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対象スレッド 件名: Re: 兄と娘と恋人と
名前: タッキー
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Re: 兄と娘と恋人と
日時: 2014/07/02 17:34
名前: タッキー

ハヤッス!タッキーです。
今回の冒頭は、夏休みの田舎で夏祭りが終わったところからで、ナギ視点です。勿論、本文は次回の続きですよ。ちなみにハヤテの私服は原作8巻で三日程屋敷を出て行った時の格好です。コートはまだ着ていませんけど。
あと、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、一応今回はハヤテの誕生日の11月11日です。
それでは・・・
更新!





「この後、みんなで星を見に行きませんか?」

いろいろあった夏の田舎。夏祭りの花火が終わったあと、私の執事のハヤテは今まで腰を下ろしていた芝生から立ち上がると、突然そう言った。

「お、さすがハヤ太君。いいこと言うなぁ〜。」

その言葉に続いて、他のやつらもハヤテの意見に賛成した。ハヤテはにっこりと笑うと私に声をかけてきた。

「昨日はちゃんと見れませんでしたからね。」

「・・・///」

まったく、ハヤテは本当にしょうがないやつだ。



帰るまで空を見ないと決めて、私たちは明かりのない道を歩いていたが、みんなが上を見ないようにして帰っている光景はなかなかシュールなものだった。そのことを言うと全員が笑って、バカみたいにはしゃぎだした。

帰ってから風呂に入って着替えを済ませたあと、ヒマワリ畑の前に集まり、せーの、の合図で空を見上げた。
昨日ハヤテと一緒に見たというのに、私はまた見とれていた。まるで真っ暗な世界に星が降っているようだった。

「綺麗ですね・・・」

「ああ・・・」

ハヤテの存在をすぐ隣に感じて、心が温かくなった。


感動したあとは星の鑑賞会になってしまった。

「ここまで満点の星空だと、どこになんの星があるのか分からなくなっちゃうわね。」

そんなもの分からないとはヒナギクもまだまだだな。せっかくだから教えてやろうと足を動かしたが、その前に別の人がヒナギクの隣に立っていた。

「あれがデネブ、アルタイル、ベガ・・・確かにたくさんあると分かりづらいですけど、天の川みたいにすぐに見えるものを基準にすると見つけやすいですよ。」

夏の第三角形を指差しながら微笑むはハヤテは凄くカッコいい・・・じゃなくて、なんであんなにヒナギクの近くにいるのだ!しかもハムスターまでハヤテに近づこうとしているではないか!

「じゃあハヤテ君。彦星様と織姫様はどこかな?」

これ以上ハヤテに別の女を近づけさせたくないので、ハヤテが答えようとしているのを無理やり遮ってやった。

「やはりハムスターは学がないな。」

「な、なにおう!だったらナギちゃんは分かるのかな!?」

「勿論だとも!さっきハヤテが言っていたアルタイルが彦星でベガが織姫なのだ。だからえ〜っとあれが織姫で、彦星は・・・」

確かに星がたくさんあって一つの星を探すのは大変だった。やっと織姫を見つけて次に彦星を探そうとしたが丁度よく雲がかかって見えなかった。

「あ〜、これでは彦星は見つけられませんね。でもそしたら織姫が・・・」

その続きを言おうとして、指差していた腕を下ろした私とヒナギクの声が重なってしまった。

「「一人ぼっち・・・か。」」





  第15話  『君の知らない物語』





「今・・・なんと言った?」

「執事をやめると言ったんです。」

即答だった。最初は黒椿みたいに何かが起こってるのではと考えたが、ナギの目の前にいる少年は間違いなく綾崎ハヤテだった。

「借金はちゃんとお返しします。秋にあった行事の賞金で大分返済できたので多分10年はかかりません。ですから・・・本当にすいません。」

たしかにハヤテは白皇の五つの伝統行事で優秀な成績を修め、借金は五百万ほどまで減らせていたが、ナギにとってそんなことはどうでもよかった。10年・・・この言葉が彼女にハヤテがもう戻ってくるつもりがないことを理解させた。

「ど、どうして・・・どうしてそんなことを言うのだ!?」

「大切な人を守るためです。」

またしても即答だった。

「この決断があなたを傷つけることもわかってます。もしかしたら・・・いや、きっとその大切な人も傷つけるでしょう。でも、絶対に守らなくちゃいけないんです。あの人の・・・彼女の居場所を・・・。」

大切な人・・・彼女・・・ナギはもう何が何だか分からなかった。

(その大切な人は私じゃないのかよ。大切だ、て・・・君を守る、て言ったのはお前じゃないか。私以上に大切な女って誰だよ・・・)

「誰なんだよ・・・その大切な人って・・・」

「・・・ヒナギクさんです。」

少し間を空けて、ハヤテは答えた。

(嘘だ!ありえない!ハヤテは私だけを愛しているはずだ!)

ナギは自分にそう言い聞かせた。必死だった。ほとんど叫ぶような感じで、ナギはハヤテに自分の心の内を晒した。

「お、お前は過去でも未来でも私を守ると約束してくれたではないか!去年のクリスマスイブに君が欲しいと言って告白してくれたではないか!なのになんでヒナギクなんだ。お前は私のことを愛してくれているのではないのか!?」

ナギの言葉にハヤテの表状が驚きに変わった。さすがにここまで言われれば嫌でも分かってしまう。彼女が自分を執事としてだけではなく、一人の異性として見ていたことに。
さらにナギは自分が彼女を恋人として見ているとも言ったが、それにはどこかで誤解を招くようなことを言った自分がいるということだ。ハヤテがそのどこかを見つけるのに大して時間はかからなかった。そう、ナギの言った去年のクリスマスイブだ。

「・・・すいません。あの時は、あなたを誘拐しようとしていたんです・・・」

怒りや怯えが入り混じったようなナギの表状が完全に絶望の一色に染まってしまった。
ハヤテも予想外だったのだ。自分たちは絆こそ強いが、ただの主と執事の関係だと思っていて、ナギを傷つけるのもその部分だけのはずだった。しかし実際はその何倍も傷つけてしまったため、ハヤテは戸惑いそしてどうすることもできない自分に腹がたった。

「ごめんなさい・・・お世話になりました。」

そう言うとハヤテは逃げるようにして扉に向かって行った。これ以上ここにいたら、また大切な人を傷つけてしまう・・・そう考えたから。

「は、ハヤテ!」

ハヤテが背を向けたことで我に返ったナギは、彼の方に手を伸ばしたがその先にある重い扉はすでに閉まっていて、もう開くことはなかった。

「ナギ・・・」

マリアは彼女の名前を呼んだが、それが聞こえてないかのようにナギは黙って足元に置かれていた執事服を拾い上げ、ぎゅっと抱きしめた。服を包んでいる袋に落ちてくる滴は次第に増えていき、まるで彼女の震える腕の中で執事服が泣いているようだった。

「忘れ物が・・・たくさんあるではないか・・・」

ナギはポケットの中から四角い箱を取り出した。
今日のためにバイトして貯めたお金で買った腕時計。彼がいつも身につけていたいと言ったから、一生懸命働いて一生懸命選んだ腕時計。自分たちが使っているものほど高級な物ではないけれど、それでもこれに一番の価値を見い出して想いをたくさん込めたプレゼント。

それを・・・受け取ってもらえなかった。

「分かっていたさ・・・」

本当は彼が自分を恋人として見ていないことや、最近になって別の人に好意が向いていることもずっと分かっていた。でも強がりで臆病な自分は、それに気づいていないフリをした。
そうしないと彼の笑顔が信じられなくなってしまいそうで・・・・
彼との美しくて大切な毎日が嘘になってしまいそうで・・・
今みたいなことが起こってしまいそうで・・・

「ダメなのだ・・・泣いちゃダメなのだ・・・」

遠い記憶にある彼と見た星空はとても綺麗で、それと同じくらい彼の笑顔も綺麗だった。そんな彼の笑った顔も、困った顔も、怒った顔も全部大好きだったから、涙は溢れ出てくるのをやめてくれなかった。


ドウシタイ?


心の声が言ってごらんと彼女に囁いていた。

「ハヤテと・・・ずっと一緒がいい・・・、ハヤテの隣に・・・いたいよぉ・・・

う・・・!うう・・・!!うわああああああああ!!!」

ついに大声で泣き出してしまったナギをマリアは優しく抱きしめたが、彼女にかける言葉が見つからなかった。











最初はただカッコよくて優しいところに惹かれただけだった。でも彼と毎日を過ごす度に、彼の優しさに触れる度にそれ以上に惹かれていった。たくさんの楽しいをくれて、たくさんの感動をくれた。
そして人を好きなるのが・・・
恋をすることがどんなものか教えてくれた。



ナギは今、泣き疲れて部屋で寝ている。その手は、腕の中にある大切な人がいたという証拠を離すまいとしているようだった。














「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

ハヤテは何度も同じ言葉を繰り返している。彼の中ではたくさんの罪悪感があったが、それがないとハヤテは何かに押しつぶされてしまいそうだった。
しかしその何かの正体をハヤテは知っていた。それは孤独や不安、恐怖・・・そしてまだ彼女のことを傷つけたくないという想い。謝罪の言葉はそれらを包み込み、隠してくれているようで一種の心地よささえ感じた。
もう決めている。覚悟している。ハヤテは携帯電話である人の名前を設定し、通話のアイコンにそっと触れた。

〈もしもし?〉

多少機械音が混じっていてもとても愛おしく感じる。だからこそ・・・

「もしもし、急で悪いんですけど今から会えませんか?













 ヒナギクさん・・・」
















どうも、
今回のサブタイは結構知ってる人も多いんじゃないでしょうか。supercellの『君の知らない物語』からです。これには雰囲気というより歌詞の方に重点を置いてみました。まぁ今までも大体そうなんですが、今回は特に。

それより、ちょっとこの作品は女の子を泣かせすぎなのではと最近真剣に悩んでいます。でもストーリー上泣かさないといけないのでその点についてはご了承下さい。すいません。
次回の冒頭はハヤテと両親が再会したときのことから。そして本文ではまた泣かせまます。主にハヤテを・・・やっぱり泣いてばっかですね。この作品。

あと忘れられている方もいらっしゃると思いますが、オリキャラの方はあとちょっとで出します。ホントにあとちょっとです。
                     
それでは  ハヤヤー!!