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対象スレッド 件名: 【第2話】アリス
名前: ロッキー・ラックーン
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【第2話】アリス
日時: 2014/06/19 04:51
名前: ロッキー・ラックーン

こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
今回は、チャットルーム企画「小説のネタ出し合って誰かに掲示板で投稿してみらおうぜ」の作品となります。(「みらおうぜ」は誤字ではありません。多分。
そこで決まったテーマが「アリスが怖い話を聞いて怖くて眠れなくなって夜中に色々な人の部屋に行くお話+アリスちゃんが一人でおトイレ出来なかった話」です。
先にお詫び申し上げます。「色々な人の部屋に行く」という要素が詰められませんでした。今後なんらかの形でこの要素を使う予定でありますので…(小声

なんやかんや言いましたが、皆様大好きちっちゃいアリスちゃんのお話です。
それではどーぞ!



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「「「きゃぁああああ!!」」」



「んもう、うるさいわねぇ…」

「だいぶ盛り上がっているようですね」



春休み中のとある夜。アパートに黄色い声が響き渡る。ハヤテが勉強中だというのにお構いなしという様子。
事のいきさつを話すと、ナギがいきなり「季節を先取りして怪談大会をやらなイカ?」などと言ってきて、私とハヤテを除く住人全員がナギの部屋に集合していたのだった。ちなみに私とハヤテは不参加。これはハヤテの勉強を見るためであって、決して怪談に怖じ気づいたという訳ではない事をここでは強調したい。
…本当はナギに誘われて躊躇ってる私の様子を見て、ハヤテが「勉強を見てもらう約束があるからパス」と助け舟を出してくれたというお話よ。仕方無いじゃない、嫌なものは嫌なんだし。
ハヤテの部屋はナギの部屋の隣で、話し声が聞こえて集中出来ないので私の部屋にハヤテを呼んでいるというシチュエーション。私の部屋の押入れの住人――アリスは怪談大会に参加している。普段はこういった集まりには参加しないのが彼女のスタンスだけど…気を利かせてくれたのかな?



「ヒナ、この問題なんですけど…」

「ハヤテも真面目よねぇ。勉強なんて建前でいいのに…」

「まあ、春休み中に少しでもレベルアップしなきゃならないのも事実ですしね」



勉強の件はてっきり私をかばうための方便だと思っていたので、ハヤテが私の部屋に入るやいなや教科書と問題集を開き始めたのには心底がっかりした。
ハヤテの言う事も正論ではあるけど…せっかく二人きりになれたんだから、もうちょっと私の事を求めてくれてもいいんじゃないかしら?…って、こんな考え方じゃいけないわ。チャンスは自分で作るものよね!



「じゃあ、この問題が出来たら休憩にしましょ?」

「え?でも始めたばかりですけど…」



この人はこんなシチュエーションで本当に勉強の事しか頭に無かったの?本当にくそ真面目というか、お人よしというか…。
…分かってるわよ。そこが好きなんだけど!



「んもう、鈍いわねえ!ハヤテとイチャイチャしたいって言ってるのよ!!勉強なんて二人きりじゃない時にいくらでも見てあげるわよ」

「…スミマセン」

「謝らないの。こーゆー時は?」

「僕もヒナとイチャイチャしたいです」

「うん、それでよし。じゃあこんな問題、サクッと片付けちゃうわよ〜!」

「お願いします!」



この問題を片付けた後は…それは秘密よ?あぁ〜、なんだかんだでストレス溜まってるし、思いっきり甘えさせてもらうわよぉ!







「やーっとイチャつき出しましたわよ、ハヤテ君とヒナギクさん」

「やっとか!本当に勉強し始めた時はビックリしたな…」

「あぁ。それにしてもヒナがこんな事を言うようになるなんて…本当にお姫様の教育が効いてるんだな…」

「流石はアリス大先生ってトコじゃないかな!」

「エッヘン!ですわ♪」



こんばんは、マリアでございます。今は、ナギの部屋からヒナギクさんの部屋の様子をモニターで覗き見させて頂いております。(メンバーはセリフ順に、私・ナギ・春風さん・西沢さん・アリスさんです)
そう。怪談大会というのはただの建前で、ハヤテ君とヒナギクさんに二人きりの時間をあげようというナギからの「はからい」という訳なのでした。こうやって、他人の幸せのために何かをしようとするナギの姿に、私は深く感動しているのでありまして…

とか語っている間にお二方のじゃれあいがだんだん大人のアレになりつつあります。コレはナギの教育上よろしくないですわね。



プチン ←モニターを切りました

「はいはーい、ココからは二人だけの秘密にしてあげましょう?せっかくの怪談大会なんですし、私の自慢の百物語の一部を披露しますわね♪」

「え゙?なんだマリア!?ホントに怪談をやるなんて聞いてないぞ!なあアーちゃん!?」

「別にいいじゃないですか、ナーちゃん」

「ファッ!?」

「そうそう。ヒマだし、面白そうだし、別にいいじゃないか」

「あれえナギちゃん…もしかして怖いの?」

「…そんなワケあるかあ!マリア、さっさと話すのだ!!」

「あらあらうふふ、時間はたっぷりあるのでまずは小手調べですわ。では…」



はっきり言いましょう。私の怪談の戦闘力は530000です。
ここにいる全員、夜一人でトイレに行けなくさせてあげますわよ♪





     しあわせの花 Cuties 第2話【 アリス 】





「ヒナ…ヒナ…」



ハヤテとのお楽しみタイムを終えて、満足感と心地良い倦怠感の中で眠りにつく私を何者かが邪魔をした。



「う、うーん…なに…アリス…?」



声の主はアリス。なにやら切羽詰った表情をしているけど、強い眠気に苛まれる私の知ったところではなかった。



「すみません、ちょっと付いて来て欲しいのですが…」

「んん…?トイレ…?」

「そうですわ、早く!」

「ん…わかった…わかったから引っ張らないで…」



まだ目覚め切れない私の袖を力いっぱい引っ張るアリス。睡眠を妨げられた事による鬱陶しさがアリスへの愛情を上回りながらも、なんとかそれを振り切って彼女について行った。小さな手が私の手を力いっぱい握っている様子に、相当我慢していたであろう事が推測できた。
そういえば、怪談大会とか言ってたわね。この子をこんな風にしてしまうだなんて、よっぽど怖い話が出てきたのね。…行かなくて良かったわ(小声



『ヒナ、ちゃんといますか?』  ←『』はトイレのドア越しのセリフです

「大丈夫だから、安心してしなさい」

『ヒナ、いますか?』

「はいはい、いるわよー」



ジャパー

「ふぅ…なんとか間に合いましたわ」

「それは良かったわね」



用を済ませ、ほっと一息つくアリスの頭を優しく撫でる。緊急事態を抜け出してよほど気が抜けているのか、いつもであれば撫でる私の手を取って頬に寄せるという仕草をするはずなのに、反応が無い。
こんな姿のアリスはあんまり見られないわ。ちょっとイジワルしたくなっちゃうわね♪



「でも…アリスにもこんな子供っぽいところがあるのね」

「し、仕方無いのですわ!マリアさんが変な話を聞かせるから…ブツブツ…」

「はいはい、分かった分かった♪」

「ムムム…」



不機嫌そうにうつむくアリスを私は笑顔で見守った。いつもいいように振り回されてるから、ちょっとしたお返しのつもり。
自室に帰り、眠り直そうと電灯のヒモに手をかけてアリスが押入れに戻るのを待ったが、彼女は押入れに入る事無くふすまを閉めてしまった。



「もうこの際、恥の上塗りですわ。ねえヒナ…」

「ん?」

「ヒナのお布団で一緒に寝ても…よろしいでしょうか?」



意外な申し出。恥ずかしそうに視線を逸らすアリスに、また悪戯心が働いてしまう。



「いいわよ、寂しがり屋のアリスちゃんにママが添い寝してあげまちゅわねー♪」

「ムムム…ありがとうございます…」

「あ、ちょっと怒った?」

「そんな事ありませんわ、私が悪いのですからね!」



ちょっとおふざけが過ぎたみたい。自分のせいだと言うアリスの頭を強めに撫でていさめる。



「冗談よ。私だって貴女くらいの時はお姉ちゃんに付いて貰ってたものよ。恥ずかしくなんてないわ」

「ヒナ…そーゆーフォローはもう少し早くして欲しいものですわ」

「ゴメンゴメン、アリスが困ってるのを見るのが珍しくて、ちょっとイジワルしちゃったわ。ほら、おいで…」

「ホントにもう…ブツブツ…」



口を尖らせながらも私の布団に入ってくるアリス。いつもあんなに元気にはしゃいでるから意識しないけど、やっぱり可愛くて…頼りなさを感じてしまうほどに小さい身体だった。



「寒くないかしら?」

「ええ、温かくて…ヒナの匂いがして安心しますわ」

「よかったわね」



アリスの屈託の無い笑顔に、私もお姉ちゃんにこんな風に添い寝してもらってたのを思い出して心が温かくなった。
が、その笑顔の瞳が潤んできて、雫となって零れ落ちた。



「あれ…なんで…」



自分の感情とは裏腹の涙に戸惑うアリス。私はその涙の意味をすぐに理解できた。
寂しい時や辛い時が終わった瞬間。心が安らぐと同時に、それまでの自分がどうしようもなく哀れに思えて感情が爆発してしまう事が私にもあった。そんな時、何度お姉ちゃんの温かい腕の中で泣かせてもらった事だろう…。
私はアリスの小さな肩を寄せて優しく、そして力強く抱き締めた。



「泣いても、良いのよ。私は貴女のママなんだから…もっと私に甘えて…ね?」

「う…ゔわぁぁ…ヒナ…ヒナ…」

「よしよし…大丈夫だから…」



普段の気丈な姿からは想像出来ない弱々しい嗚咽を漏らすアリス。私はその小さな小さな身体を抱き締めて、頭を撫で続けた。
彼女はずっと寂しかったんだ。愛された記憶を持たない子供がどうやって自分の力で立つ事が出来ようか。お姉ちゃんの存在に頼ってばかりだった自分には想像もつかない孤独を、彼女は背負っている。せめて私だけでも…その孤独をかき消す力になりたい。



「Zzz…」



泣き疲れて眠ってしまったアリス。溜め込んでいたものを爆発させたからか、その寝顔はとても安らかだった。
きっと、良い夢を見ているんだと思う。私が同じように泣き喚いて眠っていた時も、お姉ちゃんはこんな気持ちだったのかな?



「私は、何があってもアリスの味方よ」



改めて誓う。お姉ちゃんや今の両親、そしてハヤテ。私の大切な人達から受け取った全ての愛情をそのまま、この子に注ぐ。
鮮やかな金髪がかかる頬をそっと撫でながら、私は呟いた。



【つづく】


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【あとがき】

キューティーズ2発目の主役はやっぱりアリスちゃんです。アリスちゃんと言いつつ、半分くらいしか出てないからまた出てくるかもしれません。
充電池さんから頂いたテーマは「アリスちゃんが一人でおトイレ出来なかった話」であり、「アリスちゃんがお漏らししちゃった話」ではないので、今回の展開で必要十分ですね。(フンス

ガンガン素直にハヤテにアプローチするヒナ、ヒナの母性、珍しく攻められるアリスちゃんと、やりたい事が色々と出来て満足しています。その中でも、アリスちゃんが普段は意識させない孤独を感じてしまうところがやりたくて仕方なかったんです。

前スレでも何度も言っていますが、私の中では「アリス」と「アテネ」は全くの別人です。記憶が無いのでヒナの部屋の居候として過ごしてきたのが人生の大半であり、ヒナが母親同然という扱いで書いております。
原作でのこの母子の部屋での会話が皆無であり、「ヒナ」と呼ばれるようになった経緯も謎。「子連れ生徒会長爆誕の瞬間」以外があんまりにも薄すぎてもどかしいというのが個人的な思いであります。
そんなフラストレーションを発散させる意味としての、このSSでのアリスちゃんの活躍とも言い換えられますね。長いから以下省略。

そんなこんなでアリスちゃんの心に抱える寂しさを、(姉以外の)肉親以外からの愛情で育ってきたヒナだからこそ察知できて、さらには解消できるのではないかという思いがこのSSの前提となっております。
今後も、ハヤテ・ヒナ義母を含めた擬似家族の絡みは続いていきますので、どうぞよろしくです。


さてさて次回は、ヒナの親友の恋模様について出来ればと思っています。
では、ここまでありがとうございました。ご感想・ご質問等お待ちしております。