Re: 兄と娘と恋人と |
- 日時: 2014/07/07 00:59
- 名前: タッキー
- ハヤッス!タッキーです。
ばずは管理人の双剣士さん、記事の削除ありがとうございました。 運営がしっかりされているので安心して投稿ができます。ありがとうございました。
そういえば前回を書いてて思ったんですが、ハヤテのお母さんって名前何なんでしょうね。お父さんの方は一応、瞬と原作に出てますけど・・・何だか今更ですね。
さて、今回はヒナギクさんサイドのお話。 それでは・・・ 更新!!
11月11日、西沢歩はたまたま早く起きていた。
「う〜ん、まだ六時半だから朝ご飯食べるのにはちょっと早いかな? ・・・あれ、ヒナさん?平日なのに私服なんて着てどこ行くんだろう?」
歩が縁側に座ってこれからのことを考えていると、何やら凄く嬉しそうな顔をしたヒナギクがアパートから出て行くのが見えた。
(ヒナさんは私服で・・・なおかつ嬉しそうで・・・・
はっ!!!これはもしかしてハヤテ君!!??い、急いで後を追わなくちゃ!!!)
歩は制服・・・は着るのに時間がかかるのでジャージに着替えて、わずか一分もかからないうちにアパートから飛び出した。が・・・
「ヒナさん、足速すぎじゃないかな・・・」
歩がヒナギクの向かったと思われる方向を進んでいっても、あの綺麗な桜色の髪を見つけることはできなかった。さすがに諦めて帰ろうとした時、かすかに探していた少女の声がした気がした。
「・・・さいよ!・・・・・・じゃない!」
聞こえた。今回は気のせいではなく彼女の声だとちゃんと分かった。声がした方に顔を向けると公園があり、歩はすぐに駆け出した。そしてヒナギクたちの姿を視界に捉え、近くの木のかげに隠れようとした時、また声が聞こえた。断片的ではなく、はっきりとした悲痛の声が・・
「もう・・・僕の心に入ってこないでくださいよ!!!!!」
歩は隠れるのも忘れてただ彼らを見つめることしかできなかった。それはハヤテの想い人を知ったショックからではなく、二人の背中がとても辛そうで、悲しそうだったから。
「ヒナさん・・・」
親友の名前は彼女に届く前に、冷たい風に吹き消されてしまった。
第17話 『想い絶ちがたく、初恋なりがたし』
ハヤテが去っていった後、ヒナギクが歩に気づくのには大して時間はかからなかった。
「全部聞かれてた?」
「いや・・・最後のハヤテ君の一言だけ・・・」
「そう・・・」
空を見上げたヒナギクの顔には表情がなかった。あれだけのことがあったにも関わらず泣いてもいないし、悲しそうにもしていない。ただ空を見ていた。
「恋って・・・」
歩がヒナギクにどう声をかけようか戸惑っていると、彼女の方から口を開いてきた。相変わらず表情のない顔で空を見上げているが、歩にはそれが何かを隠そうとしているように見えた。
「恋って・・・何で痛みも連れてくるのかな?もういっそ記憶とか全部捨てて、身体ごと消えてしまいたいくらい・・・」
「ヒナさん・・・」
歩が心配したような声を出すと、ヒナギクは初めて表情を作った。笑っている・・・
「なんてね。私のこんな話なんて歩にはイラつくだけよね。ごめんなさい。」
歩もヒナギクもハヤテの言葉で気づいたことがある。まず、また何かに巻き込まれて、それにヒナギクを巻き込むまいとしていること。それに、ハヤテがヒナギクのことを好きだということだ。 ハヤテが選んだのはヒナギクであって歩ではない。だからヒナギクは自分が失恋したみたいな言い方をすると親友に対して失礼だと考えていた。
「ヒナさん・・・。私たち、親友だよね?」
「うん・・・。本当にごめんなさい・・・。」
やはり怒らせてしまったか、とヒナギクはこれから自分に来るであろう非難や怒りの声を受け入れる準備をした。 歩の声を聞く前に、ヒナギクは自分のことをずるい人間だと思った。わざと自分を傷つけることでその前の傷を隠そうとしている。そして自分を傷つける役目を親友にやらせている、ずるい人間だと・・・。 歩が口を開いたとき、ヒナギクの体はビクッと小さく震えた。そして歩の言葉を聞き終えたとき、ヒナギクの体は震えが止まらなくなっていた。
「親友なのに、なんで頼ってくれないのかな?」
歩の声には怒気があったが、ヒナギクがひるんだのはそれではない。それ以上の優しさにヒナギクは怯えすらも感じていた。
「な、なんで!?あなたにとって私は裏切り者で・・・」
「ヒナさんっ!!!!」
「っ!!」
歩は怒っていた。ヒナギクの性格上まだ気にしているのかもとは思っていたが、それを逃げ道にしていることが彼女らしくないと思ったから・・・ 真っ直ぐな彼女が自分に逃げ道を作っていることもらしくないと思ったから・・・ ヒナギクらしいヒナギクが好きだったから・・・ だから自分たちの関係を思い出して欲しかった。そのためには何回でも同じことを言ってやると決めていた。
「それでも私は、ヒナさんを親友だと思ってる。私にはハヤテ君とヒナさんの間に何があったのか知らないし、それでヒナさんがどれだけ傷ついたかも分からない。だからと言って無理に話せとも言わないけれど・・・友だちの前でくらい、泣いてくれたっていいんじゃないかな?」
歩はヒナギクをそっと抱きしめた。
小さかった・・・ 震えていた・・・
頭と腰に回した手に力を入れると、彼女は自分の背中をギュッと掴んできた。
「初恋だから・・・上手くいかないし、初恋だから・・・忘れられないかもしれない。やさしさが残酷に感じることだってあると思う。でも自分を傷つけて逃げないで・・・ 悲しいなら悲しいって、辛いなら辛いって、泣きたいなら泣きたいって言って。私の肩でいいなら貸すよ?それにね、ヒナさんが泣いてくれないと・・・私も泣けないんだよ?」
そう言った歩はすでに泣いていた。ヒナギクは彼女の嗚咽を聞くたびに、目頭に熱いものがこみ上げてきた。それはやがて大粒の涙となって歩の肩を濡らした。
空は青というより黄金に近い色をしていた。まだ顔を出して間もない太陽は夜の冷たさを少しずつ溶かしていき、目覚めたばかりの鳥たちのさえずりは木の葉が擦れ合う音とともに幻想的な旋律を作っている。 抱き合っている彼女たちの横をやさしい風が通っていった。
「綺麗な朝には少し不似合いなんじゃないかしら?こんな悲しい話・・・」
「そうだね。でも素晴らしいお伽話になるんじゃないかな?私も協力するよ。」
二人は体を離し、お互いの顔を見た。目元が涙で真っ赤になっていて、顔もぐしゃぐしゃだったが、もう大丈夫だと思った。
デアッテシマッタラドウスルノ?
簡単だ、大切にすればいい
アフレルオモイハドコニユクノ?
もちろん、大好きな人のもとへ もし届かないのなら、自分で届けに行けばいい
答えは出ている。あとは行動するだけ。
「じゃ、ヒナさん!私は学校があるから!」
「一応、私もあるんだけどね・・・。」
歩は少し笑うとちょっとだけ真剣な表情を作った。
「私も・・・同じ気持ちだからね。」
彼女は優しく、そして強い。そのことをあらためて感じた。公園から出て行く彼女はいつものように笑っていて、純粋にあんな風になりたいとも思った。
(でも、まだ無理みたい・・・。)
ヒナギクは内側から堪えていたものが溢れてくるのが分かった。彼女の前ではどうしても見せられないもの・・・見せたくないものが・・・
「泣いても・・・いいかな?」
ヒナギクは涙を拭わず、ただ顔を手で押さえている。
心はプラスティックのように強くはなく、少し手をすべらせて落としてしまえば簡単に砕けてしまう。
(でも、壊れないものだってあるはず。)
ヒナギクは顔を上げると、一つのベンチの方に向かった。そこにはハヤテからもらったものが置いてあり、ヒナギクはそれを手に取ってしばらく見つめていたが、やがて口を近づけ・・・
もう冷めてしまった缶のココアを飲み干した。
どうも、 今回はアルバム「HiNA」から「想い絶ちがたく、初恋なりがたし」を使わせて頂きました。なんというか・・・切ないんですよね、この曲。今回は切ない感じが出せていたでしょうか?自分的には少し前向きになったかなぁと思っているんですが、これもこれでいいかもと結構自己満足したりもしています。いや!もっといい文にできるはず!ということでアドバイスとかあったらよろしくお願いします。 次回はハヤテ君サイドです。 それでは
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