Re: キミとミキ |
- 日時: 2013/10/08 17:18
- 名前: ネームレス
- ストライク2
失念していた。 最近野球に専念出来て無いし、朝風先輩に言われた時は慌てたけど「これはチャンスだ」と思ったのも事実。 かなりポジティブに解釈して、「背中を押してくれた」と考えれば、我慢出来た。 しかし。しかしだ。ここである問題が浮上した。 一ヶ月。ギャルゲー主人公が攻略につかうであろう期間。……いや、ギャルゲーなんて殆ど知らないけど。 兎も角、その一ヶ月にどういう問題があるかと言うと、
「大会が近くて、休む暇が無い!!」
「おーい、グランド走って来い一年生」
大会まで“一ヶ月”。 告白期間も“一ヶ月”。 本来、ここは一目惚れでも何でも告白してふられればいい。そして僕は野球に専念。花菱先輩とは関係が無くなり元の生活に戻れる。それが普通だ。僕みたいな人間が花菱先輩なんて高望みなんだ。 それに、朝風先輩もそういうのを狙ってるのだ。ネタとして仕込んでドッキリ風に仕立てる。ふられても僕のダメージは少ない。朝風先輩に協力したという事にすれば問題ない。 ……問題ない、はずだ。 でも、僕の初恋を面白おかしく弄られると思うと、花菱先輩に迷惑がかかると思うと、
「できるかあああああああああああああ!!!」
「おー、今日の太郎は気合入ってるなー」
休み時間も使えればいいが、最悪なことにテストも近く、赤点回避を監督より厳命されている以上、バカな僕は休み時間を勉強に費やさなければならなかった。
「青春のバカヤロオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「青春してるなー」
あれから二週間。明日はテストなのに、テスト部休は野球部には無かった。
○◦○◦○◦
「テスト疲れたなー太郎!」
「ああ、おかげで沢山練習できたよモブ」
「モブやめろ。というかなんでテスト期間なのに部休が無えんだよ」
「みんな野球が好きだからね!」
これは本当だ。 そもそも、白皇は金持ちの学校だ。将来が決まっているという人も少なくない。その中で好き好んで部活をやる人は、本心から好きな人だ。だからこそ辛い練習に耐えれる。
「答えになってねー」
「え?」
「部休が無い理由が野球が好きって、普通は監督が許さんだろ」
「甘いね。白皇はエスカレーター式、僕みたいな小学校から通ってる子は基本バカ! 偏差値とかは外部生任せだから学校は僕たちエスカレーター組には期待していないのさ! だから頼み込めば練習が許可される!」
「この学校も堕ちたな」
僕もそう思う。だが、おかげで好きな野球ができる。 が、今の僕にはあまりいい事とは言えない。 そう、テスト期間は基本一週間ほど。 何もしないまま二週間、テスト期間で一週間。計三週間。 約束まで、残り一週間となった。
「ギャルゲー主人公でも無理だろ!!!」
「うお!? どうした太郎!?」
一週間で成就する恋……無いな。あってもそいつは主人公だ。決して名前は田中太郎では無いだろう。 ああ、もう少しまともな名前が良かった。太郎って昔過ぎるよ。
「なあ、モブ。お前って一週間で女の人と付き合える?」
「なんだ藪から棒に。……て、好きな人いるんだったな。時間掛けちゃダメなのか?」
「いろいろ事情があってね……」
「ふーん。ま、いいけど。一週間か……俺は三日で付き合ったが」
「お前彼女いたの!?」
「おうともよ!」
「男版ビッチ!?」
「認識ひでえ!? ……で、誰が好きなんだ」
「……誰にも言うなよ」
「おう」
「……花菱先輩」
「……花菱って花菱美希?」
「うん」
「…………」
「…………」
「諦めな」
「モブのバーカ!」
僕は走って部活へと急いだ。
○◦○◦○◦
「今日は休みだ。メリハリも大事だぞ」
…………え?
「部活は無いんですか?」
「うむ。体を酷使し過ぎても壊れるだけだ。ゆっくり休め」
急に宣告された部休。いきなり過ぎて何がなんだか。 でも、これってチャンスでは? 最初で最後の機会なのでは? そうと決まれば!
「……どこに行こう」
今更ながら、花菱先輩の事何も知らない事に気付いた。 はぁ、どうしよう。
「君、どうしたの」
「へ?」
あれ? 何処かで聞いたことあるような? 振り向くと、ピンクの髪に整った顔。どこか負けず嫌いな雰囲気を漂わす、
「せ、生徒会長」
「ん? ええ、生徒会長桂ヒナギク。君は……一年の田中太郎くんね」
「え!? な、何で僕の名前を」
「生徒会長として、全校生徒の顔と名前を覚えるのは必要な事よ」
どういう記憶力してるの!?
「それより、君こそ何か迷っているようだけど、悩み事?」
「……え?ああ、ちょっと恋の悩みという……か……」
僕のバカァ! 何で正直に言っちゃうのさ!
「へぇー、恋ねえ」
「あ! いえ大丈夫です! 生徒会長に相談する事の程では!」
「でも、困ってる生徒は見過ごせないわ」
「だ、大丈夫です! それに、生徒会長って誰とも付き合ったことがないって噂ですし!」
…………あ。
「へ、へぇー、それって私に経験が無いから役に立たないっていうことかしら?」
地雷踏んだー! 何回踏めば気が済むんだ僕は! そしてやっぱりプライド高かったよ生徒会長!
「本当はいつでも相談してねって言うつもりだったけど、やめたわ。来なさい、あなたの恋の悩み解決してあげるわ!」
「え? いや、ちょ、あああああああああああああああああああああああ!!!」
生徒会長はとても力が強かったですby野球部期待の新人
○◦○◦○◦
「へぇー! 美希にねー!」
何で人物名まで教えてんだー!! たしか花菱先輩と生徒会長って親友なんだよね。「あなたなんかに美希は任せられない!」とか言われたらどうしよう!?
「美希もなかなか隅に置けないわねー」
……て、あれ? なんか笑ってるぞ? 女の人はコイバナ好きとか言うけどそういうこと?
「じゃあ私はあなたと美希をデートさせればいいのね」
「何ですと!?」
気がマッハ過ぎる!
「美希は自分を引っ張ってくれるような人が好きなのよ。だから、ここはデートでもして男らしいとこ見せちゃいなさい」
「お、男らしいって……」
そもそも話した事だってたった一度だし、デートって言っても一週間以内だ。チャンスがあるとすれば週末(その代わり野球部を休むという禁忌を犯すことになる)。 そんな僕が、で、デート? あの花菱先輩と? というかそもそも、
「すぐにデートさせるって付き合った事の無い人の発想みたい」
「何ですって!?」
「ひぃっ!?」
心の声がー!?
「私は白皇生徒会長桂ヒナギク! 生徒の悩みは絶対に解決してみせる!」
「も、もしふられたら?」
「……野球の練習に付き合ってあげる」
まさかのノープランだった。
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