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対象スレッド 件名: Re: 兄と娘と恋人と
名前: タッキー
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Re: 兄と娘と恋人と
日時: 2014/07/01 00:04
名前: タッキー

ハヤッス!タッキーです。
前回はハヤテの両親が出てきましたが今回は出ないです。というかあと一回ぐらいしか出番がないです。まぁ、一回も登場していないキャラもいるので何とも言えないんですが・・・
今回からシリアスな雰囲気が続くかと思います。自分、一回落としてから上げたがるんでその点については温かい目でお願いします。
それでは・・・
更新!





(今日はずっとハヤテ君の元気がない・・・ような気がする。)

ヒナギクの考えが曖昧なのは自分でも確信を持てないからである。ハヤテはいつも通り、しまりのない笑顔で皆と接しているし、仕事だってきちんとこなしていた。それでもヒナギクは、今朝学校でハヤテと会ったときからどこか違和感を感じていた。

(あの人たちと何かあったのかしら?)

ヒナギク昨日別れ際に、ハヤテに想いを伝えようとした時に急に割り込んできた1組の男女のことを思い出した。彼女はそのことをハヤテに聞こうとしたが、彼を全く捕まえられず、やっと話すことができたと思ったら、すぐに話を切られてどこかに逃げられてしまった。

(なんだろう?避けられてる?)

近くにナギを見つけ、主なら何か知っているだろうと彼女に駆け寄った。

「ねぇナギ?今日のハヤテ君、何だか元気がないような気がするんだけど・・・昨日何かあったの?」

「何を言っているのだ?ハヤテはいたっていつも通りじゃないか。それに昨日のことならお前の方が詳しいんじゃないか?」

「そ、そう。」

「そう。主の私が言うんだから間違いないのだ。
それより・・・」

ナギは少し離れた場所にいるヒナギクの姉、雪路を見ていた。彼女は頬をほんのり赤く染めていたが、その理由は羞恥心とかではなく、完全に別の物だった。

「料理も美味いし、酒も美味い!もぉーサイッコーの誕生日だわー!」

「なんで桂先生の誕生日パーティーをうちでやらなきゃならんのだ・・・」

ナギがため息をついていたところに、これを企画した張本人がやってきた。

「まぁまぁ、こんなに広い場所があるんだから使わないともったいないじゃないか。それに雪さんには何回か世話になってるんだろ?」

「本当に何回かだけだがな・・・」

そう、今は岳が主催した桂雪路の誕生日パーティーが、三千院家で開かれていた。





 第14話 『can't see eyes for you』





「もぉ、お姉ちゃんったらさすがに飲みすぎよ。主役なんだからもっとしっかりしてよ。」

「ヒナってば釣れないわね〜。主役だからこそ、たくさん食べて、たくさん飲んでるんじゃない。」

ヒナギクの呼びかけも虚しく、雪路は口の中に料理をどんどん放り込んでいく。挨拶とかも当然そっちのけだった。

「まぁ、いいんじゃねぇの?こっちの方が雪さんっぽいし。」

「ガウ君もすぐ甘やかすんだから・・・料理とか作るの大変だったんでしょ?」

このパーティーに出されている料理や飲み物は全て岳が作ったものだった。最初はマリアも手伝うと言っていたが、会場を使わせてもらうからと岳は頑として譲らなかった。

「それにしてもめちゃくちゃ美味いな。」

「バイキングなのに全然冷めないし、どうなっているのかしら?」

遠くで聞こえる千桜とカユラの絶讃の声に顔をほころばせながら、岳は本題に入ることにした。

「それより、ハイ。雪さん、誕生日おめでとうございます。」

「うわー!ありがと〜岳君!」

岳が雪路に渡したのは緑の紙で包装された、細長い直方体の箱だった。大きさは丁度ワインの瓶が一つ入るくらいである。

「岳君、これってもしかして?」

「はい。俺の作った自家製のワインですよ。」

「ひゃっほーーい!!!もぉ、ホントありがとー!それでは早速・・・」

包装紙は簡単に開けることができるように包まれており、雪路でも雑に破り捨てるようなことはなくきちんと長方形の形に戻った。そして箱を開けたのだが、その動作で雪路の動きは止まってしまった。

「あの〜岳君?こんな大きな箱なのになんで入っている容器は500mlのペットボトルなの?」

「いやぁ〜、飲みすぎはいけませんし、最初の雰囲気が大事かなぁ〜、と思って。」

「いやいや!最初の雰囲気作ったんなら最後まで持っていきなさいよ!ていうかもっとワイン作りましょうよ。」

必死でワインをねだる雪路を岳はまぁまぁ、となだめている。

「はぁ〜はぁ〜、もういいわよ。岳君の作ったワイン美味しいからこれだけで我慢してあげる。」

息を切らすまで粘っていたが、結局岳に口で勝つことができなかった。しかしその後、皆がプレゼントをどんどん持って来て、彼女が笑顔を絶やすことはなかった。

「雪路!私からのプレゼントはこの、抱いているだけで金持ちになれる壺だ!」

「だ、抱いているだけで金持ちになれる壺!?」

美希からのプレゼントはただの壺でしかなかったが、雪路にはとても輝いて見えたみたいだ。

「そう!これは夜に抱いて寝るだけですぐに出世したり、道端で万札の入った財布を拾ったり、とにかくどんどんお金が集まってくる不思議な壺なのだ。しかしとても貴重な物なのでプレゼントとはいえただでは譲ることはできない。よってヒナが作ったというチョコケーキの4分の1を私にくれることで交渉成立としようではないか!」

なんだかとても頭の悪い詐欺の会話だったが、案の定雪路はそれに引っかかった。

「よし!それぐらいなら「ダメよ!お姉ちゃん!」

誕生日といえど、相変わらずな姉の姿にヒナギクは苦労するばかりであった。しばらくして、姉妹の言い合い、といっても妹が姉に説教しているでけだったのだが、それを止める声がした。

「ゆ、雪路!」

「え?薫先生?」

京之介はスーツを着ていて、パーティーというには正しいはずなのだが、雰囲気的にはなんだか違和感がある。そして少し動きがぎこちない。

「な、何よ?」

「こ、これ誕生日プレゼント・・・」

そういって雪路に手渡されたのは、彼女がずっと欲しいと思っていたギターだった。何故彼がそのことを知っていたのか、そして何故自分にこれをくれるのか分からなかったが、それよりも驚きと込み上げてくる嬉しさの方がずっと大きかった。

「わ〜!ありがと〜!てか何で私のギターの好みなんか知ってるの?」

「そ、それは前、お前がずっとそのギター見てたの思い出して、俺もお前のギターもう一回聞いてみたかったら、これでいいかなと思って・・・」

理由を説明する京之介の言葉にはあまり勢いがない。目線もずっと泳ぎっぱなしだ。

「でもこれ結構高かったんじゃない?なんでそこまでしてくれんのよ?」

「そ、それは・・・」

京之介の後ろでは泉たち生徒会三人娘がいけー!だのがんばれー!だの余計な野次を飛ばしていたが、すぐに岳がそれをやめさせ、会場は人の息遣いが聞こえるだけになった。全員の目が俯いている京之介に集中する。

「そ、それはお前のことが・・・」

「・・・」

雪路にも彼の緊張と真剣さが伝わってきたのか、黙って彼の次の言葉を待った。

「す・・す・・・




















 って!こんな大勢の前で言えるかーーーーーー!!!!!」

彼の叫び声が響き渡って、会場は先程よりも静かになり、重い空気に包まれた。雪路は頭に?を浮かべていたが、それ以外の全員はうわ〜、という表状で京之介に冷たい視線を浴びせていた。それからの千桜のトドメの一言は彼にものすごいダメージを与えた。

「薫先生って、やっぱりヘタレですね。」

「うっせぇバーーーカ!!」

彼は少し涙目になりながら、凄まじいスピードで会場から出っていった。

「少し言い過ぎなのではないか?」

「し、仕方ないだろ!思わず口から出ちゃったんだから!」

千桜は一応反省しているようだ。



なんだかんだで若干一名を除き、雪路の誕生日パーティーは無事終わった。
今日ぐらいはヒナギクも実家に帰るらしく、今は雪路と帰宅している。

「そういえばヒナはプレゼントくれなかったわね。」

「家に帰ってからよ。」

それを聞いた雪路はケーキ!ケーキ!と子供みたいにはしゃいでいる。プレゼントがケーキだということは美希がばらしてしまったので、ヒナギクは無理に隠すようなことはしなかった。だが、しばらくすると雪路はおとなしくなり、さっきと似たような質問をした。

「それで、誕生日プレゼントは?」

「は?だからケーキだって。さっきも自分で連呼してたじゃない。」

「そうじゃなくて・・・」

ヒナギクは雪路が何を聞こうとしているのか分からず首をかしげている。

「だから綾崎君のことよ。で、チューはもうしたの?」

「ちょ!///な、なに言ってるのよ!まだ告白もしてないのにそんなことするわけないじゃない!」

「え!?まだ告白すらしてないの!?」

雪路はもうハヤテとヒナギクが付き合ってると思っていたので、冗談抜きで驚いている。ヒナギクにはその反応が自分をバカにしてるみたいで、あまり面白くなかった。

「なによ。いろいろあったんだからしょうがないないじゃない。それにいい年して結婚もしようとしていないお姉ちゃんには言われたくありません!」

ヒナギクはこの後いつも通り雪路が突っかかってくると思ったが、予想に反して彼女は立ち止まって黙り込み、なんだか考えこむようなポーズをとっている。そのらしくない姿にヒナギクは思わずえ?と声を漏らしてしまった。さらに・・・

「結婚か・・・。あいつのことも嫌いじゃないし、いいかもね。」

ヒナギクはもう驚きで声すら出せず、頭の中は完全にトリップ状態だった。

「ま、そのうちね・・・」

そう呟いた雪路は何かをごまかすかのように大きく息を吸い込んだ。

「よーし!それじゃぁ早く帰ってケーキでもたぁ〜べよっ♪」

「ちょ!ちょっとお姉ちゃん!?さっきのどういうことよー!」

雪路の大声で我に帰ったヒナギクは雪路を問い詰めようとするが、雪路は既に随分と離れたところまで行ってしまっていた。
こうして姉妹で追いかけっこが始まったわけだが、妹に追いかけられている雪路の顔は少しだけ赤くなっていた。


しかし・・・今回はお酒が原因ではないようだ。









少し時をさかのぼってパーティーが終わった直後の三千院家。

「やっと行ってくれましたか・・・」

ハヤテは雪路と一緒に帰っていくヒナギクの後ろ姿をずっと見つめていた。いや、学校に登校した時から彼女のことを見ていたのだ。

(なんだかストーカーみたいだな・・・)

ハヤテはそう思っていたが、同時に仕方ないとも思っていた。
気がつけば彼女のことを目で追っていて、彼女が笑うと隣で一緒に笑いたくなったし、困った顔をするとすぐに駆けつけて、力になってあげたいと本気で思っていたのだから。
しかしそうすることはできない、やってはいけないと自分で決めていた。あえて自嘲的な言葉を自分に向けたのはそれを無理やり頭に叩き込むためだ。そうしないと何かが壊れてしまいそうで、溢れ出してしまいそうだった。
自分を探している彼女を見つけるたびに、この悩みを打ち明けようと何度も考えた。もしかしたら二人でなんとか出来るかもと考えもした。でも、それで得られるのは‘二人’だけだということは分かっていた。

(それだけは絶対にダメだ。たとえお互いに一番の幸せが手に入ったとしても、彼女の・・・ヒナギクさんの今いる場所を、絶対に壊してはいけないんだ・・・)

素手に自室に戻っていたハヤテは二枚の借用書を握り潰した。その内一枚には自分の、もう一枚には知らない・・・いや、もう覚えていない名字の印が押されていた。


-あなたにとって一番大切で守りたい人は誰?-


もう何回思い出したか分からない言葉をハヤテはまた思い出していた。

「ヒナギクさん・・・ですよ・・・」

もう睡魔に身を預けてしまっている彼は決めていた。
たとえ誰かが傷ついても、大切な人を絶対に守ると。














そう、たとえ傷つける人がどんなに弱く、儚く、大切な人だったとしても・・・




翌朝、マリアは少し早めに起きて廊下の掃除をしていた。ちなみにハヤテはまだ起きてないようだったが、昨日のパーティーで疲れているんだろうと思い、寝坊したとしても咎める気はなかった。
朝の6時頃になり、さすがにもうすぐ起きてくるだろうと考えていたら、ちょうどハヤテの部屋のドアが開いたのでマリアはすかさず挨拶した。

「おはようございます、ハヤテ君。今日はなんだか遅かったですね。」

「おはようございます、マリアさん。早めに起きてはいたんですけど、いろいろと準備をしていたもので。」

「そうなんですか。ところでハヤテ君・・・」

マリアはハヤテが部屋から出てきてから、ある疑問を持っていた。その原因はハヤテが自分と一緒にキャリーケースを部屋から出してきて、今も後ろに置いていること。そして・・・

「何故・・・執事服を着ていないんですか?」

「準備を・・・していたんですよ・・・」

ジーパンに黒い長袖のTシャツ姿のハヤテはまた同じような返答をした。彼はマリアの言った通り執事服を着ていなかったが、持っていなかったわけではない。マリアはハヤテが右手に抱えている綺麗に折りたたまれて四角い袋に入れられた執事服を見て嫌な予感を感じた。

「ところでお嬢様は・・・て、まだ寝ていますよね。」

「私がどうかしたか?てかハヤテはなんで私服なんだ?」

ハヤテは予想に反してもう起きていたナギに驚いた。その後、いつもなら嬉しそうに挨拶をするハヤテだったが、今日だけはあまり嬉しくはなさそうだった。

「おはようございます。お嬢様・・・いえ三千院さん。」

ハヤテがナギへの呼び方を変えたのを聞いて、マリアは嫌な予感が的中したと確信した。ナギもハヤテのいつもと違う雰囲気に戸惑っている。

「な、なんなのだ?そんな他人行儀な呼び方をして。まるで・・・」

私の執事ではないみたい、その言葉をナギが言う前にハヤテが口を開いた。

「急な話で本当に申し訳ありませんが、僕は・・・」

ナギはその後の言葉を聞きたくなかった。耳を塞ぎたかった。
しかしナギにはハヤテの覚悟が痛い程伝わってきたから、ただ怯えたように彼の言葉の続きを待つことしかできなかった。



彼が自分を傷つけるという覚悟を決めているのが分かったから・・・



「ハヤテ・・・」

まるで最後の抵抗であるかのように震える唇で呼んだ名前は小さすぎて、彼の心の奥まで届くことはなかった。
もう主も執事も、お互いの目を見ていない。


・・・いや、見ることができなかった。





「僕は昨日をもって、執事を・・・















 
 やめさせていただきます。」



















どうも、タッキーです。
だんだんシリアスな展開になってきました。雪路の誕生日パーティーは、いわゆる嵐の前の静けさみたいな物です。

今回は別に歌詞ネタとかではなく、サブタイも普通に自分で考えました。べ、別に題名考えるのがメンドくさいから曲の名前にしてるわけではないですよ!ただ曲のメロディーや歌詞で雰囲気を出したいからやっているだけで、そういう不純な理由はないです!はい!
ち、ちなみに今回の題名は「あなたの瞳を見ることができない」という意味で、薫先生やヒナギクさんには気恥かしさからそう出来ない、ハヤテとナギには・・・本文にあった通りからです。実をいうと「can't take my eyes off you」の「君の瞳に恋してる」から考えついたんですよね。どちらかというと直訳の「あなたから目が離せない」の方からですけど。

あと薫先生の名前の表し方は凄く悩みました。この作品は基本三人称でやっていてキャラ名は全部下の名前を使うようにしているけど、京之介ってなんだか違和感が出てきたんですよね。結局、京之介で使いましたけど・・・
雪路はなんだかいつの間にかくっついていることが多いのでしっかりやっていこうかなぁ、と思って。多分ハヤテたちよりかは雑になると思いますが、ご了承ください。これはハヤヒナですから。でももしかしたら相手が決まっている分、他の女性キャラたちよりかは丁寧かな。場合によっては最終的なCPがないキャラがたくさん出るかもしれないので・・・

次回は勿論、今回の続きでナギとハヤテの話。そして結構有名(?)な曲を使うつもりです。アニソンですけど。

それでは  ハヤヤー!!