの?だったら岳さんの家だけど・・・。」
ヒナギクはあちゃ〜、と額に手を当てた。彼女は岳の住所を知らないのだ。 ヒナギクどうしようか悩んでいると、アカリがおずおずと声をかけてきた。
「私、案内しようか?」
「ホント!?」
アカリはこの時ほど目を輝かせた自分の母親を見たことがなかったという。
「な、なんでヒナギクさんがいるんですか?それにアカリも・・・。」
インターホンが鳴る音を聞いて玄関を開けると、少し息切れをしているヒナギクと彼女に大丈夫〜?と問いかけているアカリがいた。どうやらヒナギクはアカリを背負って走ってきたらしい。そりゃ疲れるだろ、と思いながらハヤテは取り敢えず二人をリビングにあげてお茶をだした。
「もう一度聞きますけど、何で・・・。」
「だって、せっかく未来から娘が来ているのに親である私たちが一緒にいないのは、ちょっと可哀想じゃない。」
「わ、私はお父さんがいなくても別に・・・。」
「アカリもそんなこと言わないの。ほら、ご飯作るから手伝って。ハンバーグでいいわよね?」
ヒナギクはアカリの頭をクシャっと撫でると、そのままキッチンに連れて行った。
「でも、岳さんにも一応許可を貰わないと・・・。」
「あ、それなら置き手紙があったわよ。」
「置き手紙?」
テーブルの上にはいつの間にか本当に置き手紙が置いてあった。ハヤテはそれに嫌な雰囲気を感じながらも手にとった。
〈やっぱり今日帰ってこないから留守番任せた。あとヒナを泊めるとかは全然OKだから〉
ハヤテはタイムリーすぎる手紙に思わず大きなため息をついてしまった。嬉しいような、そうでないような複雑な気持ちで、ハヤテは手紙をテーブルに置こうとすると裏に何か書いてあるのが透けて見え、急いで手紙をひっくり返した。
〈ちなみにお前の寝室意外、部屋は鍵かけておいたから、逃げずにちゃんと向き合えよ。なんなら仲直りついでにおいしくいただいちゃうのもアリなんじゃねw〉
バシンッ!!!
「ど、どうしたの?ハヤテ君。なんか顔も赤いけど・・・。」
「な、なんでもないですよ!本当になんでもないです!」
「そう、ならいいんだけど。」
机に手紙を叩きつけたところを丁度よくヒナギクに見られてしまい、ハヤテは動揺して少し叫んでしまった。ヒナギクは取り敢えず気にしないようにしてまたキッチンに戻っていったが、ハヤテは彼女を意識しすぎてしばらくまともに目を合わせられなかった。 ヒナギクのほうもほぼ二人きりなこの状況に緊張せずにはいられず、チラッとハヤテの方を見ては顔を赤くして料理の方に戻るというのを繰り返していた。
「はい、ニンジン剥き終わったよ。ていうか、ママたちって、一緒にいるといつもイチャイチャするよね。」
「なっ!イチャイチャなんてしてないわよ!」
なんだか仲間はずれにされていることに不快感を感じたアカリはあえて皮肉っぽく言ってみたが、逆効果だった。アカリはやっぱりイチャイチャしてるじゃないかと母親をジト目で見ていたが、すぐに表情を戻した。
「ママはお父さんのこと好き?」
「ふぇ!?ほ、本人の目の前でなんてこと聞くのよ!」
「いいから!」
アカリの目は好奇心ではなく、ヒナギクの想いを確認したいというようなものだった。それを感じとったヒナギクは音量を少し小さくしながらもきちんと答えた。
「す、好きよ・・・。」
「どんなところが?」
「ど、どんなところって!?」
ヒナギクが思わずハヤテのほうを見ると何故か彼もこっちを見ていて目が合ってしまった。しかもその後ハヤテが顔を真っ赤に染め上げて反対方向に逸らしてしまったため、ヒナギクは余計に緊張してしまい、言葉を発することができなかった。それでも辛抱強く待っていたアカリにとうとうヒナギクも折れた。
「呼べば助けに来てくれて・・・そこがカッコよくて・・・、そして絶対に優しいところ・・・かな。」
言ったあと、やっぱり恥ずかしくなってヒナギクは俯いてしまったが、アカリはそれを笑うようなことはしなかった。
「・・・やっぱり変わらないんだね。」
「え?」
「なんでもないよ。それよりもご飯はまだー?」
さっきとはうって変わって無邪気に夕食を催促してくるアカリにごめんごめんと軽く謝っていると、ヒナギクは何が気になっていたのか忘れてしまった。テーブルに料理を運ぶとアカリは待ってましたとばかりに手を合わせ、きちんと合唱をしてから箸を動かし始めた。
「「家族ってこんな感じなのかなぁ。・・・」」
「・・・///」
「・・・///」
ハヤテとヒナギクは独り言でつぶやいたはずの言葉が重なってしまい、恥ずかしさから顔をそらしてしまった。それを見ていた、というより煮え切らない桃色空間を見せ付けられていたアカリはもう諦めたというように大きなため息をついた。
「ごちそうさまでした。」
アカリは食べ終わると、特にやることもなかったので部屋を見渡してみると、カーテンの陰に何かちっこくて白いものがあるのに気づいた。近づいてカーテンをめくってみると、そこにいたのは子猫だった。
「うわー!ママ、子猫がいるよー!」
「わ、ホントだ。ガウ君って猫飼ってたんだ。」
アカリはヒョイっと子猫を抱き上げると、抱きしめて頬ずりをした。子猫の白い毛並みにはところどこ桃色の毛が混じっていて、一見桃色の子猫にも見えた。
「ふわー!もふもふだー!ねぇ、この子なんて名前なのかな?」
「岳さんからペットいるって聞いてないし、首輪もつけてないからたぶん野良なんじゃないかな。だから多分名前はないと思うけど。」
「ふ〜ん、名前がないって少し寂しいんじゃない?」
アカリは高く持ち上げながら質問しいたが、子猫が日本語を分かるはずもなく不思議そうに鳴くだけだった。
「じゃぁ私が名前をつけてあげる!えっと・・・ん〜・・・」
そんなに簡単に名前が決まるはずもなくアカリはしばらく考えていて、それをハヤテたちは黙って見守っていた。ハヤテは内心ヒナギクの娘のネーミングセンスにヒヤヒヤしていたが、それでも口を出すようなことはしなかった。
「そういえばこの子ってオス?メス?」
「え?それは・・・、ハヤテ君どっちか分かる?」
ハヤテはアカリから子猫を受け取ってすぐにメスと判断した。ハヤテの知識の豊富さに関心しながらアカリは再び子猫を受け取り、ニコッと笑った。どうやら決まったようだ。
「よしっ、だったらこの子の名前はヒナにしよう!」
アカリがそう言った瞬間、ヒナと名づけられた子猫は体をビクッと震わせ、アカリの腕の中から逃げ出してしまった。あっ、と手を伸ばしたがすぐに子猫の姿は見えなくなってしまった。
「名前・・・気に入らなかったのかな?」
ショックを受けて落ち込んでしまってるアカリを見てハヤテはオロオロしていたが、ヒナギクは微笑むと彼女の肩を優しくたたいた。
「そんなことないわ。きっと恥ずかしかっただけですぐに戻ってくるわよ。」
「・・・ホント?」
「ええ、本当よ。ほら、早くお風呂に入って寝ましょ。」
ヒナギクは一応ハヤテに許可を取ると着替えを用意してから、アカリと一緒に風呂場に向かって行った。 ハヤテは食器を片付けてからはやることがなくなってしまったので、とりあえずソファに腰を下ろすと、さっき逃げてしまったはずの子猫がひょっこりと顔をだした。
「たしかにヒナギクさんに似ているかも・・・。」
ハヤテは子猫を抱き上げてしばらく見つめていた。確かにヒナギクに似ていると言われれば納得してしまうが、目だけはなんだか優しげで、どちらかというとアカリに似ている気がした。
「ヒナ・・・。」
ふいにアカリがつけた名前で呼んでみると、まるでヒナギクを呼び捨てで呼んでいるようで恥ずかしくなってしまい、ハヤテはヒナから顔をそむけた。ヒナはキョトンした様子でハヤテの真っ赤な顔を見ていた。
「ほら、流すから目をつむって。」
アカリの髪は思った以上にさらさらでヒナギクは少しの間その心地いい感触を堪能していた。アカリのほうもヒナギクに頭をなでられるのが好きらしく、すっかり元気になっていた。
「そういえばアカリって好きな男の子とかいるの?」
「え?別にいないけど。」
娘のあっさりとした答えにヒナギクはつまらなさそうな顔をした。ヒナギク自身、ハヤテに恋するまでそのようなことには無縁だったが、別に興味がなかったわけではないのだ。しかしアカリの顔を見てみると本当に何もないのが分かった。
「アカリってなんだかモテそうだからそういうのもあると思ったんだけどなぁ。」
「え〜、そんなことないよ〜。」
湯船につかりながらいっときガールズトークをしていると、ヒナギクが急に話題を変えた。
「でも意外だったな。」
「ん?何が?」
「いや、ハヤテ君の娘ってきっとファザコンみたいになるだろうなって思ってたから・・・。」
「わ、私が!?ないない!ぜったいないよそんなの!」
アカリは心なしか赤くなってしまっていて、わたわたと手を振っている。ヒナギクは一度ほほ笑むと、アカリの頭をそっとなでた。
「いきすぎは確かにやめてもらいたいけど、親のことを好きになれるって素敵なことよ。それに、あなたが思ってるよりハヤテ君はずっといい人なんだから。」
アカリは納得のいかなそうな顔を鼻のあたりまでお湯にひたらせてブクブクと泡を立てている。ヒナギクがアカリを見ていると何度もほほ笑んでしまうのは娘という特別な存在だからなのだろう。
「ねぇ。」
「ん?」
「未来から来てくれて、そして私の娘であってくれて・・・ありがとうね。
アカリのこと、大好きよ。」
アカリはヒナギクの笑顔に精一杯の笑顔で返した。
「うん。私もママのこと大好きだよ!」
ハヤテに抱えられていたヒナはアカリたちがあがってきたのが分かるとその方向へ走って行ってしまった。
「あ!ヒナー!」
「なんだかまぎらわしいわね。」
髪をふきながらヒナギクは複雑な表情をした。慣れればいいのだろうが、自分の名前を呼ばれたようでいちいち反応してしまうのがもどかしかった。
「仕方ないんじゃないですか?どちらも楽しそうですし。」
「そうなんだけどね。ところでハヤテ君、お風呂は?」
ハヤテはヒナギクたちが来る前にシャワーを浴びていたので今日は洗濯をして寝るだけだった。それを聞くとヒナギクはふ〜ん、と曖昧な返事をしながらハヤテから顔をそむけた。どうしたんだろうとハヤテがヒナギクの顔を覗き込むと、彼女は逃げるようにアカリのところに行ってしまった。
「ほら、アカリ。もう遅いから寝ましょ。ヒナとはまた明日遊びましょ。」
「ママなんで赤くなってるの?」
「いいから!早く寝ましょ。ね。ね!ほら、ハヤテ君も早く!」
「へ?」
今、ハヤテ、アカリ、ヒナギクは川の字になって同じ布団で寝ている。ヒナギクが赤くなっていた理由は最初からこの体制で寝るつもりだったかららしい。 しばらくたってアカリとハヤテが寝てしまったころヒナギクはまだ目を開けていた。少し体を動かすとアカリの桃色の髪の向こうにハヤテの背中が寝息とともにわずかに上下しているのが見えた。
「明日約束したこと・・・忘れてるわよね。」
「忘れてませんよ。」
「!!・・・なんで?」
「約束ですから・・・。」
ヒナギクはそう、と一言だけ言って目を閉じた。 ずっとこのままでいたいと思いながらも、明日に少しの期待を抱いて。
どうも 長かった。本当に長かった。 夏休みなのにこれを書く時間が全然なくて結果的に更新ペースも落ちてきて・・・ と、とにかく今回はサブタイの通りできるだけアカリちゃんとヒナさんにスポットを当ててみましたが、できるだけです!できるだけ!まぁ、こういうところしっかりしなくちゃって思ってるんですけど・・・なかなかできないんですよね。 えと、子猫のヒナに関してはなんというかヒナギクさんが言った通りまぎらわしいです。でも結構使いやすいからこれでいいかなぁ、と。 それから川の字になって寝るところはもう少し盛ることができたらよかったんですけどネタが思いつかないのと最後の部分につながらない(それだけの文才がない)のとで諦めました。
さて、次回は最後にでてきた約束のお話。ていうかぶっちゃけ遊園地に行くんですけどね。 あぁ、なんだかこれもタイトル詐欺になるかも。で、できるだけがんばります。
それでは ハヤヤー!!
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