文章チェックフォーム 前画面に戻る

対象スレッド 件名: Re: 兄と娘と恋人と
名前: タッキー
誤字を見つけたら
教えてください

悪戯を防ぐため
管理人の承認後に
作者に伝えます
誤った文字・語句 
          ↓
正しい文字・語句 
【参考】対象となる原文

Re: 兄と娘と恋人と
日時: 2014/06/09 13:53
名前: タッキー

ハヤッス!
参照が500越しました!なんか読んでくれる人がいるって嬉しいですね。
明日で試験が終わりなので、それからは更新ペースが落ちると思いますが、長い目で見守っておいてください。
それでは更新出来る時に、
更新!





「あぁ、ダルい。なんかもぉこのダルさで世界征服ができそうなくらいダルい。」

今日、11月4日、紫ちゃんハウスの共同スペースにて三千院ナギは、まるでニートの頂点と言っても過言ではない程やる気のない顔で、さっきまで遊んでいた3○Sの横に転がっていた。大の字になって、足を庭の方に投げ出している。

「ハヤテぇ〜、何か暖か〜いカフェラテでも持って来て〜。そうしないと私が世界征服しちゃうぞ〜。」

「・・・・・」

ハヤテはもう理解不能なお嬢様の言葉に声も出せず、そのままカフェラテを作り始める。

(今日は土曜日で、確かに学校はないけど、こんなにダラダラしてていいんだろうか。ていうか昨日勢いとはいえ学校行くとかやる気ある発言してませんでしたっけ?)

もうここまでくると逆に疲れるんじゃないかって程ダラダラしているナギは、いつものようにいつものセリフを口にした。

「なぁ、ハヤテぇ〜?何か面白いことないかなぁ〜?ハヤテぇ〜。」

「あ、そういえば今日、岳さんがここに遊びに来るそうですよ。」

「え!?」





  第8話  『前を向いて』





先程まで、畳と一体化していたようなナギは突然立ち上がった。

「あ、嬉しいんですか?」

ハヤテはお嬢様の、他人のことに関してはあまり見せない反応に気をよくし、そまま質問してみる。

「べ、別に嬉しくとも何ともないのだ!第一あんなヤツに興味などない!」

ナギはそんなことを言っていたが、実は初めてハヤテに逢った時や、ルカと逢った時と同じくらい、彼に興味を抱いていた。容姿や成績のことは勿論、ヒナギクの兄的な人物なのだ。興味を持たない方がおかしいだろう。

「で・・・いつ頃来るのだ?
いや!別に楽しみという訳ではないのだぞ!?ただこのアパートの大家として来客をもてなすのは当然の義務なのだから・・・」

「西沢さんが初めてここに来たときは思いっきり締め出したじゃないですか・・・」

「ハ、ハムスターは別にいいのだ!」

ハヤテは主の発言の矛盾点に溜息をつきつつ、やっぱり期待してるんだなぁ、と思い、そのまま質問に答える。

「夕方ぐらいに来るそうですよ。なんでもアパートの皆さんが集まっている方がいいからと。」

そう、今このアパートにはあまり住人がいない。ヒナギクは部活、千桜はバイト、カユラはイベントと皆それぞれの理由で外出していた。歩はマリアの買い物に付き合っている。なんでもハヤテのように女子力を磨きたいのだとか。



一方、夕方アパートに行く予定のある岳はというと、ヒナギクの部活に付き合っていた。
実はヒナギクの方から土日だけでも練習に来て、皆に稽古をつけてくれないかと頼まれていたのである。もちろん岳の答えはOKでこうして練習に付き合ってる。

「あ、本当に来てくれたんだ。ありがとう。」

「別にいいってこれぐらい。それにしても胴着似合うな、ヒナ。」

そのとき、岳やヒナギクと同じクラスの東宮などを除いて剣道部員全員に戦慄が走った。

(あ、あの人。いま桂さんのことヒナって!!!)

(ていうかあれ噂の転入生だろ。なんてカッコい・・・じゃなっかった、桂さんと兄妹って本当なのか!!!???)

「じゃぁ皆に紹介して、それから稽古つけてもらおうかしら。ガウ君。)

もう剣道部員の頭の中は爆発寸前だった。ハヤテがここに来たとき同じくらいに・・・

(((((ガウ君!!!!?????何なんだその親しげな呼び方は!!!??)))))

しかし、そんな部員たちも岳の自己紹介を聞いた時には落ち着いていた。いや落ち着かされていたの方が正しいだろう。

「知っている人もいるだろうが、とりあえず初めまして。部長であるヒナの紹介で土日だけここの稽古をつけることになった初神 岳だ。よろしく。」

その笑顔に誰も言葉を発せなかった。すると同じクラスだったのでショックが少なかったのか、東宮が最初に口を開いた。

「あのぉ、それは稽古をつけるってことは僕たちに剣道を教えるってこと?桂さんにも?」

「ん?そうだけど、なにか問題でも?」

「「「「「「ええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」」」」

「それってもしかして桂さんよりも強いってことですか!!!???」

部員たちが驚くのも無理はない。自分たちだけに教えるならともかく、同じ高校生がヒナギクに教える、つまりヒナギクより実力は上と断言してるのだ。当然の反応である。

「なんか信じてないみたいだし、一本だけやる?」

「そうだな。その方が手っ取り早そうだ。」

なかなか信じようとしないため、試合を見て分かってもらおうということになった。







今、桂ヒナギクは緊迫した空気の中にいる。その空気を醸し出しているのは自分ではなく、同じ土俵に立って、相対している相手から出されているのがほとんどだ。面越しにでも伝わってくる彼の威圧感に気を失わないようにするのがやっとだった。

正直勝てるとは思っていない。

プライドが高くどんなことにも負けを認めない彼女がそんなことを考えること自体非常に稀だが、そう思わせる程、彼には精神力、スピード、パワー、そして迫力が自分よりはるかに備わっていることを嫌でも感じさせられた。

そして彼女だけでなく、試合場の外にいる人間も本能的に理解していた。




彼の実力を・・・






彼の力が絶対的なものであることを・・・







その力の持ち主は両手に竹刀を持っている。

《二刀流》だ・・・

彼は構えておらず、いや構えているのだが、それはもはや構えではなく素人からすればただ立っているだけのように見えただろう。しかしそこに一切隙はなく、こちらから動けば確実にやられる。そのことがまるで文字になって見えるほど、彼の構えは完璧だった。

ヒナギクは相手が動くのを待っていた。まずはあの構えが1ミリでも崩れないと勝負にすらならない。そう考えていたからだ。
その時、相手がつま先を微妙に動いたのを見逃さず、ヒナギクは一気に相手に詰め寄った。

「やああぁぁぁぁ!!!!!!メェエン!!!!」

ヒナギクはとても速かった。が、彼はその美しいとも言える太刀筋をいともたやすく止めていた。頭の上まで掲げた手首をひねり、竹刀の切っ先を床に向けている。もう一方の手はぶら下げたままだ。

    バシッ!!!

ヒナギクはつばぜり合っていた竹刀を強く弾くと、そのまま相手の小手を狙った。俗に言う‘引き小手’だ。しかしそれは紙一重でかわされ、逆に打ち込みを受けてしまう。かろうじて避けたが、ひるんだヒナギクに追い討ちをかけるのを彼は止めなかった。
上、左、上、上、右、左、さらには下からもくる不規則な攻撃にヒナギクは防戦一方だ。
彼は二刀流の手数の多さを、体を靭やかに使うことで最大まで引き上げてくる。左手の上段の後、体を回転させ、右手で左側からなぎ払うように胴を狙ってきたり、突きを横方向に避ければ、そのまま同じ手が斜め横に振られ、小手を狙ってきたり。
彼は漫画やアニメでしかできないような動きをいともたやすく使いこなす。それは舞でも踊っているかのようだった。
すると、さっきまで猛攻を仕掛けてきた彼が突然、後方に飛び退いた。それを好機と思ったヒナギクは最大速度で相手に詰め寄り、一太刀目と同じように相手の面に向かって一閃する。垂直と言ってもいいほど綺麗でブレのない太刀筋だった。

「メェェエエエエン!!!」

しかし、その軌道は今回、何にも遮られることはなかった。
ヒナギクがフェイントだと気づいた頃にはもう遅く、振り返ると片手上段で構えている試合相手がいて・・・

「面♪これで一本だな。」

ヒナギクは岳の楽しそうな一言とともに、竹刀を軽く面に打ち込まれてしまった。





どれくらい静まり返っていただろう、その静寂は実際には10秒ほどだったが、その時間は10分にも20分にも感じる程長かった。

「さすがね。私の完敗だわ。」

防具を取ったヒナギクは岳のことを絶讃した。さすがにあそこまで来ると清々しく感じた。

「いや、ヒナも10年前とは比べ物にならないほど強くなってたよ。ホント頑張ったな。」

そいうと岳はヒナギクの頭を撫で始めた。どうも岳は頭を撫でることが好きらしい。我に返った剣道部員の殺意のこもった視線に気づいてはいたが、それを無視して頭を撫で続けていた。その気になれば睨むだけで追い払うことができるのを分かっていたからかもしれない。

「じゃ、皆もガウ君の実力は分かったと思うし、稽古を始めましょう。ほら、挨拶から。」

「「「「「お願いします!!!!!」」」」」

ヒナギクの呼びかけで同年代とはいえ礼儀よく挨拶をする部員たち。この人なら自分たちを高みに連れて行ってくれる。そんな予感がしたからだ。が、

「じゃぁ、覚悟はできてるってことで・・・いいな?」

笑顔だけれども決して笑っていないそんな指導者の表情を見た瞬間、自分たちの考えは間違いだと悟った。中でもヒナギクはこう思っていた。

(あれ?・・・・人選ミスった?)

その後、部活が終わる頃には誰も悲鳴すら出せないようになっていたという。





なんだかんだで、夕方。岳は紫ちゃんハウスに来ていた。
ごめんくださ〜い、という呼びかけに反応して玄関を開けたのはマリアだった。しかし、マリアはナギたちから何も聞いておらず、最初このイケメンくんのことがわからなかった。

「え、え〜と」

「あ、すいません。マリアさんとは初対面でしたね。ハヤテたちの友達やってる初神 岳です。」

「あら、そうなんですか。それじゃ初神君、中に入ってください。すぐにハヤテ君たちを呼びますから。」

ちなみに岳がマリアのことを知っているのはハヤテたちから聞いたからである。そんな中マリアに呼ばれて出迎えてくれたのはハヤテ・・・ではなく、その主のナギである。

「こんばんは、ナギちゃん。おじゃまします。」

「こ、こんばんは。」

ナギは緊張していた。
普段の様子からは分からないが、実は岳には結構近寄りにくい。彼の神々しい雰囲気が、高嶺の花のようなものを想像させているからだ。それを知っているので岳はいつも人には自分から声をかけるようにしている。しかし、ナギはまだあまり岳と話したことがなく、二人きりとなれば、たとえ話題を振られても、彼のオーラに押されてキョドってしまうのだ。
ちなみにナギ一人なのはハヤテたちの、ナギを岳と仲良くさせよう、という作戦のためだった。
そのままリビングに入ると、岳が突然話しかけてきた。

「やっぱ、緊張するかな。こんな状況は。
まぁこんな時はとりあえず・・・」

岳は持ってきていたバッグから3○Sを取り出した。

「ひと狩りいこうぜ。」

そのなんだかデジャヴを感じさせるキャッチフレーズはナギが緊張を解いたきっかけだったという。

時は少し進んで夕食。何故かこれを岳が作ると言い出した。客なので普通はもてなされる側なのだが、なんだかんだで世話になってるから、と譲らなかった。

「で、でも・・・」

「ガウ君。あぁ見えて意外とガンコ者だから何言っても無駄ですよ。」

客に仕事をさせることなのか、それとも他人に仕事を取られたことなのか、どちらにしてもまだ不満そうにしていたマリアをヒナギクが説得する。

「さすがヒナ。よく分かってるじゃん。」

「ナギだったらそこで食ってかかるのに・・・」

「大人の対応だな・・・」

「な、なにおう!」

千桜とカユラがじと目で見ているのに対し、やはり食ってかかるナギは、確かにまだ子供である。
なんだかんだで、十分ちょっとかけて今日の夕食であるカツカレーができた。ハヤテとマリアがしっかり仕込みをしていたのであまり手間はかからなかったそうだ。しかしその味は・・・

「っ!!!何だこれ。ハヤテやマリアのより美味しいではないか!!」

ストレートな評価に少しむっとしたハヤテとマリアだったが、カレーを口に入れた瞬間、何も文句は言えなくなっていた。他の住民も今まで出会ったことのない美味しさに手が止まらず、旨さの秘訣を訊いたりしていた。

「それは経験の差ってことで。」

そう言って岳は自分もカレーを食べ始めた。

夕食を終えた住人たちはそれぞれ自分のやりたいことをやっている。まぁ半分が勉強で、もう半分が漫画かゲームと大体決まっているのだが。

今、岳はマリアと食器を洗っている。マリアは最初は、さすがに悪い、と断っていたが・・・

「さっきのカレーの作り方、教えましょうか?」

その一言でもうマリアの行動は決まっていた。

「ここでもうしばらく加熱するとより旨みが出てですね・・・」

「へぇ〜、そうなんですか。じゃぁ、こちらも・・・」

マリアはまるで紐を吊り下げられた猫のように岳の話に食いついており、必死にそれを自分の物にしようとメモもとっている。

(三千院家の料理がまた美味しくなりそうだなぁ)

ハヤテは二人を横目にそんな事を考えていた。


やがて、食器の片付けも終わり、縁側に腰掛けていた岳の隣にハヤテも腰掛けた。
もう日は沈んでいて月が高く昇っている。そんな中、ハヤテは岳に一つの質問をしていた。

「何でそんなに何でもできるんですか?」

一見あまり大した質問でもないが、岳はそれにどこか悲しそうな表情をしていた。

「いろいろあったんだよ。いろいろと・・・」

ハヤテは岳のそんな表状に気づき、謝ろうとしたが、彼のふいな質問に遮られてしまった。

「お前は、今、前を向いているか?」

ハヤテはその質問の意味を理解するのにしばらくかかった。

(えっと・・僕は今、前を・・・庭の方を向いている。いや質問の意味はこれじゃない。)

当然である。そこでハヤテは今までに出会った人たちのことを思い返していた。その記憶の中で、確かに辛いこともあったが、いろいろな人たちとともに自分は前に進めている。前を向いていると感じることができた。

「はい・・・僕は今、前を向いています。」

「そっか・・・
俺がこんなふうになったのはずっとそういう生き方をしてたからなんだ。
確かに立ち止まったこともあったけど、それでも前だけは見てた。そしたらいつの間にかたくさんの力が手に入ったよ。


まぁ、本当に欲しいのは、こんなもんじゃなかったんだけどな・・・」

「岳さん・・・」

ハヤテが何と声をかけていいか戸惑っていると、岳はたち上がり、玄関の方へ向かって行った。

「まぁ、そういうことだから頑張れよ。皆にもよろしく伝えといてくれ。」

そう言って軽く手を振っていた彼の背中は、まるで何かを落としてしまったかのように、とても小さく見えた。










どうも!
気づいている方もいると思いますが、2回ほど間違えて途中で更新してしまいました。つまり今、これはメンテの方で書いているということです。途中のヤツを見て混乱させてしまった方、本当に申し訳ありませんでした。
今日はバトル描写に挑戦してみました。いやぁ〜難しいですね。自分の頭ではイメージが出来ているけど、それを文章にするのがちょっと・・・
読んでくれた方に上手く伝わってたらいいなと思います。
あと岳君はとても料理上手ですよ。実は一つの喫茶店(客入りもそれなりのところ)をたった一人だけでまわせるという設定もあるのですが、さすがに化物すぎますね。
ということで、今回は岳君をアパートに遊びにこさせて、それから彼の暗い部分を覗かせてみました。どうだったでしょうか?岳君のことについては後半あたりで明かしていこうと思っています。
さて、次回はハヤテをヒナギク以外の女性キャラと絡ませたいと思います。
それでは!!   ハヤヤー!!