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対象スレッド 件名: Re: Meaning of living (5/22更新)
名前: サタン
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Re: Meaning of living (5/22更新)
日時: 2013/05/29 23:24
名前: サタン

5、出会い、別れ、そしてまた出会い





自分の本当の気持ちに嘘を付いたことに少し後悔しつつ、
公園の中に歩み出した。
そりゃあ本音は一緒に行きたかった。
でも、もう女の子を傷つけたりしないって決めたんだ。
あの黄金のような日々の終わりから――――――否が応でも学んだんだ。
アーたん…

遠き昔の幼き過去を回想していると、
自販機とベンチが一式並んでいる空間に出た。
そこではクリスマス・イブに浮かれていると思われる男たちに
囲まれている一人の少女がいた。

「君、可愛いねー ? 良かったら、俺らと付き合わないか」
「ふん、お前らのような平民が私と釣り合うとでも思っているのか、愚か者め」

強気な少女だこと…
でもそんな高圧的なセリフを吐いたら…
男の中の一人が少女を強引に掴んだ。

「ふふふ… こんな傲慢でいられるのも今のうちだぜ」
「ちょ、離せ!」

そりゃあそうだろうな。
誰がどう見ても華奢な女の子にしか見えないし、
まあ、口だけだよな。

「このまま俺らと付き合ってもらうぞ。
俺らにあんな口利いたことを後悔させてやるぜ」
「…止めろ! 離せー!」

……はあー 仕方ないな。
改めて思った。
困っている人がいると反射的に飛び出してしまうなんて、
僕がドが付くほどのお人好しなんだなと。

「お前たち…そんな年下の女の子相手に数人でかかるなんて…
恥ずかしくないのか?」
「何だと! お前やる気かよ!」

少女を掴んでいた内の一人の男が、
僕に向かってきた。
相手の拳が僕の頬を狙っていたが、
殴らせなかった。
相手の拳を掴んでそのまま僕の背後に投げ飛ばした。

「まだやるのかな?」
「くそ! 覚えてろー」

余裕の笑顔で少女を掴んでいた輩に向き直るが、
男たちは今のでビビったらしく逃げ出した。
所詮、数だけか。
まあ、少女が無事でよかった。
男たちがいなくなったのを見定めると、

「大丈夫?」
「…誰が助けろなどと言った! 余計なことをするな。 まったく…」

声をかけるが、反応は決して良い物ではなかった。
…強がっているのか。
この期に及んで。

「さっきの光景から君が逆転するような展開は想像できないけど…」
「そ、それは! 実は私にはコナ◯のような麻酔型腕時計を常にしていてだな…」
「腕時計なんてどこにあるの? アニメと現実をゴッチャにするのは良くないよ」
「う…!も、もう! バカ!」

僕のツッコミで反論できなくなった彼女は金髪ツインテールを、
揺らしながら俯く。
黒のパーティードレス姿の少女は冬には相応しくない、
少し肌が見え隠れしたものだった。
この冬空でそんな格好しているなんて風邪引くんじゃないかな。
…しょうがない。

「寒いならこれあげるよ」
「だ、誰が寒いなどと…」
「いいからいいから♪」

僕は自分が着込んでいたボロボロのコートを少女に羽織らせた。
どうせ、いつヤクザに捕まってもおかしくない僕だ。
ならば…

「このコート随分安い作りだな、
おまけに糸がほつれて中の繊維がでかかっていて、
おまけにサイズはブカブカ…」

せっかく、人のコートあげたのに何だその可愛げない反応は…!
何様のつもりだ…!

「…でも、温かい。気に入った♪」
「……そう」

少女はさっきからの可愛げない反応と打って変わって、
無邪気な笑顔を浮かべた。

「そうだ、この機械が私に嫌がらせするのだが、
何とかならないのか?」
「嫌がらせ?」

機械が何の嫌がらせできるんだよ…
僕は呆れたように少女が指し示す先を見ると、
そこには何処にでもあるような自販機が設置されていた。

「まるでじじいのような手の込んだいじめなのだ。
カードが使えないなんて!」
「は…はあ」

彼女が持っていたのは、
大金持ちの中の大金持ちしか持てないと言い伝えられる
プラチナカードであった。
なぜ彼女が自販機のことを分かっていないか、
理解できた。
きっとこの少女は超の付くほどの大金持ちの家のお嬢様であるから、
こんなに世間知らずなのかと。

「私はこの”あたたか〜い”が飲みたいだけなのにな。
このポンコツが…!」
「……」

彼女はカードが使えないことに腹を立てて、
自販機を蹴った。
もう少しおしとやかにやれないのだろうか。
そんなことを考えつつも彼女をたしなめた。

「女の子が物をやたらに蹴るのは良くないよ。
その”あたたか〜い”くらいなら僕が買ってあげるから」
「ふん、余計なお世話だ!
別にそんな物飲みたいなどと…」

あれ、さっき自分の言っていたことと矛盾してない?
それとも僕がお節介焼いたから怒っているのかな?

彼女の気まぐれはとりあえず無視して、
僕は両親が残していった最後のお金である百二十円を自販機に投入しようとしたが、
小銭をぶちまけてしまった。

「僕はどこまでついてないんだか…」

ため息をつきながら、小銭を追いかける。
百円玉がコロコロと転がっていく。
一メートルくらい転がると静止した。
そこを僕は拾おうとしたが、
僕よりも先に小銭に着手していた人間がいた。
見上げると、

「久しいな。 少年よ」
「あ、あなたは…!?」

十年前に出会った懐かしい人であった。
なぜかその人からは独特なプレッシャーが感じられた。

「どうだ、少しは生きている分かってきたかね?」
「…そんなこと考える前に僕の未来はもうないのですよ…
あなたの言う通り両親にこき使われて、挙句の果てには捨てられましたよ…
まるでゴミのようにね」

そう、あの頃から状況は何も良くなってないんだ。
むしろ悪化している。
そんな人生に生きている意味なんて考える時間があると思う?
その前に僕は今日で死ぬかもしれないのに…

「そうかそうか、
両親はやっぱりお前のことを物以下の扱いだったか…」

僕をあざ笑いにきたのか十年前と同じく。
あのときも思ったけど、
サンタっていうのは子供に夢を与える存在じゃないのか?
そんな人が僕の末路を見届けに来ただけなんて…

「…じゃが、お前を必要としている奴もいるかもしれないぞ」
「そんな人いやしませんよ」

いるわけないんだ。
僕なんかを必要にしている人なんて…
人なんて…いるわ…け…

”大丈夫…! あなたは今から信じるから…ね♪”

暗闇の絶望の中で僕を頼ってくれた少女。
短い期間であっという間に僕に運命を託したり、
とにかく僕に賭けてくれた。
こんな僕に。

”うん、ありがとう!頑張るよ!”

そう言った彼女の表情はやる気に満ち溢れていた。
そしてこの言葉は紛れもなく、
僕に感謝している証その物であったとも思う。
彼女はまさか…
僕を…

「ではな。 わしはパーティーに戻らないといけないからな」

サンタが去って行くのを、上の空のように眺めていた。
え… もしそうなら…僕は何てことを…
ははは…やっちゃったよ…
僕はまた女の子を傷つけちゃったよ…
自分との約束を犯してしまって、
何ともやりきれない気持ちが僕の中を駆け巡っていた。
そんな僕に悲鳴が聞こえてきた。

「は、離せ―! む、むぐ!」
「!?」

自販機の前で待たせていた少女が、
二人組の男に捕まっていて、
公園の外の車に押し込められていた。

僕が目を離していたばかりに…
もう、これ以上僕の目の前で女の子は泣かせない…!
僕は電光石火の如く駈け出した。

「ゲームの始まりじゃな…」

無我夢中に公園を僕が飛び出すとき、
微かにそんな声が聞こえた気がした。




〜 〜 〜 〜 〜





僕がたどり着くまでに少女が囚われた車は、
発進してしまった。
だが、車のナンバーはしっかり記憶した。
くそ、何か乗り物でもあれば…追いつけるのに…!
仕方なく、車が去っていった方向に駆け出す。
すると、本来ならお呼びでない人たちが乗った車が、
僕の目の前に登場して中の人が出てきた。

「どうだ、ヤクザの情報網は凄いだろ?
東京内にいるうちの連中に情報を流したら、
こんなに早く再会できたぜ、お坊ちゃんよ」
「…」
「さあ、今度こそ来てもらおうかな?」

こんなに早くヤクザに見つかるなんて…
やっぱり、僕はついてないな。
…あれ、待てよ…?
これを利用すれば… もしかしたら…!

「良いですよ。…但し、この条件が飲めればの話…ですがね」
「はあ…? この期に及ん命乞いしようなんて…
ふざけ…「どうすれば、大人しく捕まってくれるのかな?」

僕の願いを足掻きとみたヤクザが僕に銃口を向けてきたが、
目傷男がそれを遮り、僕に聞き返した。

「柏木! なぜ、こんな奴の言う通りにする必要があるんだ!」
「少し言うことを聞くだけで素直に捕まってくれると言っているんですぜ。
聞いてやりましょうや、 まあ、逃がしてくれっていう願いは聞けないがな」
「ありがとうございます。実は…」

ヤクザの中には話が分かってくれる心の広い人はいるんだなあ。
このあとの自分の運命はさておき、
僕が今助けたい人がいると伝えた。

「何だそんなことか…いいだろう!
よし、お前たち都内にいるうちの組の奴らに伝えろ!
多摩11―20を見つけ次第、俺らに連絡するように…と!」
「かしこまりました!」

柏木と呼ばれていた男がそう仲間に命じると、
仲間の方も慌ただしく、携帯を取り出し始めた。
ヤクザもあながち悪いことだけしているじゃないんだな。
人間関係が厚いヤクザを見て思わず笑みをこぼす。

「おい、ぼさっとしてないで早くお前も乗れ!
仲間がそれらしい車をもう見つけたみたいだから、
さっさと行くぞ!」
「はい!」

行くぞ! 少女を必ず助け出すんだ!
僕は心の中で意を決すると、
車の中に足を踏み入れた。





続く




さて、ハヤテはナギを救うことができるのでしょうか?
原作と違ったハヤテの超人ぶりをご期待してくださいw
このあとの話の流れとしては、sideハヤテ→ sideナギ →sideルカといった感じになります。

それでは、また。