[リストへもどる]
一括表示
タイトル夏休み特別企画 (2008/7/14〜8/10)
記事No93
投稿日: 2008/07/14(Mon) 00:26
投稿者双剣士
参照先http://soukensi.net/ss/
お題SSに取り組む前に、以下のルール説明ページに必ず目を通してください。
http://soukensi.net/odai/hayate/wforum.cgi?no=1&reno=no&oya=1&mode=msgview&page=0

なにか疑問などがありましたら、以下の質問ツリーをご覧ください。
そして回答が見つからなければ、質問事項を書き込んでください。
http://soukensi.net/odai/hayate/wforum.cgi?mode=allread&no=2&page=0

------------------------------------------------------------------

 夏休みの特別企画として、普段とは少々違うルールでの投稿を募集します。

1.取り扱うお題は、以下5つのうちから好きなのをお選びください。

   お祭り、バトル、女の子だけ、花火、ラブシーン

2.えっちな展開を認めます。ただし性交渉モロ描写はNG。

3.批評チャット会は雑談チャットの会場で行います。すなわち
   ・投稿してない方でもチャットに参加可能
   ・チャットにログインしなくても会話を閲覧可能
  ということです。

 さぁ、どんな人たちが集まるか楽しみです!

(注:このスレッドへの投稿では作者IDは発行されません)

タイトル真夏煉獄下ハヤテのごとく!:序
記事No96
投稿日: 2008/07/27(Sun) 22:11
投稿者絶対自由
 灼熱天下の海……それは、幾人もの男達をうならせてきた。勿論、一部だけ。
 海、それは魅惑のビーチ。
 夏と言えば海。何故ってそれが王道だから。
 だから海に来ている。其処に理由なんてあるかコノヤロー。

「だから勝負だ!! 綾崎!!」
 ぴちぴちの海水パンツを穿いた変態執事(ハヤテ比)、瀬川虎鉄は人差し指をハヤテに突きつけながら唐突にそう叫んだ。
「はぁ? 行き成り何を言っているんですか貴方は」
 ぴちぴちでは無いが、同じく海水パンツを穿いたハヤテは、突然の虎鉄のバトルの申し込みにそう答える。
「こんな急展開をして読者の方々が付いて来れると考えているんですか? 起承転結を考えてください」
 ついでにそう付け加える。
「そんな事は知ったことか。私が勝負したかっただけだ。幸い、此処には多数の執事が居る」
 ぐるりと見渡すと、まぁ、確かに、意味も無くお馴染みの執事集団が居る。何故此処にいるのか? とか、一斉に何故集まっている? とかそんな事を完全に無視した展開である。
「それに只勝負しただけでは物足りないだろう?」
 虎鉄の提案。
「それは確かに。……どうだろうか? この戦いに生き残れたら、一〇〇万円と云うのは」
 バラを片手に、海に来ても暑苦しい執事服を着る美青年、冴木氷室はそう述べる。その後ろで、その氷室の主である大河内タイガが花びらを、わっせ、わっせ、と投げている。
「なら私も。いい機会です、坊ちゃんも竹刀を構えてください。それに、勝った後の賞金で、さらに坊ちゃんを鍛えるための資金にしますか」
 その横から出てくる野々原楓はそう言う。じろりと視線はその後ろに控えている自らの主である東宮康太郎に向けられている。東宮康太郎は逃げようとするが直ぐに捕まる。
 その他もろもろと自らの意見を述べていく執事共々。その賞金やらフェラーリやらの高級品の購入金は、一体何処の誰が払うのかは謎である。
「ならば私は、勝ったら綾崎を貰う!」
 虎鉄は最後にそう述べた。
「断固断ります!
 というより、まだ僕が出るなんて言っていませんよ! 僕はこれからお嬢様に泳ぎを教えなくてはならないんです!」
 そんな言葉を飛ばし、ハヤテは背を向けようとする。
「逃げるのかい?」
 その背中に氷室は言葉を投げ掛ける。
「僕たち、一流の執事に負けるのが怖いのかい?」
 ……意外とこういう言葉にカチンと来るのか、負けられないと云う意地があるのかは不明だが、ハヤテはゆっくりと、正面を向く。
「……お嬢様、泳ぎの練習は今しばらくお待ちください」
 そして、後ろでさらさら泳ぐ気など無いハヤテの主、三千院ナギにそう言う。
「いいぞ。てか、そのまま戦っててもいいぞ」
 ナギはパラソルの下のテーブルに、S●NY製のPC、V●IOを設置する。完全に泳ぐ気など無い。
 その言葉を聞いたハヤテは、早く終らせてお嬢様に泳ぎを教えなくては! と思い、その無闇に殺気を放ちまくりの執事たちに突っ込んでいく。
「行きますよ―――――ッ!! 受けてみてください! 僕の必殺技をぉぉぉ!!」
「落ちろカトンボぉぉ!」
「ユニバァァァァァァァス!!!」
「武器の貯蔵は十分かぁぁぁぁ!!」
「これがモノを殺すと云うことだぁぁぁぁぁ!」
「魔が人に付くは天の試練! 消えろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 激闘開始! ばき、やら、ぼき、やら、轟! やらの擬音を駆使した戦闘が繰り広げられる。灼熱天下のなか、良くやるやつらである。

     ■■■

「男の子は元気ねー」
 腰に手を当てて、胸の比率に合わないビキニの水着を着用し、その上から上着を羽織っている少女、桂ヒナギクはそう言った。
「……何か今殺意が湧いてきたのだけれども、何故かしらね」
「気のせいだろ?」
 ナギが返す。
「何かね、体格のことを言われたような気がしたのよ」
 ヒナギクはぐるりと辺りを見渡す。体格に関する話題に敏感な生徒会会長である。
「やっぱり何か聞こえるわ」
「だから気のせいだって」
「気のせいなもんですか! 絶対に誰かが私の体格について語っているわ!」
「誰が語るんだ」
 ……いい具合にキャラが崩れてきた無敵の生徒会長桂ヒナギク。
 彼女の体格の成長が遅いのは恐らく、スポーツウーマンである彼女は、日々、トレーニングに勤しんでいるのである。その為に、身体の筋肉が引き締まり、胸に行く脂肪が燃焼されて、胸には肉が付かないのである。たぶんね。
「……」
 さて、つっこんだは良いものの、ナギも人のことは言えず。ふと、かくん、と視線を下に落とす。其処に広がっている平面、もとい洗濯板。それは彼女を落胆させるものである。あえて、流麗な曲線などと云う控えめな表現は使わない。
「なっ! そんなもの! ならヒナギクにも同じ表現を使えばいいではないか!
 見ろ! ヒナギクの説明欄には体格の喩えが全く無かったぞ!」
 叫ぶナギ。……さて、彼女は一体誰に叫んでいるのでしょうか?
「何を叫んでいるんですか? ナギ」
 荒れるナギに、後ろから優しい、まるで天使のような声が響く。
 ナギの世話を昔からしている有能美女メイド、マリアである。
「……なんやマリアさんだけえらいひいきしとるな」
「お、咲夜」
 現れたのは、回をおうごとに胸の大きさが大きくなっていく、簡単に言えばプロポーション抜群の少女、愛沢咲夜である。
「天使のような声ってどうよ?」
「さぁ」
 笑顔で返すマリア。
 さて、ナギの視線は相変わらず咲夜の立派なアレに向けられているわけであるが……
「……オマエ、一体何を食ってるんだ?」
「ほんの些細なパンとミルクや」
「嘘つくなブルジョワ」
「そんならナギも一緒やないか。寧ろウチよか金持ちやないか」
 む、と返すナギ。
 確かに、同じものを食べている筈である。いや、同じはありえないが、兎に角、三千院家は少なくとも愛沢家よりは金持ちである、ブルジョワである。
 不機嫌になっていくナギに、マリアは見かねて、
「ナギ、人は胸で決まるものではないのですよ? ハヤテ君なら(多分)気にしないと思います」
 そう言葉を掛ける。
「……マリアはいいよな。そんなに大きくないのに大きく見られて」
 ぴきり。
 ……地雷を踏んだ感覚。
「……はい?」
 マリアは精一杯の笑顔で返す。怒りマークが多分、見える。
 そんな事は知らず、ナギは言葉を繋げる。
「だってそうじゃないか。メイド服着ているときは結構大きく描かれているけど、実際入浴シーンとか見るとそんなにデカクないし、一六巻の入浴シーンでは一巻よりでかくなってたけどさ。大体、ファンの間ではお姉さんキャラだから胸は大きい、って定着されてて、同人誌では胸は超でかく描かれているしさ。挙句の果てにはヒナギクまで大きく描かれているのだってあるのだぞ?」
 ふるふると、震えるマリア。怒りか、それとも嘆きか……
 兎にも角にも、咲夜は何故か身の危険を感じて、少し、後ろに下がることにした。
「……私、大きく描かれているのあるんだ……」
 ヒナギクは密かにガッツポーズ。ま、それでも、本編では俎板には変わりは無いのだが……
「大体、大きいの基準が私には解らない」
 ナギはそう言う。
「DカップとかEカップとか云うけど、それってどれくらいの大きさのことを言うのかしらね」
 ふとした疑問をヒナギクが呟く。
 さて、ここらで新キャラを登場させよう。
「去年(時間軸上二〇〇四年)のデータによると、トップとアンダーの差が、一〇センチなのがA、二.五上がって、一二.五センチがB、それ以降はまた二.五ずつ上がるたびにC、Dと上がっていくそうです」
 後ろでこの場には似合わず、水着ではなく、薄での私服を着ている少女、春風千桜が眼鏡の変わりに度が入ったサングラスを付けてそう述べる。尚、何時も居る筈の霞愛歌は体調の不良を訴え、ホテルでお休み中である。
「あ、ハル」
 ヒナギクは千桜のほうを向く。それなりの大きさである。人並みである、水着でないのが無残にもその夢を壊している。
「……」
 無言で他所を向く。
「兎に角、そんな基準なのね」
「ええ」
 サングラスが気になるが、ヒナギクはあえて突っ込まないことにした。
「かっこいい」
 ナギだけは目を輝かせていた。
 と、其処に更なる登場人物。
「ヒナちゃ〜ん」
 御馴染み、生徒会三人娘、瀬川泉、花菱美希、朝風理沙が水着の格好で現れた。恐らく、いや、確実に海で遊ぶつもりなのであろう。日焼け止めを塗り、浮き輪にゴーグル、そしてビーチボールを持っている三人は今直ぐにでも海に走っていくであろう。
「ねぇ、ヒナちゃんも一緒に泳ごうよー。ちーちゃんも泳ごー」
 笑顔を振り撒く泉。その下には御馴染み、咲夜と同じ様に回をおうごとに大きくなる果実がぶら下がっていた。
「これは最早セクハラのレベルだな」
 ナギが溜息を吐く。
「ほぇ? 何が?」
 気付かないのか、気付かぬふりをしているのかは解らないが、取り敢えず、彼女の笑顔をご想像して、目の保養としていただきたい。
「ええい! 一体何を食べればこんなに大きくなるのだ!」
 指をびしり、と立てて、泉の胸を指す。咲夜は先ほどから身の危険を察知して居なくなっている。流石である。
「牛乳も毎日飲んでいるのに……」
 ヒナギクはそう呟く。今日は呟くことが多いヒナギクさんである。
「もめば――」
「駄目に決まっているだろがぁぁぁあああああ!!」
 理沙の提案にナギが直ぐに異を唱える。血行が良くなって大きくなると言うが、嘘である、多分。
「と、言うより、なんでこんな話題になっているんだ?」
 美希がとても尤もな疑問を放つ。
 ちらりと向こう側を見ると、数行の間忘れ去られている男子組み(執事組み)が戦闘を行っている。そして此方を向けば体格(胸)について語っている。……幾ら海とはいえ、こんなことをしていていいのであろうか? 否、駄目であろう。
「作麼生! 何故こんな話題になったのか!」
「説破! 何でもありだから」
 ……兎も角、少女達の苦悩は続く。


「私の胸って……大きいのですか?」


 密かにマリアは自らの胸を触って呟いた。


                         /続

タイトル真夏煉獄下ハヤテのごとく!:破
記事No97
投稿日: 2008/07/29(Tue) 23:38
投稿者絶対自由
 GONGを鳴らして始まった戦いは既に小一時間続いている。
 海では、遊んでいる女性陣。陸地であるビーチでは現在バトルが繰り広げられている。

「GONGならせぇ!!」
 意味不明な叫び声(奇声)をあげながら虎鉄が名も無き執事を飛ばしていく。
 既に名も無き執事は全滅であり、ビーチに残っているのは名前が付いている執事のみとなっている。……当り前だね。ありがちな展開だね。
 ふと、向こう側を見れば、海の近くで式をあげる新郎新婦。と、ぶっ倒れている東宮康太郎――
「見えるぞ、私にも、綾崎とあそこに立つ姿がぁぁぁぁあああ!」
 勢いそのままに、虎鉄の蹴りがハヤテを襲う。
「何気持悪いこと言っているんですかー! 日本じゃ同性婚は出来ませんし! する気もありません!」
 その攻撃をかわし、背中越しにハヤテはそう叫ぶ。
「大丈夫だぁ! オランダに移住するからぁぁ!」
 気持悪い笑顔を見せつつ、虎鉄は体をぐるりと回転させて、回し蹴りをハヤテに繰り出し、ふいを突かれたハヤテはそれを受け入れ、吹っ飛ばされる。同性婚が認められているオランダでの生活は、さぞかし楽しいだろう。
「楽しいわけあるかー!」
 ハヤテは叫びと共に、頭を砂浜から上げる。
「何を言うか! 素晴らしい日々が続くに決まっているではないか!」
 以降は、虎鉄君の妄想ですのでご注意ください。

     ■■■

 オランダの海辺……其処には大きな屋敷が建っていた。
 照りつける光は、朝の到来を伝えている。
「おはようございま〜す♡」
 私の目の前に居るのは、眩しすぎる、私の妻だ。とても眩しい! 素晴らしい!
「お寝坊さんですね〜、もう朝ですよ? 朝ごはん、冷めちゃいますよ♡」
 今直ぐに行こう。お前の手料理の為に私は命を賭けて其処へ行こう!
 オランダでの生活はとても充実しているものだ。これ以上の幸せは無いだろう! 神よ、こんな素晴らしい生活を有り難う! オランダよ、同性婚をありがとう!
 リビングは素晴らしい毎日が始まるスタートライン! 食事も素晴らしい!
「きゃあ!」
「どうした?」
「やけどしちゃいました」
「仕方ないな、ほら、水で冷やすんだ」
「はい……」
 全く、おっちょこちょいな君も好きさ。
 氷をビニール袋の中に入れて、暫らく当てていろ。
 数分後に、清潔なガーゼを巻いて、よし、これでいい。
「ごめんなさい」
「なぁに、君は私の大切な愛人(ラマン)じゃないか……」
 ふ、我ながら臭い台詞を……
 さて、そろそろ仕事に行く時間だ。
「いってらっしゃい」
 にこりと笑う我妻。うーん、素晴らしい。
「私に、行って来ますのキスをしてくれ……」

     ■■■

「逝ってらっしゃい!!!」
「ごふぉぉぉおおおおお!」
 妄想に浸っている虎鉄の顔に、ハヤテの蹴りがヒットした。空中でくるくると三回転ぐらいしてどしゃりと砂浜に顔を突っ込んだ。うわ、痛そ。
「中々面白い思考をする人だね」
「面白くもなんとも無いですよ! 只のへんたい! ヘンタイ! ドヘンタイ! じゃないですか!」
 氷室の面白い発言に、ハヤテは反論する。確かにまぁ面白いといえば面白い思考である。普通のまっとうな人生を送って来てる人か、生まれつきの趣味が無ければ出来ない発言である。別に同性好きを否定しているわけでは断じてないぞ?
「そこでなんだが……」
 氷室は徐に呟いた。
「そろそろこの物語の展開を解らなくして面白くするために、僕はそこの君の言うヘンタイとやら側に付くことにしよう。君がこの人と結婚した後の生活も見てみたいのでね。それに、協力したら何かと良い事がありそうだ」
 虎鉄の前に立つ氷室。
「は?」
「おおっ! いいだろう! 共に綾崎をモノにしよう!」
「いや、彼は要らないけどね」
 氷室は瞑っていた目を開き、ハヤテに襲い掛かる。速ッ!
 避けるハヤテに、今度は懐から取り出したバラが襲い掛かる。バラが何故そんなに高速で飛んでくるのかは永遠の謎として、バラはハヤテの頬をかする程度で済んだ。
 拙い、ハヤテの脳裏にその言葉が過ぎる。
『こんな時こそのあの必殺技なんじゃないのか……』
「うお! 神父さん! 居たんですか!?」
『海に行くと云うことでな、水着を拝めると思ったのだが……皆スク水を着ていないでは無いか!』
「知りませんよ!」
 叫ぶハヤテ。
「何独りごとを言っているのかな? 気を抜くと……」
「!」
 気が付くと氷室のバラが四方八方に展開されていた。
「これは……!」
「ゲート・オブ・バ●ロン!」
 一斉掃射。もう何でもありだな、と云うツッコミを無視した攻撃である。まぁ、一番は物理法則を無視しているような気もしなくは無いが……と云うより、ゲート・オブ・バ●ロンは剣とかの武器じゃありませんでしたっけ?
 そんな事は御構い無しに、無数のバラがハヤテを襲う。
「っ!」
 一つを避けるのは容易い。しかし、数が増えるごとに避けるのは難しい……当然ながら。
『だから、あの技、Bダッシュアタックを……』
「……っ!」
 決めるのなら今だ。そう言わんばかりに、ハヤテは足を地面に強く叩きつけ……
「疾風の――」
 如く。
 跳んだ。
 ほう、と感心する氷室。その余裕。
「確かに強力な必殺技のようだが……動きが単調すぎる」
 躱された……ハヤテは目だけで氷室を追う。
「そして――」
 地面に再び足を付くハヤテ、しかし、
「体への負担と反動、そして何より隙があると……」
 瞬時にハヤテの目の前に現れた氷室の蹴りを、腹に受けた。
「ぐあっ!」
 必殺技の使用で体が痺れている中、氷室の蹴りを受け、宙に浮くハヤテ。
 ぶれます。ええ、ぶれてます。軸ごと。左右横揺れプラス氷室に吹っ飛ばされたハヤテ。そのまま一気に海に……ドボン。

     ■■■

「きゃっ!」
 海でボール遊びをしていたヒナギクの遥か上を飛び越え、ハヤテは海に落っこちた。
「ちょっと! 大丈夫ハヤテ君!?」
 沈んでいくハヤテが、浮かんでくる。
 影が……二つ。

「「いたた、大丈夫です、ヒナギクさん」」

「……………………私の目がおかしくなったのかしら」
 頭を抱えるヒナギク。
「どうしたんですか? ヒナギクさん」
「どうしましたか? ヒナギクさん」
 どう見ても、ハヤテが二人。

 海から姿を現したハヤテが二人だったのに驚く一同。
「マリア! 私の目がおかしくなったのか!?」
「いえ……私にも視えますけど……ハヤテ君が二人」


「さて、ハヤテが分裂したわけだが……何か言う事は無いか?」
 腰に手をあて、ホテルに一旦戻り、服を着てきたハヤテにナギは言う。分裂したハヤテは、水着も仲良く半分こだったわけで、半分を失った水着がどうなるかは言うまでもない。
「えーと、僕はどうやったら戻るんでしょうか?」
「えーと、私はどうやったら戻るんですか?」
 其々答えるハヤテ。
 ……片方が男で、片方が女……と考えるしか無いのだが。
 片方は表向きの綾崎ハヤテ。そしてもう片方が、今まで散々女装させられ、女言葉を使わされたときに生まれてしまった綾崎ハーマイオニー……
「と、云う訳だな」
 まぁ……
 と、一同が考え込む中、
「ハヤテ様」
 と、かすかな声がした。
 綾崎ハヤテの方が、そのかすかな声に振り向く。と、其処には何時の間にか鷺ノ宮伊澄が立っていた。確か用があると言ってホテルを出てからは別行動だった筈である。盛大に迷子になったのだろう、此処に辿り着いたのは奇跡だろう。
「伊澄さんどうしましたか?」
「この辺りに強い霊が出たのですが……もしかしたらあの分裂したほうのハヤテ様かもしれません」
「ええっ! そうなんですか?」
「はい。恐らく」
 気付かれないように声を小さくして会話をするハヤテと伊澄。随分お約束な展開になってきたな、と思った君、正解だ。
 ハヤテは再び振り向き、自らの分身を見る、と、

「あれ? ……僕が居ません」

 見事に消えていた。


                              /続

タイトル真夏煉獄下ハヤテのごとく!:急
記事No98
投稿日: 2008/08/08(Fri) 10:15
投稿者絶対自由
 奪取された綾崎ハーマイオニー。
 そして二つに分かれたハヤテはどうなるのか!? そして、そんな彼らを見つめる一人の人影とは!

「いやいや、何前回までのあらすじを述べているんですか!」
 誰に言っているのか解らないが、ハヤテそうツッコむ。
 兎にも角にも、消えてしまった綾崎ハーマイオニーを探さなくてはならない。犯人はまぁ、予想は付くが……
「虎鉄さんですね」
 ご名答。
 あの変態執事は、あろう事か周りの目を掻い潜って綾崎ハーマイオニーを奪取したのである。なんと云う執念だろうか……
「兎に角、僕は虎鉄さんを追います! まだそう遠くには行っていないと思いますから! 伊澄さんは元に戻す方法を――!」
「あ、ハヤテ様……」
「大丈夫です! 僕の足なら――!」
 伊澄の言葉を無視してハヤテは跳ぶ。
 刹那、
「うわっ!」
 目の前のテントに豪快に突っ込んだ。
「……二つの人格と体……分かれてしまった訳ですから、当然、能力も半減しています」
「そ……そうですか……気をつけます」

     ■■■

「ははははははははははははははははははははははははは!!!!
 やったぞ! 私はついに綾崎を手に入れたぁぁああああ!」
 有頂天になっているザ・変態執事虎鉄は、満面の笑顔で綾崎ハーマイオニーを連れて走っていた。それを見つめる周りの男性(二〇代の方々中心)は、その綾崎ハーマイオニーに見とれていた。流石。それが男とも知らずに……
 それも当然、虎鉄は攫った直後に、綾崎ハーマイオニーに、前々からハヤテに着せようと考えていた自らの趣味丸出しの女の子用の服を着せていたのである!
 先ほどまで綾崎ハーマイオニーは悲鳴をあげていたが、今では大人しい。
「ふふふふふふふふふふ! この後、飛行機に乗ってオランダに行くぞぉ!」
 高々と野望を叫んだ虎鉄。飛行場は何故か目の前! ハヤテは間に合うのか!? それとも、綾崎ハーマイオニーは虎鉄のものになってしまうのか!


「させるかぁぁああああああ!」
 ハヤテは走っていた。通常の二分の一の速さで走っていた。目の前に虎鉄の姿などない。髪の毛の先も見えない。てか人が多い。この人ごみの中なら、本来は走るのが難しい筈である、プラス、浜辺なので足をとられるはずである。
 半分になったハヤテの能力。それは余りにも大きすぎる喪失であり、体力も半分であった。
「はぁ――はぁ――、暑い……」
 さらに夏の太陽である。体力を著しく消費していくのを感じる。
「なんとかしないと……」
 ふと、足を止めて海を見る。
「あれは――」
 水上を走る水上バイク。


 勝利(?)を確信していた虎鉄の目に飛び込んできたのは、水しぶきを上げて此方に近付いてくる水上バイク――それが普通の人間なら、此方に近付いているのだろうと考えるのであろうが、乗っている人間が乗っている人間である。果たして、水上バイクを運転しているのはハヤテであった。
「虎鉄さん! 追いつきましたよ!!」
 ハヤテが動かすマシンは、海においてよくレンタルマシンとして貸し出ししているポピュラーな水上バイク、YAMAHAエキサイター1430R――その白いボディのマシンが、ハヤテの操縦によって、今、風になっていた。
「くそッ! 卑怯だぞ綾崎!!」
「知りませんよ! それに、その僕を返して下さい!」
「誰が渡すもんかぁ!」
 虎鉄は足のスピードを上げる。それに伴い、ハヤテもまた、エキサイターのスピードを上げる。
 轟、と水しぶきを上げ、一気にスピードが上がる。水上バイクの利点はスピンターンが容易に出来、回転の半径が小さいことにある。つまり、スピードに似合わず小回りが利くと云う事である。だが、その半面、一歩操作を間違えれば、スライドし落下する。しかも、船と違い外装に覆われていないために、衝撃はダイレクトに搭乗者を襲う。
 だが、その辺りスピードをキープしつつ、周りの人間に迷惑が掛からないように外側を走っているハヤテは流石といえる。
 距離は縮まる。どうやらこの様なものを扱う技術は此方のハヤテにあるようである。
「ええい!」
 虎鉄は舌打ちをする。
 飛行場が先程よりも遠く感じる虎鉄。このまま走っていけば、滑走路なんぞに行く前に捕まるであろう。
「……捕まってたまるか! 私は幸せな日々を過ごしたいんだぁぁぁぁあああああ!」
 なら如何します?
 あ、丁度タイミングよくバイクなんかありますけど。
「はははははははッ! 神は私を見放しては居なかった!!」
 ジャンプしてそのバイクに乗る虎鉄。一体誰のだか解らないが、ご丁寧にキーまで付いている。
 うなるエンジン。OHV、V型ツインエンジンが齎す独特の鼓動音は、幾人のバイク好きをうならせてきた。だが、今、虎鉄がまたがったこのバイクは、このバイク初、水冷DOHC Vツインエンジン――レボリューションエンジン――を搭載したマシン……
 ハーレーダビッドソン・VRSC。
 馬力よりもトルクを重視しているこのハーレーは、高出力なバイクではない。ノーマルで五〇から八〇馬力ほどのこの機体は、さほど高出力とは言えない。
 だが、虎鉄にはそんな事はどうでもよかった。海から上がったハヤテが此方に辿り着くことは不可能である。まして、幾ら低出力とはいえ、人の足ではハーレーに辿り着ける筈もない。


「しまった!」
 ハーレーにまたがった虎鉄を見、陸に下りたときには、既に虎鉄はいなくなっていた。
「……ハーレーはそんなに高出力ではない筈、今なら間に合うか……?」
 しかし、今この場に放置されているマシンはホンダ XR650Rのみ。これは六〇馬力ほどをもつものであるが、ハーレーには及ばないと思える。
 ナギにバイクを……と思うがしかし、ナギは向こう側。直ぐに追っては来ないと考える。
 こうしている間にも、自らは虎鉄に連れられ、遠くへ行っている。一体飛行場まで何キロあるか解らないが……先ほどから目の前、目の前と説明しているワリには遠い気もするが……
 そんな事を悩んでいると、
「……あーあ、お嬢様達は私の事なんか忘れているのでしょうね……気になって着いて来たんですけれども……はぁ」
 ベストタイミングで、落ち込んでいるクラウスを発見した。
 その傍らには……
「これなら!」
 その叫びに気付いたのか、クラウスがハヤテを見る。
「綾崎、お前こんな所で何を……」
「すみません! このバイク、貸してもらいます!」
「なに? おい!」
 答えを聞くまでもなく、ハヤテはヘルメットを被り、そのマシンに乗った。


 異変に気付いたのは、数分経った後だった。
「――?」
 響く駆動音。そして、現れた。
「な――!」
 それは化け物か……その速度に一瞬虎鉄は我を忘れた。
 それもその筈。その機体は先ず、数メートルにも及ぶ距離を一〇秒台で駆け抜けた。そしてその黒いボディ……
 ハヤテがクラウスから借り受けたマシンは、クラウスの手によって、そして何人もの三千院家のメカニックによってチューンにチューンを重ねたモンスターマシンと化して居た。
 ベースになったマシンは、一九八五年より、日本がリリースした当時最高出力を誇っていたモンスターマシン、ヤマハ・V‐MAX。Vブーストシステムにより無理矢理力を引き出し、その馬力は一四五馬力と、バイクの中では最高峰。
 そんなモンスターマシンが、チューンにより、さらなる怪物へと変貌を遂げていた。
 スピードを上げる。しかし、虎鉄の操るハーレーに近付く黒きマシン(魔神)の脅威は消えない。
 轟、うなりをあげてV‐MAXが更にスピードを上げる。
いや、まだだ! まだコーナーが残っているし、それにあの速度でもこちらに来るのにはまだ時間が……
 と考える刹那、虎鉄の頬を何かが掠めた。
「は?」
 虎鉄は狙撃されていた。
「ぬぉぉおおおおお! ソレは銃刀法違反!」
 ハヤテが片手で持っていたのは、レミントンM40と呼ばれるアメリカで制作された民間用の狙撃ライフルを軍用に改造したM700の更に改良型である。弾丸は厳選されたものを使用し、光学式一〇倍固定のスコープを搭載。最大射程は九一五メートルを誇る。良好な射撃性能があり、海兵隊のみで使用されている民間では手に入れることは出来ない代物である。
 音をたてて、七.六二ミリNATO弾が放たれる。
「降参してください――! いい加減にその僕を返してください!」
「くそ! こんな所で……」
 捕まってたまるか、といわんばかりに虎鉄はアクセルを全開にするが……
「無駄ですよ!」
 V-MAXの前には成す術もなく、虎鉄は捕まった。

     ■■■

 そろそろオチである。
 起承転結や展開の意味を全て無視したようなこの番組にも、一応オチだけは付けておこうと云うことである。

 ハヤテが元の浜辺に戻ってくる頃には、そろそろ日が傾こうかとしている頃合であった。
 一刻も早く、伊澄に頼んでこの二つの体を一つにして貰わなくてはならないのである。
 漸く向こう側にマリアやその他多数が見え始めた頃合、向こう側も此方に気付いたようで、視線がハヤテに向く。
「ハヤテ君! 大変です! ナギがさらわれました!」
 ……本当に、お約束の展開である。
「お嬢様が!? ……と云うより、こんなに執事がいるのに何をやっていたんですか!」
 ハヤテは執事一同を眺める。
「……人はね、暑さと飢えには耐えられないのだよ……」
 カレーを口にする氷室がそう言った。理由になっているのかなっていないのか……
これは一刻も早く体を元に戻して、お嬢様を助けに行かないと……
 辺りを見渡すハヤテ。が、しかし、そこには目当てである伊澄の姿は無かった。それどころか、他の人間も大半がいないような気がして……
「あ、さらわれたのはナギだけではなくてですね、他の方々も何人かさらわれまして……」
 マリアの言葉に、ハヤテはうなだれる。本当に良いタイミングでお金持ちのご令嬢さんプラスお坊ちゃん達はさらわれるのである。
「えっと、さらったのは一体誰ですか?」
 この番組の二行目ぐらいにソレっぽい描写がありましたけどね。確実に誰かが見ていたと云うわけでして、そして、その当の本人は、そのまま連れて逃げ帰れば良いものの、態々ハヤテの目の前に姿を現した。

『ははははははは――――ッ! 久しぶりデスね! 綾崎ハヤテ!!』

「その声は……!」
 皆さん、お忘れでしょうが、愛沢咲夜の兄である、ギルバートであります。
 ギルバートは背中にまるで鳥かごの様なものを取り付けたメカに乗っており、その檻の中に、ナギ達一部女性陣プラスお坊ちゃま達が入っていた。流石の生徒会長さんも、メカのようなものには勝てなかったようである。当の本人は、震えているが。
「此処……結構高いのよ……!」
 桂ヒナギクは高所恐怖症です。
「借金執事! はよ助けや!! そのアホ兄貴は殺してもかまへん!」
 咲夜が叫び、後ろの生徒会三人娘が、やっほー、と危機感をまったく感じていないかの様にハヤテに手を振る。千桜は大人しく、座っていた、サングラスだけを光らせて。タイガと東宮康太郎だけは、涙を流して自らの執事の名を呼んでいた。
「それより、何故貴方が此処にいるんですか!?」
 元来、その様な事を問われて返すような間抜けは、いないのであるが、ギルバートは親切にも、細かに詳細を説明してくれた。
『ワタシは貴方方に敗れた後、体を鍛えるために、水泳を始めマシタ! そしてそこで新たな力を手に入れたのデース!
 これからちょっとライバルを倒しに行くのデスが! 肩ならしにオマエを倒してやります!』
 メカから下りるギルバート。確かに、筋肉の付き具合が違うように見えるが……果たして、その実力は……?
「ハヤテー!」
 後ろの籠ではナギが叫んでいる。……ならば遣るべき事は一つだ。
 それは……幾ら分身といえども、別の人格といえども、綾崎ハーマイオニーも同一であろう。彼(?)もまた……同じ綾崎ハヤテなのだから……
「それと、ギルバートさん、一つ忘れていませんか?」
 ハヤテとハーマイオニー、二つのハヤテの、今考えていることは一つ――ナギを救出すると云う事だけ。
「何をデスかー?」
 ギルバートは黒いオーラを出しつつ、ハヤテの言葉に耳を傾ける。そこには自身のみが存在する。余裕の表れである。


「今この場には……一体何人の執事が居ると思っているんですか?」


 …………………ギルバートの表情が変わった。
「倒せると思っているんですか?」
 後ろでは、既に伊澄や、咲夜の執事が準備万全とばかりにスタンバっていた。
「まぁ、このままにすると僕の金ズルが居なくなるんでね……」
 バラの花びらを散らせ、氷室が立ち上がる。
「坊ちゃん! 私は此処で見ていますから! 自分で頑張ってみてくださいね!!」
 野々原はそう言うが、一応竹刀を持っているので助ける気はあるようである。
 そして、何時の間に追いついたのか、クラウスまでもが袖とネクタイを調えながら立っていた。
 ついでに、何時蘇ったのか、虎鉄も既に戦闘体制に入っていた。
「お嬢〜、楽しそうなところ悪いが、取り敢えず其処からは出てもらうぞ」

 ………………ギルバートはメカに再び乗ろうと背中をむく。
「勝てるわけアリマセン―――ッ!!!!」
 それが仇になったのか……次の瞬間にはギルバートは全ての執事の一撃のもとに、散った。

     ■■■

 元に戻った体を見て、ハヤテは安堵の溜息を付く。
「ありがとうございます、伊澄さん」
 ぼそりとハヤテは伊澄に耳打ちする。
「たいした事もなくてよかったです。それに、ハヤテ様のもう一人の方も、よく此処まで拒絶せずに一つになってくれました……」
 それは、単に二つに分かれても、大切に思う気持ちには変わりはなかったからではないのだろうか……と思う。
 取り敢えず、救出した人間は一足先にホテルに戻っている。ギルバートはと云うと、メカも完膚なきまで、破壊されてしまったので、泳いで何処かへと行ってしまった。その辺りは水泳の成果が出ているようだ。
 さて、と思い、ハヤテはナギの待つ所へと歩き出す。伊澄の要望で、ナギに一つに戻すシーンは見せたくないとのことでして……
「遅いぞ! 何をやっていたのだ!」
「いえ、元に戻る前に少し自分とお話を……」
 適当な言い訳を付け、ハヤテは笑う。ナギも、ま、いいか、と呟いて、歩き出す。
 此処に、大騒動の一日が終わりを告げた。



「そういえば、何故マリアさんはギルバートさんにとらえられなかったんでしょうかね? 一応メインヒロインですよね?」
「さぁ? キャラ的にというか、それとも見た目か……年齢か……」

「―――――――〜〜〜〜〜!」

 ナギの後ろで、笑顔なのに震えているマリアさん。
 取り敢えず、二人のラスボスはマリアさんと言うことで……
 ついでにホテルには、腹黒生徒会副会長も待ち受けているわけでありまして……
 まだまだ、彼らの一日は終らなさそうです――


                              /了

タイトル夏夜のジェラシー (未完成、批評対象外)
記事No99
投稿日: 2008/08/10(Sun) 20:44
投稿者双剣士
参照先http://soukensi.net/ss/
 体調不良のため期限までに完成させられませんでした。
 途中までで申し訳ありませんが、参加してくださった方に
少しでも報いるため出来たところまでを公開します。

------------------------------------------------------------

「ワタル君、花火を見に行きませんか?」
 それは真夏の昼下がり。1人でビデオ屋の店番をしていた橘ワタルのもとに、にこやかな笑顔を浮かべた
修道服の女性が姿を見せた。ビデオ・タチバナの常連でありながら本編では2年間も出番のない、
シスター・ソニアその人である。
「花火って?」
「今夜、郊外の川辺で花火大会をやるんですよ。一緒に見に行かない?」
「ごめん無理。ここの店番もあるしさ」
「そう言わないで。今夜は私の故郷から持ってこさせた、ギリシャ風の花火も上がることになってるの。
ワタル君にもぜひ見てもらいたくて」
 そういって有料席のペアチケットを差し出すソニア。ぎょっとした様子で顔をこわばらせる少年の動揺を
見透かしたように、ソニアは柔らかい表情で言葉をつないだ。
「2枚あげるから、誰か誘って、ね♪」
「え、いいの? 2枚ももらって」
「ええ」
 自分とのペアチケットだなんて下心を丸出しにしたら彼は受け取ってくれない。年下の少年の警戒心を
弱めるためには仕方のない妥協だった。とにかくこのビデオ屋から少年を引きずり出して、自分のテリトリーに
誘い込まなくてはならない。暗いうえに皆が空を見あげている花火会場まで連れ出してしまえば、あとは
どうにでもなる。あのポンコツメイドを出し抜くくらい赤子の手をひねるようなもの。
「今夜かぁ……」
「いいでしょ、ねっ♪」
 ワタルの脳裏に幼馴染の和服少女が浮かんでいるとは露知らず、シスター・ソニアの熱烈アプローチは
どんどん熱を帯びていったのだった。


 そして夕方。早めに店を閉めて花火会場へと向かうワタルの横には、あでやかな着物に身を包んだ
若い女性の姿があった。ワタルの望んだ相手とは微妙に違うが。
「若ぁ〜、もっとゆっくり歩いてくださいよぉ〜」
「なんだよ、そんな暑苦しい格好してるからだろ。普通の浴衣とか着てくればよかったのに」
「だってぇ……」
 危なかしい足取りでトテトテとついてくる貴嶋サキが着ているのは、成人式の後でワタルに買って
もらった振袖。せっかくのお出かけに思い出の一品を着て行きたいという乙女心は分からなくもないが、
どう考えても真夏に着て出歩く服装ではない。着重ねた和服の重さと暑さに振り回された20歳の
メイドさんは汗だくのフラフラ。
「せっかく……若が……誘って……くれたんですから……」
「あぁもう、世話が焼けるな、まったく」
「すみません……」
 立ち止まって手を差し伸べてくる少年と、ふらつきながらその手に掴まる年上の女性。そしてまた
2人の影が離れ、先を行く影が立ち止まる形でまた1つになる。夕日に照らされた2つの影は、まるで
尺取虫のように間隔を伸び縮みさせながら川辺の方へと向かっていったのであった。


 だが、そんな微笑ましい情景も、長くは続かない。
「あら、こんばんは、ワタル君」
「よぉ、ねーちゃん」
 ワタルに向かってにこやかに手を上げる女性。季節外れではない夏向けの和服、それもお金持ちらしい
豪奢な柄の入った浴衣を着こなした長髪美人の登場に、サキの眉がわずかに吊りあがる。
「あの……若?」
「ほら、こないだ話しただろ、同じクラスになった愛歌さん」
「こんばんは、ワタル君にはいつもお世話になっています」
「あ、あぁいえ、こちらこそ……」
 完璧な仕草で一礼する愛歌につられて頭を下げたサキ。しかし顔を上げた瞬間、長髪美人が浮かべた
意地悪っぽい笑みが目に飛び込んできた。同じ和服を着ていながら場違いで季節外れな振袖を着ている
自分を嘲笑しているような、女同士だからこそ伝わる見下しの視線。もちろんワタルはそれに気づかない。
「ねーちゃんも花火を見に?」
「ええ、今日は体調もいいしね……それよりワタル君、隅に置けないじゃない。伊澄さんのこと好きだって
言ってたのに、こういうタイプも好みなわけ?」
「ちょ、な、違うって! サキはそんな、そういう仲じゃ……」
「照れない照れない♪」
 ドSな性格の愛歌が面白半分に挑発していることなど貴嶋サキは知らない。彼女の目に映るのは
年上の女性にからかわれて顔を真っ赤にするワタルの姿と、会話の流れで出てきた『サキとは
そういう仲じゃない』という彼の台詞。振袖の暑さが一気に増したように頭に血が上り、クラクラと
身体が泳いでしまう。
「それじゃワタル君、またね」
「あぁ、またな……あーあ、やっぱり愛歌さんって美人だよな〜、そう思わねーか、サキ?」
「知りません!」
 無邪気な少年の問いかけに対し、貴嶋サキはぷんすかとそっぽを向いたのだった。


 その後も和装のメイドさんをイラつかせる事態は続く。

「あ、橘せんぱ〜い、こんばんは」
「よぉ、日比野じゃん。あれ、そっちは……」
「見てくださいよ、シャルナちゃんの格好! インドではこのサリーっていう衣装を、公式な場所では
着るんですって! 綺麗ですよね〜」
「そんな、文ちゃん、恥ずかしいから……」
「ふ〜ん、それがインドの民族衣装か。すげー似合ってるじゃん」
「あ……ありがとうございます……」
「う〜、ずるいです橘せんぱい、私は私は?」
「ん、日比野の浴衣もまぁまぁなんじゃねーの? こういう場所では見た目って3割増しになるって言うしさ」
「ひっどーい!」
「あの、ところで先輩……先輩と一緒にいる人、あれが日本の正式な民族衣装なんですか?」
「え?……ああ、あれは間違い、間違い。本当はこんなとこに着てくる着物じゃねーんだ」
「……#(ぶちっ)#……」

「わったるく〜ん♪」
「なんだ、部長も来てたのか」
「ふむ、部長に会えると分かってたら、巫女服でも着てサービスしてやるんだったな」
「いらねーって!」
「(イライライラ)」
「ねーねー、どうかな? 私たちの浴衣」
「苦しゅうない、近う寄るがいいぞ。うら若き女子高生3人の浴衣姿を堪能できるなど眼福であろうが」
「それともあれか? ぶっちゃけヒナの身体しか興味ないとか?」
「そんなんじゃねーって! からかうのもいーかげんにしろよな、ねーちゃんたち」
「きゃはは♪」
「(イライライラ、イライライラ!)」


《なんですか、若ったら! 年上の女の人にばっかり声をかけられて、だらしなく鼻の下を伸ばしちゃって!》
 サキの苛立ちは頂点に達していた。飛び級で高校生になったワタルにとって、知り合いが年上だらけ
なのは当たり前といえば当たり前なのだが……暑さと怒りで茹で上がったサキの脳味噌にはそんな常識は
通用しない。
「おい、なに怒ってんだよサキ」
「怒ってませんったら!」
 ずかずかと肩を怒らせながら歩き続けるサキ。いつしか前後関係は逆転し、早足で歩くサキのことを
ワタルが追う体勢になっていた。なんで先を急ぐのかはサキ自身にも分からない。もたもたしていたら
知り合いに呼び止められる、また不愉快な光景を見せられる……そんな強迫観念に駆られての行動である。
当然ながら前なんかロクに見ちゃいない。
「サキ、そんなに急いだら転ぶ……」
「きゃっ」
 後を追うワタルが注意するも、一瞬遅かった。周囲の人の注目が集まる中、路面に転がったサキは
両手を突っ張って上体をあげると……大声を上げて泣き出した。
「うわああぁぁ〜ん!!!」


(ここからクライマックス……なのですが、残念ながら間に合いませんでした)

タイトル夏休み特別企画・批評チャット会ログ
記事No100
投稿日: 2008/08/11(Mon) 06:09
投稿者双剣士
参照先http://soukensi.net/ss/
 8月10日に開催された、夏休み特別企画のチャット会ログを公開します。
 今回は特別企画ということで、作品投稿していない方でもチャット会に
参加できるよう、雑談チャットのほうで批評会を行いました。投稿作品は
絶対自由さんの1本だけでしたけど、その割には細かいところまで
突っ込みを入れられる濃密な時間が過ごせたんじゃないかと思います。
 投稿してくださった少数の方の作品が読んでるだけの多数の方から
集中砲火を浴びる、という図式は危険をはらむものでしたが、今回は
作者読者ともに満足度が高かったことも収穫。あまり警戒する必要は
なかったのかも知れません。
 あと、管理人たる私が投稿期限に間に合わせられなかったのは大きな
反省材料です。

http://soukensi.net/odai/chat/chatsp02.htm