Re: 兄と娘と恋人と |
- 日時: 2014/07/04 23:55
- 名前: タッキー
- ハヤッス!タッキーです。
メンテの方で書き直しましたが、前回が重複投稿のようになってしまいました。混乱させてしまった方にもう一度お詫び申し上げます。本当にすいません。 今回はハヤテとヒナギクさんが決別してしまう話です。 それでは・・・ 更新!
激しくなってきた雨に傘もささず、ハヤテは自分の両親と相対している。ヒナギクとのデートが終わり、別れ際に突然現れた彼らは自分の知っている頃と同じように笑顔であったが、その内側に考えていることはろくでもないということ以外分からなかった。
「そんな怖い顔をしないでくれよ。久しぶりの再会なんだからさ。」
「別れるきっかけになったのは父さんたちが僕を売り飛ばしたからでしょ。」
「もぉケンカしないの。ところで私たち、ハヤテ君にお願いがあるんだけど。」
ハヤテの父も母も自分の息子を売ったことに対してなんの反省もしていないようだ。しかしそんなことはもう分かっていたし、ハヤテはよりを戻そうなどとも一切考えていない。当然彼らの頼み事など聞いてやるつもりもなかった。
「僕たちまた三百万ぐらい借金しちゃってさ〜。ハヤテ君これ返済してくれない?」
「嫌だよ。僕に一億五千万押し付けたんだから、それぐらい自分たちで返済すればいいじゃないか。」
もちろんハヤテは即答した。もうこんな親に関わることも嫌だった。ハヤテの両親は困ったような顔をしていたが、突然、父親の方が何かを思い出したかのように顔を上げた。どこか嬉しそうなその表状にハヤテは嫌な予感を感じた。
「そういえばハヤテ君。さっきの子と再会出来たようでよかったね。」
「え?」
ハヤテは突然話を変えられたことに戸惑っていたが、その話の意味は理解していた。さっきの子・・・つまりヒナギクのことだ。
「だってあの子、親から借金押し付けられたみたいだし、僕たちも引越しとか多かったからさ。まさかハヤテ君があの子と再会して恋仲になっていたなんて驚きだよ〜。」
「ちょ、ちょっと待って!どうして父さんがヒナギクさんのことを知っているの!?」
「あぁ、そういえばそんな名前だったっけ?」
ハヤテは自分の予感が予想外の方向に当たったことに動揺していた。それに、何故彼らがヒナギクの過去を知っているのかも気になった。
「質問に答えてよ!どうして彼女の事情を知っているの!」
声を荒らげるハヤテと対照に彼の両親はニコニコとしている。その笑顔が気に食わなかった。何故、人の幸せを喰いものにして笑っていられるのかハヤテには分からなかった。そして大切な人に手を出したということが、たとえ可能性であっても許せなかった。
しかし、この時のハヤテはまだ忘れたままだった。
「あ〜、やっぱり覚えてないか〜。ま、いいや。実はね・・・」
自分が不幸であることを・・・ 自分が幸福にはなれないことを・・・ そして・・・
「あのヒナギクちゃんって子の借金を作らせたのは・・・
ハヤテ君、君なんだよ。」
自分がこの両親のもとで育ったということを・・・
第16話 『嘘と嘘と本当と』
〈今から会えませんか?ヒナギクさん〉
「え!?・・・も、もちろんいいわよ!じゃぁ場所は?・・・公園ね。分かったわ、すぐ行く。それじゃ。」
ヒナギクは今、顔を赤らめながらもガッツポーズをとっている。なんだか真剣な声で会いたいと言われたら、告白かもしれないと思うのは当然である。まだ6時半ぐらいだったが急いで服を用意し、部屋を飛び出そうとした。
「ヒナ、ちょっと待ちなさい。」
少し音を立てたせいで起こしてしまったらしい。しかしアテネは起こされて不機嫌というわけではなく、むしろこちらを見て嬉しそうな顔をしていた。
「あ、ごめんね。起こしちゃった?」
「そんなことで呼び止めたりしませんわ。それよりヒナ、あなた忘れ物してますわよ。」
そう言って忘れ物を差し出すとアテネはにっこりと微笑んだ。
「ちゃんと好きって伝えるんですよ。」
彼女の小さな手から受け取ったのは形こそ小さかったが、ヒナギクにはそれが大きく何かが詰まってるかのように重く感じた。
「ありがとう、アリスのことも大好きだからね。」
彼女を優しく抱きしめたあと、ヒナギクは今度こそ部屋を飛び出していった。
「ハヤテが惚れるのも無理ないですわね。それにしてもまだ6時半ですか・・・よし!」
アテネは何かを決心したような顔をすると、布団に潜って静かに寝息を立て始めた。
ハヤテはナギと出会った自販機の前にいる。ここから全てが始まった。出会い、再会、感動、悩み、そして恋・・・
「でも、終わらせるんだ。楽しい日々も、自分の気持ちも・・・全部。」
ヒナギクが走ってくるのが見えた。ハヤテの前で止まったヒナギクは少し息を切らしていた。
「何か飲み物いりますか?」
「えっと・・・じゃ温かいココアで。」
ガタン!と音を立てて落ちてきたココアを取り出し、ヒナギクに差し出した。その時少しだけ指先が触れたことに、ハヤテは自分の体温が上がるのを感じた。
「ありがとう。実は私もハヤテ君に話があるから・・・先に言ってもいい?」
いいですよ、とハヤテが許可するとヒナギクは真剣な表状を作った。ハヤテは彼女の真剣さに逃げたいような、でも逃げたくないような複雑な心境になった。
「まずは・・・お誕生日おめでとう。」
ハヤテはハッとし、そんな彼を見てヒナギクはクスリと笑った。自分のことに無頓着なハヤテが誕生日を忘れているだろうということは容易に想像がついたので、これはある種のサプライズになるかもと考えていた。
「でも今から渡すのは誕生日プレゼントじゃないの。ただ、どうしても受け取ってほしくて・・・」
自分が応援されていることが嬉しくて・・・誰かに助けてもらえるのがとてもありがたくて・・・こんな素敵な恋ができたのが誇らしくて・・・ いつものように気恥かしさがないと言えば嘘になる。しかし、それ以上の勇気がヒナギクの背中を押していた。 差し出されたものを見てハヤテは驚いている。当然だ。こんなものを渡されて驚かないほうがおかしい。彼はしばらく黙っていたが急に表状を真剣なもの変えた。そしてヒナギクの手に自分の手を伸ばし・・・
指輪を受け取った。
ヒナギクはもう飛び上がってしまいそうなほど嬉しかった。自分の想いが伝わって、彼もそれに応えてくれた。そう思い、あらためてこの気持ちを言葉にしようとしたが彼に手で制されてしまった。でも嫌な気分はない。彼から想いを告げられるのは夢だったのだから。 ヒナギクはこれからの未来に胸をふくらませた。二人が結ばれて、たまには喧嘩もするけれど、それでも幸せな日々を過ごしてゆく。そんな毎日を送っていく・・・
はずだった・・・
「ヒナギクさんは本当にヒドイ人ですね。」
「え?」
彼の言葉の意味が分からなかった。自分は指輪を渡し、彼はそれを受け取った。その後にくるのは大体告白のはずだ。冷静になって、これも告白の一部分なのかもしれないと考えたが、彼はその願いのようなものを完全に打ち砕いた。
「僕はこれ以上あなたに会いたくないと伝えようとしたのに、こんな物渡してくるなんて。」
「な・・・んで?」
「なんでって、あれだけ理不尽に殴られたりすれば誰だってそう思いますよ。今まで我慢してましたけどもう限界なんですよ。」
震えているヒナギクに一切表状を変えず、ハヤテはどんどん続きを言っていく。
「それにヒナギクさんは僕のこと嫌いなんじゃないですか?これだって安く買って冗談で渡したんでしょう?ホント、金持ちっていいですよね。好きなものが好きな時に買えて。借金のある僕へのあてつけはさぞ楽しいでしょうね。」
気がつくとヒナギクは叫んでいた。自分の気持ちをバカにされたようで腹が立ったが、それは彼が優しい人間だと知っていたからだ。
「なによ!本当はそうじゃないって分かってるんでしょ!なのに何でそんなに自分を傷つけようとするの!何かあって悩んでるんならちゃんと相談してよ!前にも言ったじゃない・・私はハヤテ君の力になりたいって。」
ヒナギクの言葉にハヤテは顔を歪めて俯いてしまったが、それでも冷たい言葉を止めようとはしなかった。
「さっき言いませんでしたっけ?僕はあなたともう会いたくないんですよ・・・」
「・・・だったら!」
ハヤテの言葉でヒナギクはもう我慢ができなくなって、救おうとする叫びは怒りの叫びになった。
「だったらちゃんと嫌いって言いなさいよ!曖昧なことばかり言ってごまかさないでよ!会いたくないんでしょ!なら私のことが嫌いってはっきり言えばいいじゃない!」
「っ!!!!」
ハヤテは震えていた。まるで何かを堪えるように・・・自分のなかにある何かを殺しているように・・・
「なんで、そんなこと言うですか・・・!そんなこと言うんだったら、もう・・・!」
その後のハヤテの口調は一変し、静かなものだったそれは感情に任せた叫びになった。これまでついてきた嘘が無駄になることは分かっていたが、それでもハヤテは自分の本当の気持ちを抑えることはできなかった。
「もう・・・僕の心に入ってこないでくださいよ!!!!!」
「・・・」
ヒナギクが救いの手を差し伸べてきたのが辛かった。その手を取りたいと思っている自分が許せなかった。そして自分が絶対に口にしないと決めた言葉を無理やり言わせようとする彼女にも腹が立った。それが理不尽ということも、自分が悪いということも分かっていたが、それでも怒りが湧き上がってくるのは止まらず、結局怒鳴ってしまった。
「さようなら・・・」
ヒナギクのことが嫌い・・・これだけはたとえ嘘でも言わないと決めた。もしこれを言ってしまうと自分が自分でなくなりそうで、本当に一人になってしまいそうで怖かった。彼女のことが好きなまま、別れを告げたかった。
「バカ・・・」
ハヤテは今まで見たことないほど怖くて、辛そうで、悲しそうな表状をしていた。 ヒナギクは別れの言葉に手を伸ばすことも、涙を流すこともできず、だんだん小さくなっていくハヤテの背中を見つめることしかできなかった。
どうも、 今回は結局泣かなかったですね。書いている途中でこの部分を二人の決別、その後のヒナギクさんサイド、そしてハヤテサイドに分けようとしていたことを思い出したので。 ハヤテの怒鳴った時のセリフはあるラノベを参考にさせていただきました。ペットな感じのアレです。 それにしてもハヤテがでっち上げたヒナさんを嫌いになる理由が全然思いつきませんでした。完璧超人ってこういうところで裏目に出るんですね。 さて、次回はヒナギクさんサイドの話です。オリキャラが出るのはハヤテサイドの次の回にしようと思っています。 それでは ハヤヤー!!
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