Re: 兄と娘と恋人と |
- 日時: 2014/06/27 00:14
- 名前: タッキー
- ハヤッス!タッキーです。
参照が1000を越えました。読んでくれた方、ありがとうございます。 そういえば6月はハヤテキャラの誕生日が多い(?)ですね。サキさんとか泉さんとか虎徹君とか東宮君とか・・・とにかくおめでとうございます。 今回はあの人たちが出てきます。といっても最後の方なんですけどね。 それでは・・・ 更新!
岳はファミレスから出たあと、店の前に何やら怪しい人物を見つけた。どうやら店内にいるハヤテとヒナギクの様子を伺っているらしい。二人が店を出たあとも彼らを尾行しようとしていたため、岳はその怪しい人物を止めておくことにした。
「国民的アイドルがデートの尾行なんかしてていいのか?」
ビクッと肩を震わせたあと、ハヤテたちを尾行していた張本人、水蓮寺ルカは声がした方を振り向いた。
「だ、誰?てか何でわかったの?」
正直彼女は自分の正体がバレるとは思っていなかった。彼女は今、かなりの強盗犯ルックで、厚手のコートでフードを深く被り、メガネにマスクまでしている。ここまでしてバレるということは相当なストーカー?そう思い、ルカは身構えたが、彼の話を聞くとその必要はないと判断した。
「初神 岳。ハヤテたちから多少話は聞いているだろ?それにハヤテとヒナのデートを尾行しそうでそこまで変装しなきゃならない人物って大体想像はつくよ。」
ルカはまだ何だか納得していないようだったが、岳はあまり気にせず話を続けた。
「ハヤテのこと・・・やっぱりまだ諦めきれないか?」
「!!!」
「でもハヤテはもうヒナのことを好きになっている。だからどうしたらいいのか分からない・・・だろ?」
ルカは岳の全てを知っていると言わんばかりの口調に怒りを覚えた。気がつくと周りに人がいるのも忘れて、ルカは声を荒らげていた。
「あなたには分からないでしょ!好きなのに、大好きなのに!なのにどうして諦めなきゃならないのよ!そりゃ私はアイドルだし、一回は彼のことを諦めて二人を応援しようって決めた。でも考えなんて変わるわよ。 だって・・だって・・・ハヤテ君のこと・・・やっぱり好きなんだもん・・・」
ルカは涙を流し、その声には勢いが無くなっていた。
「アイドルをやるのは好きか?」
すると岳は突然話題を変えた。ルカには岳がなにをしたいのかもう分からなかった。
「好きよ・・・。ヒナのことだって好き。だから二人の幸せを心から願っているのも本当。でもやっぱりハヤテ君のことを諦めるなんてできない。一回振られちゃったけどまだチャンスがあるって信じていたい・・・そう思っているのも本当。どっちとも真実なのよ。 だからこんなに苦しいし、辛いの・・・。 だからどうしたらいいのかすらも・・・分からないのよ・・・」
岳はルカの胸の内を聞いて満足したような笑みを浮かべた。
「じゃ、そのままでいればいい。」
「え?」
「誰かをどうしても譲れない気持ちと、誰かの幸せを思って身を引く気持ちは同じくらい強い。だからそれがごちゃごちゃになってしまうのは当然だ。だからといって悩むなとは言わない。 ただ今はその気持ちを持てたことを誇りにして・・・そして大切にしろ。そうしたらきっと前に進める。そのうち自分がどうしたいのか分かるようになる。 だから・・・今はそのままでいいんじゃないか。」
本当に喰えない人だ。ルカはそう思った。最初、彼は自分にハヤテのことを諦めさせようとしていると思っていたが、それとは全く逆に、背中を押された。岳はルカの迷いを取り払ったのだ。
(たしかに、今こんなに悩む必要なんてないのかな・・・)
ルカは自分がどうしたいか、少しだけ分かった気がした。
「ありがとう。まだ完全に割り切った訳じゃないけど、今は二人の幸せを願うことにする。それでも諦めたって訳でもないけど。」
「役に立てたようで良かったよ。また辛くなったら誰かに相談しろよ。」
ルカが頷いたとき、ポツ、ポツと雨が降り出した。ルカは岳にもう一度礼を言うと、傘がないことに慌てながら急いで帰って行った。
「ハッピーエンドになるといいな。」
雨の中でも迷いのない後ろ姿に、岳は一言だけ呟いた。
第13話 『RAIN』
ハヤテとヒナギクはレインボーブリッジという今はもう閉まっているおもちゃ屋の軒下で雨宿りをしていた。
「天気予報で今日は雨は降らないって言ってたのに・・・」
「まぁ予報なんですから仕方ありませんよ。それよりこれからどうします?時間はまだありますけど先に‘どんぐり’に行って桂先生のケーキでも作ります?」
「それでもいいけど、ハヤテ君大丈夫?そんなに荷物持ってるんだから、もう少し雨が止んでからでもいいんじゃない?」
雨はそこまで激しいわけでもなく、喫茶どんぐりに行くにしても少し濡れるくらいで済むだろう。しかしハヤテは今、大量の荷物を持っている。ヒナギクも両手に荷物がぶら下がっており、彼の荷物を持つ余裕などなかった。 しかしハヤテはそれでも笑顔でいられた。ヒナギクに心配を掛けまいとしているのもあったが、彼女が心配してくれていることが何より嬉しかったからだ。
(どうしてかな?雨ってあまり好きな方ではないけど、ヒナギクさんと一緒なら大好きになれる気がする。)
雨宿りをしているだけ。そんな些細なことでも、ハヤテは自分が恋をしているのだと感じることができた。
「大丈夫ですよ。僕、力持ちですから。」
「そ、そう///それじゃ行きましょうか。」
実はヒナギクもハヤテと同じようなことを考えていたので、彼の笑顔にすぐに顔を赤くさせた。今の彼女にはハヤテを意識するなと言うのは無理な話だろう。
喫茶どんぐりに着いたハヤテたちはマスターの許可をもらい、早速ケーキを作り始めた。今回はヤンキーたちが店に怒鳴り込んでくることはなかったので順調に作ることができた。
(それにしてもハヤテ君のエプロン姿、本当に可愛いわね。)
ヒナギクはエプロンをして三角巾を頭に巻いているハヤテに不覚にもときめいてしまっていた。正直ハヤテは並の女の子以上に可愛い。それがエプロンをして楽しそうに料理をしているのだ。どこかの変態だったらお持ち帰りー!と叫びそうな光景だった。
「そういえばヒナギクさん。」
「ん?」
「ヒナギクさんのエプロン姿、とっても可愛いですよ。それに言いそびれてましたけど私服も似合っててとっても素敵でした。」
「なっ!!!///」
ハヤテの言葉はまるでヒナギクの気持ちをそのまま逆にしたようなものだった。こういうところが天然ジゴロである所以なのかもしれない。ヒナギクは当然顔を赤くさせていたが、言われてばかりでは何だか負けた気がするのでヒナギクも自分の思っていたことを口に出す。
「は、ハヤテ君の方が可愛いんじゃない?だってエプロンしてお料理している姿なんかまるで女の子だもん。きっといいお嫁さんになれるわよ。」
「え〜、そんなことないですよ。僕は男なんですし、ヒナギクさんの方が絶対可愛いですって。 でももし結婚するならヒナギクさんみたいな人がい・・い・・・」
ハヤテの言葉は急に勢いがなくなり、そこで途切れてしまった。またしても自分がとんでもないことを言っていると気づいたからだ。
「い、いや!あのですね!そりゃヒナギクさんみたいな人と結婚できたら幸せだなぁとは思ったりしますけれども、もしもですよ!これはもしもの話なんですよ!」
必死に言い訳しようとしているが、言っている内容はほとんど好きですと自白しているようなものだった。ヒナギクはハヤテがまたとんでも発言をする度に、ふぇ?だのそ、そんな、だのいちいち可愛らしい反応をしている。
「二人ともケーキ・・・て、何だかお邪魔だったみたいね。」
「うわぁあああ!マスター!違うんです!これはそういうことではなくて!」
「はい、はい。ちゃんと分かってるわよ。二人ともお年頃なんだからもっと積極的にいかなきゃダメよ。」
「だから違うんですってばーーー!!!」
桃色空間に突然入ってきた北斗にハヤテは必死に弁明しようとするが、逆にからかわれてしまっている。ヒナギクはもう気絶寸前で、口をパクパクさせて赤くなることしかできなかった。
「それで、ケーキは完成したの?」
「は、はい・・・おかげさまで。」
ハヤテたちを散々いじった後、北斗は出来上がったケーキを見せてもらった。それはチョコレートをベースにした大きなホールケーキで、シンプルなデザインだったがその完成度からどれだけ気持ちが込められているかが伝わってきた。
「それじゃ、あとは私が冷やしておくから二人は帰っていいわよ。丁度雨も止んでるみたいだし。」
「え、でも・・・」
「いいから、いいから。私も誕生日を祝いたかったし、これくらい・・・ね。 荷物とかも明日取りに来ていいから。」
結局ハヤテたちは北斗の言葉に甘え、帰ることにした。まだ5時くらいで帰るにはちょっと早かったのでいろいろと寄り道をしながら歩いていたが、再び雨が降ってきたのでそうも言ってられなくなった。丁度住宅街を通っていたので雨宿りすることもできなかった。
突然降り出した雨から逃げながら、二人の手は自然につながれていた。ヒナギクはハヤテの手が雨のせいで少し冷たくなっていることに気づいた。それでも優しく自分の手を引いてくれるこの瞬間は、とても愛しい時間だと思えた。
「大丈夫ですか?ヒナギクさん。」
彼の優しい言葉は嘘じゃないと分かってる。しかし彼が優しくしてくれるのは、自分が特別だからじゃないということも分かってる。
(でもこの恋だけは壊したくない、ハヤテ君とずっと一緒にいたい。)
少し強くなってきた雨の中、ヒナギクはそう思った。しかしそのためには必ず通らないといけない道があり、伝えなくてはいけない想いがあった。だから・・・
「ねぇハヤテ君。ここの商店街にシンボルがあるって知ってる?」
「そうなんですか?初めて知りましたけど。」
「じゃぁ、もう最後だし、そこに行かない?ここから結構近いし・・・」
ヒナギクはある決断をしていた。
「え?これって・・・」
「そう、これがこの商店街のシンボル、銀杏大観覧車よ。」
「でも、ヒナギクさん高所恐怖症じゃ・・・。それに見ただけでも100メートル以上ありますよ。」
「い、いいのよ。前に歩と乗ったし、全然平気なんだから」
ヒナギクはそう言っていたが顔が引きつっている。ハヤテは何故彼女がこんなことを言うのかさっぱり分からなかったが、引き下がってくれそうにもないので無理にやめさせることはしなかった。
「し、しっかり手を握っててよね!」
強がっていてもやっぱり怖いらしい。乗り込む前に泣きそうになっているヒナギクをハヤテはなんだか可愛いと思いながら、前にも同じようなことがあったのを思い出していた。
(そういえば、あの日からヒナギクさんを意識するようになった気がする。)
あの時見た景色は本当に素晴らしかった。ヒナギクが無理をしてまで見せてくれた景色。 今回は雨が降っているが、たとえそれでも綺麗な景色になる気がした。
観覧車に乗り込むと案の定ヒナギクはギュッと目を瞑っていて、ゴンドラが揺れるたびに体を震わせていた。ハヤテには、その弱々しい彼女の姿が愛しくてたまらなかった。可愛らしい仕草に心がキュンとした。そして、自分のこの溢れ出しそうな気持ちを彼女だけに分かってほしいと感じたから、彼もまたある決断をした。
しかし何も話さないまま、観覧車は一番高い場所まで来てしまった。高いところが怖い。それもたしかにあったが、彼に告白して拒絶されることの壊さがヒナギクを無口にさせていた。
(私は何をしているんだろう?この気持ちを伝えるため、ハヤテ君に好きだって言うためにここまで来たというのに、結局ハヤテ君に助けられてばかり・・・なんだかカッコ悪な・・・)
それでも伝えたかった。知って欲しかった。自分の大切な人を・・・自分の大好きな人を・・・ だから勇気を出して顔を上げ、必死の想いで言葉を紡いだ。
「け、景色・・・綺麗ね。」
「そ、そうですね。雨っていうのも意外と悪くありませんね。」
(ちがぁあああああああう!!!!)
確かに顔を上げた先に見た景色は綺麗だったが、今言いたいことはそれではなかった。 ハヤテも一応告白すると決めたものの、その場の雰囲気に流されているだけだった。しかしやはりこのままではいけないと分かっていた。
「ヒナギクさん!」
「はい!」
「こ、今度また遊園地にでも行きませんか?」
「え?」
(ちがぁあああああああう!!!!)
「も、もちろんいいわよ!じゃぁ今度の日曜日にでも行きましょ。」
会話はなんだか恋人っぽいが二人はその前の段階を踏んでいない、というより二人とも告白の仕方なんて全く分からなかったのだ。その後の会話も緊張のせいですぐにとぎれてしまう。
どこまでも奥手で似た者同士の二人を乗せた観覧車は、あっという間に一周してしまった。
((はぁ・・・))
雨が小降りになっている帰り道で、ハヤテとヒナギクは同時に、心の中でため息をついた。自分たちの思い切りのなさに後悔し、あまりいい雰囲気とはいえないまま二人は別れる場所まで来てしまった。
(好きなのになぁ・・・)
「それじゃヒナギクさん、また明日。」
「うん、また明日ね。ハヤテ君。」
ヒナギクはそう言って彼に背を向けた時、ポケットの中から硬い感触を感じた。雪路からもらった指輪だ。
「また明日・・・か。」
それを手に取り、先程と同じことを呟いた瞬間、ハヤテにもう会いたくなってしまった。思わず振り返れば、ハヤテはまだそこに立っていて自分のことを見つめていた。なんだか熱い気持ちがこみ上げてくるのが分かった。
(そうよ、こんなんじゃ絶対ダメ。今ちゃんと伝えないとまた後悔する。一つのチャンスを失ってしまう。今までだっていろんなことを乗り越えてきんだから絶対できる!桂ヒナギクは綾崎ハヤテが好きだって・・・言える!)
強く握り締めた指輪の感触が彼女に勇気をくれている気がした。
「は、ハヤテ君!」
「は、はい!」
ヒナギクは顔を赤らめている。ハヤテもこのシュチュエーションがどんなものか分かったらしく、とても緊張しているようだった。
「私は!私は・・・ずっと前から・・・」
「ヒナギクさん・・・」
ヒナギクは大きく息を吸い込んだ。
「・・・ハヤテ君のことが「おや〜、久しぶりだね〜ハヤテ君」
しかし彼女の声は第三者によって遮られてしまった。
(どうしていつもこうなんだろう?)
ヒナギクは泣きそうだった。いつも大事な場面で何かが起こり、せっかくの決意をうやむやにしてしまう。考えれば考える程、自分の決意を踏みにじった何者かに怒りが湧いた。何か言ってやらねば気が済まなくなったが、顔を上げた瞬間その決意さえも壊されてしまった。 ハヤテの驚いた顔、いや彼の何かに怯えているような顔を見てしまったからだ。その後の彼の言葉はお願いというより命令といった方が正しかった。
「ヒナギクさん・・・すぐに帰ってください。」
「え?でも・・・」
「いいから・・・早く帰ってください。」
ハヤテは今まで見たことないような怖い顔をしていて、自分に帰って欲しいと本当に思ってることが痛い程伝わってきた。ヒナギクは告白しようとしたことも忘れてアパートの方へ帰って行った。
「おや?彼女をほったらかしにしていいのかい?」
「そんなんじゃないよ。それより・・・」
ハヤテは後ろを振り返りながら、自分がどんな風に生きていたかを思い出していた。 そして忘れていた。 自分が不幸であることを・・・ 自分が幸福にはなれないということを・・・
「どうしてこんなところにいるの?
父さん・・・母さん・・・」
急に勢いを増した雨が、酷く冷たく感じた。
どうも。 今回は井口裕香さんの『RAIN』を使わせていただきました。いい曲ですので是非聞いてみてください。 冒頭の部分ではルカに完全に決着をつけさせました。ちなみに前回の冒頭はアーたんの決着の話です。自分はヒナさんとハヤテがくっつくにあたって、決着をつけなくてはいけない相手が少なくとも4人いると思っています。アーたんとルカ、ナギそして西沢さん。泉さんは結構協力的になってくれるんじゃないかと思って外してありますが、ちゃんと決着はつけさせます。決して疎かにするつもりはないです。
ヒナギクさんは少しヘタレなイメージがあるので、観覧車では結局告白させませんでした。彼女が告白するのはまだ先になるかと思います。 あ、でも結構早くにさせるのも・・・ とにかくいろいろ考えてありますので楽しみにしておいてください。 ちなみにさらっと流しましたが、また遊園地に行くところは実は重要だったりします。ただ楽しいデートになるかというとちょっと違うんですよね。それには勿論、最後に出てきたハヤテの両親が関係してきます。このあたりはまだ上手くまとまっていないので出来るだけ分かり易い設定になるように頑張ります。
次回は少しだけ時間をとばして、雪路の誕生日会からです。 それでは ハヤヤー!!
|
|