First Love Letter(前) |
- 日時: 2014/01/25 21:26
- 名前: 春樹咲良
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「ん、なんだこれ……」
秋葉原のアニメショップで働く春風千桜は、仕事に入る準備のために開けた自分のロッカーの中に、小さな四角い封筒が置いてあるのを見つけた。
(手紙……? 誰からだ?)
このロッカーに入っていたということはアルバイトの誰かに違いないが、『春風さんへ』と書かれた宛名書きの文字には、なんとなく見覚えがある気がした。
(センパイから……?)
手紙の主と思われる人物は、今日のシフトには入っていない。前回千桜が入った日から今日までの間に、この手紙を千桜のロッカーに入れたということになる。 今月残りはもうシフトに入っていなかった気がするから、会うタイミングがないというのは確かだが。 それにしても、わざわざ手紙で伝えなければならない用件とは、一体何だろう……?
勤務開始時間までまだ時間があったので、とりあえずバックヤードの人目につかないところで手紙を開封してみた。
(なんだか、これじゃまるで……)
そんなことを考えながら目を落とした手紙は、その雰囲気にそぐわない意外な書き出しから始まっていた。
☆☆☆
春風さんへ
君がこの手紙を読む頃には、僕は……
一度、こんな書き出しの手紙を書いてみたいと思っていたけど、 まさかこんな形で実現するとは、僕も思っていませんでした。 死んでしまうわけでもないのに、大げさだったかな、やっぱり。 でも、このまま二度と会うことが無いのかもしれないと思ったら、 これくらい書いてもいいかなと思いました。
君がこの手紙を読む頃には、僕はもう君の「先輩」ではなくなっているはずです。 今月限りで、ここを辞めて地元に帰ることになりました。 急な話で驚くかもしれないけど、家の事情だから仕方ないなと思っています。
短い間だったけど、君と一緒にここで働いてて、楽しかったです。 春風さんは働き始めたときからもう本当に仕事ができて、 先輩のくせに色々と助けてもらってばっかりだったけど、どれも大切な思い出です。 ここでの日々は、モブキャラでしかない僕の人生に、あり余るほどの光を与えてくれました。 一緒にいられるだけで、ただ幸せでした。
ヘタレなので君にうまく伝えられないまま、こんなタイミングになってしまったけど、 これで最後なので、言わせてください。
ありがとう。それと、大好きです。
君が他の人のことを好きだとしても、 もう付き合っている人がいるとしても、 これだけは言っておきたかった。 まぁ、手紙なんだけど。ヘタレなのでこれで勘弁してください。
春風さんのことは、ずっと忘れません。 僕というモブキャラのこと、たまにでも思い出してくれたら、嬉しいです。 それだけで僕は、これからも生きていけます。
ここまで読んでくれてありがとう。 体には気をつけて。お元気で。
永遠のモブキャラA
○○○
手紙を読んだ千桜がこの後とった行動とは……! なんて引きを自分で書くのもちょっとサムいですかね。
さておき。 モブAくんに勝手に名前を付けるわけにもいかずやや苦悩しました。 後編はそんなに間が空かないようにお届けできればと思っています。
それでは。
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