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タイトル第17回お題:秋 or 写真 (2008/10/6〜11/2) ←批評会はオープン参加
記事No111
投稿日: 2008/10/06(Mon) 00:09
投稿者双剣士
参照先http://soukensi.net/ss/
お題SSに取り組む前に、以下のルール説明ページに必ず目を通してください。
http://soukensi.net/odai/hayate/wforum.cgi?no=1&reno=no&oya=1&mode=msgview&page=0

なにか疑問などがありましたら、以下の質問ツリーをご覧ください。
そして回答が見つからなければ、質問事項を書き込んでください。
http://soukensi.net/odai/hayate/wforum.cgi?mode=allread&no=2&page=0

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今回からお題の掲示期間が2週間に短縮されました。ご注意ください。

今回のテーマは「秋」と「写真」のいずれか好きなほうをお選びください。
芸術の秋、スポーツの秋、食欲の秋……といった定番テーマに「写真」という
思い出要素まで含む、特別企画を別にすれば幅広さ随一のテーマです。
これでネタが見つからないとは言わせませんよっ!


【条件1】
 以下2つのキーワードのいずれかを、物語の展開に組み込むものとします。
   (1) 秋
   (2) 写真

【条件2】
 オリジナルキャラは登場可能ですが、あくまで名無しの脇役に限ります。
(たとえばコスプレ会場のカメラ小僧とか、食堂のウェイトレスさんとか)

【条件3】
 えっちなのは禁止です。

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△10/19 追記

 六角坊さんからの投稿をいただきましたが、残念ながら六角坊さんはチャットには
参加できないとのこと。作者限定チャットにおいて唯一の作者が不参加というのでは
管理人の1人語りになってしまい、当サイトに投稿いただいた意味がありません。

 そこで期限を2週間延長し、11月2日(日)まで投稿を受け付けるものとします。
 そうすれば投稿も増えるかもしれませんし、次回はオープンチャットになりますので
六角坊さんの参加が無理でも他の方からの批評をいただくことが可能になりますから。

タイトルガンプラ教師誕生!
記事No112
投稿日: 2008/10/19(Sun) 19:00
投稿者六角坊
(10/26前文をちょっと修正)
「ゆきヤミ」の六角坊です。この掲示板には初投稿となります。
内容はタイトル通り、薫先生の話です。よろしくお願いします。




SS「ガンプラ教師誕生!」

「白皇学院?マジで?あんたにゃ無理でしょ」
居酒屋のカウンター席で、雪路は信じられないという顔をした。
俺が白皇学院の教員採用試験を受ける、と言った後の反応である。
私立白皇学院は良家の子女が通う伝統ある名門校。
名門であるから、教師にも高いレベルが求められるというウワサである。
だが俺の希望する条件に合う学校は、この白皇学院しかなかった。
「うるせーな。近くの学校で体育教師の採用、白皇しかなかったんだよ」
「ふーん。なんで近所にこだわんの?」
「それは――ら、楽だからだよ」
近い方が楽、それも理由の一つである。
だが最も大きな理由は、目の前にいるこの女と大きな関わりがある。
むろん、本人にそんな事が言えるはずもない。
「ま、せいぜいがんばりなさいよ。もし受かったら何かお祝いをあげるわ」
雪路は焦る俺に訝しげな視線を向けたが、俺に励ましの言葉をくれた。
「まあ無理だろーけどねー。うけけけけ」
チューハイを飲みながら、雪路は奇妙な笑い声を立てた。
明らかに、受かるとは思っていない様子だった。

数日後。俺は慣れない背広を着て、白皇学院の前までやって来た。
(うわー・・・やっぱすげーな、白皇学院って)
校門の前で、俺は驚嘆せざるを得なかった。
視界に広がる荘厳かつ巨大な建築物の数々。
別世界に迷い込んだのではないかと、と錯覚してしまいそうだ。
その中でも、天高くそびえる時計塔はひときわ目立つ。
あれが出来たのは確か、雪路が借金返済に明け暮れていた頃だった。
「こちらへどうぞ」
「はい」
筆記試験は、思っていたよりも簡単だった。拍子抜けである。
問題は面接のほうだ。面接試験は、この学院の理事長と一対一。
(やばい・・・すげー緊張してきた)
用意された椅子に座り、俺は身を固くして待つ。
俺の不安はガスを入れ始めた気球のようにどんどんふくらんでいった。

白皇学院理事長の葛葉キリカは、これでもかというほど着飾った派手な女だった。
学校案内にグラビアが載っているのを見た時、俺は度肝を抜かれたものである。
したがって、普通ではない事をすでに知っていたが、実際に会うと改めて驚きを隠せない。
「薫京ノ介です。よろしくお願いします」
「ん。座れ」
「失礼します」
偉そうな態度(実際偉いのだが)だな、と思いつつも、俺はおそるおそるパイプ椅子に座る。
緊張している俺とは対照的に、理事長は面接試験の場にも関わらずとてもリラックスしていた。
イチゴの乗ったショートケーキを食べながら、紅茶をすすっている。
(って、オイ!なんで今ケーキ食べてるんだよ!)
思わず立ち上がって叫びそうになった。
面接試験中にいったい何をやっているのだ、この女は。
「しばらく待っておれ」
ケーキを咀嚼しながら、理事長は上から目線で俺に言う。
理事長が食べ終わるまで、俺はじっと待つ。
なんという非常識。なんという傍若無人。
初対面だが、この女が俺の苦手とする要素で構成された人物である事は、手にとるようによく分かった。
しかし、小心者の俺に逃げるという選択肢は無かった。就職浪人はまずいのだ。

ケーキを食べ終え、理事長はこちらに向き直った。
口元のクリームを傍らの執事が拭き取る。
執事はカップや皿をトレーに乗せて、理事長室を出て行った。
「ふう。待たせたな。私は甘いモノが切れるとダメな体質なのだ」
(どういう体質だよ)
「えーと、薫京ノ介、か――」
理事長は自分の机に置かれていた俺の履歴書を手に取り、じっと眺めた。
「はっ・・・つまらない経歴だな」
理事長は冷たく言い放った。俺は太い槍を突き刺されたような気分になる。
かなりの精神的ダメージ。
まあ実際、すごい実績があるわけではないが――そこまで言うか。
「もっと愉快な過去はないのか。昔は湘南で暴れていたとか」
この女は、高校の教師に何を求めているのだろう。まったく理解できない。
「ふん、まあよい。趣味・特技は・・・プラモデル?体育教師志望なのにか?」
(しまった・・・)
俺は大学で体育教師の免許を取った。
運動神経抜群だったわけではないが、昔から丈夫なのが取り柄で、勉強より運動が好きだったのである。
しかしそれ以上に俺は、プラモデルが大好きだった。
だが何かスポーツを書いておけばよかった、と後悔する。今さら遅いけれど。
「プラモデル・・・やはりガンプラか?」
「え?は、はい」
なんと、理事長がプラモデルに食いついた。
「私は赤い彗星のザ○が好きだが・・・好きな機体は何だ?」
それからしばらく、ガ○ダムの話が続いた。

しかしガ○ダムの話が終わった後は、延々と理事長の一方的な罵倒だった。
履歴書に貼った俺の写真がダメ、実物はもっとダメ、着ている背広が安っぽい、等々。
大きなお世話だ。緊張以外の理由で、体が小刻みに震えた。
正直、こんな理事長のいる学校で働くのはイヤだと思う。
だが、選択の余地はないのが辛いところだ。
「ところで――話は変わるのだが」
散々俺をバカにし続けた後、理事長は急に真剣な顔となった。
「我が白皇学院は――」
理事長は、白皇学院が積み重ねてきた歴史を語り始める。
古くから良家の子女を預かり、多くの優れた人材を輩出した、素晴らしい学校であるという事を重ねて強弁した。
理事長である自分が、才色兼備の偉大な人物である事を伝えるのも忘れなかった。
「――そういうわけで、我が白皇学院では、教師と生徒が恋仲になるの禁じておる。問答無用で教師は即クビ、生徒は即退学だ。森○童子の曲を流す余裕など与えぬ」
「はあ・・・」
最後の言葉は良く分からなかったが、とにかく不純異性交遊は厳禁のようだ。
そんな事は、わざわざいうまでもない気がする。しかし、その考えは甘かった。
「さあ、今ここで証明するがいい」
「は?」
「一回で理解しろ、バカ者。生徒に手を出さないという証明を今ここで見せるのだ」
理事長はとんでもない事を言い出した。
(なんじゃそりゃ!)
「嘘をついても、私にはわかるぞ」
理事長がうそぶく。無理難題に、俺は悩んだ。
「どうした、早くしろ。ダメならこの場で即、不採用決定だぞ」
俺は絶対、生徒に手を出す事はない。それは神にだって誓える。
しかし、それを今この場で証明する事など出来るはずが無い。
(こんな時・・・あいつならどうする)
俺は雪路の顔を思い浮かべる。
雪路はかつて、常識的に考えれば絶対乗り越えられないような困難に立ち向かい――見事乗り越えた。
とてもワガママで、自分勝手で、メチャクチャな奴だが、そんな性格だからこそ、困難を乗り越える事が出来たともいえる。
その時、俺の頭にある考えが閃いた。
それはとてつもなく危険で、リスクの高い無茶な作戦だったが――。

俺は背広の胸ポケットからあるものを取り出す。
それは合格祈願のお守り代わり。俺は理事長の前に進み出て、それを見せる。
写真を手にした理事長が問う。
「何だ、この写真は?この美少女はどこの誰だ?」
理事長に手渡したのは、肌身離さず持っている、学生時代の思い出の写真。
小学校の頃から腐れ縁の知り合いである、雪路と撮った写真。
「彼女の名前は、雪路と言います。それは昔の写真なんですが」
「ほう。確かに横の学生はお前だな。昔から貧相な顔だ」
暴言を交えつつも、理事長の視線は写真に釘付けだった。雪路に興味津々な様子である。
「俺は、彼女の事が――」
言葉に詰まる。
そこから先をノドの奥からしぼり出すのに、大変苦労した。

「――好きです」
遠くの学校だと、雪路と会う機会が大幅に減ってしまう。
それが嫌だから俺は通える範囲の近い学校で、教員採用を探し続けた。
「だから、生徒に手を出すことはありません」
俺の言葉を聞いた理事長の瞳が、俺の目をじっと見つめた。
真偽を見極めようとしているのか。むろん、今の言葉に嘘偽りはない。
鏡がないので確かめようもないが、俺の瞳にはきっと、曇り一つないだろう。
「…面白い」
一言、そう呟くと理事長は高らかに笑い――なんとその場で、俺に合格を告げた。




こうして俺は、白皇学院の体育教師となる事が決定した。
数日後、居酒屋のカウンター席でまた雪路と会った。
そこで教員採用試験に受かった事を告げると、雪路は目をぱちくりさせて、俺の頬をつねった。
「いだだだ!何すんだよ!」
生ビール片手に、雪路は驚きの表情を浮かべる。
「夢じゃない…もう酔ってんの?」
「まだほとんど飲んでねーだろ。マジで受かったんだよ、白皇学院」
「ええええ!?そんなバカな!不正採用?贈収賄?口利き?」
「してねえよ!」
雪路は俺の合格がなかなか信じられないようだった。無理もない。
家族でさえ、なかなか信じなかった。俺自身も、正直言って信じられない。
あんな理事長だから、後で「冗談だ」と言ってくる可能性はある。
「そうなんだ…受かったんだ…」
雪路が生ビールを飲みながら言う。
「だから何回も言ってるだろ!」

「おめでとう」
雪路は太陽の微笑みを見せる。俺は、完全に不意を突かれた。
(うおっ…こ、これは…)
その昔、俺の心を奪った笑顔は長い年月を経てなお、健在だった。
心臓の鼓動が速くなる。体が熱い。
そのすさまじい破壊力に、俺は体のバランスを崩した。
危うく、椅子から転げ落ちる所だった。
雪路は今、お金がないからお祝いはまた今度、と言ったが、正直言ってこれだけでも充分である。
「ちょっと…いきなりどうしたのよ、まだ全然飲んでないのに。顔も赤いし」
「い、いや、何でもない。大丈夫だ」
俺はウソをついた。全然、大丈夫ではない。雪路の顔がまともに見られない。
「じゃ、見事合格した事だし、めでたいから今日はあんたのおごりね!」
嬉々とした表情で、雪路は酒や料理の注文を追加する。

今度は、本当に椅子から転げ落ちた。

タイトル落ち葉焚き
記事No113
投稿日: 2008/11/02(Sun) 15:32
投稿者双剣士
参照先http://soukensi.net/ss/
 ふぅっ、やっと片付いたぞ。
 ふだん見慣れてる境内も、こういう時になると異様に広く感じるんだよな。
 落ち葉の掃除は巫女のお前の仕事だなんて、父さんも兄貴も勝手なこと言って逃げ出すんだから。
 いくら宿題フルコンプを引き換えにしてると言っても、たった1人でこの境内を掃除するのはさすがにきつすぎる。
 ま、次から次へと新しい葉っぱが落ちてくるんだから、多少手を抜いたってバレやしないし。
 通り道の落ち葉だけをそれなりに適当に払いのけて、通路の脇あたりに落ち葉の山盛りを何個か作っとけば格好もつくだろ。


 おおっす、よく来たな、美希、泉。
 例のブツは買ってきたか? よしよし、そうこなくっちゃな。
 私か? ああ、約束どおり落ち葉は集めておいたぞ。お前たちが来るのを待ってたところだ。
 それじゃ、さっそく始めるとするか。


 ああ、こらこら泉、焦るんじゃないって。
 まだ種火が根付いてきたばっかりだからな。湿った落ち葉が種火にあおられて乾くのを待ってからでないと、火は大きくならないよ。
 チョロ火のうちから放り込んだイモなんて表面が焦げるばっかりで食べられたもんじゃないだろうが。
 え、分かってるけど待ちきれない?
 まったくもう、お前は幼稚園の頃からちっとも変わらないな。


 ところで美希、ヒナのほうはどうだった? 誘ってくれたんだろ?
 え、話を切り出し損ねたって? なんでまた?
 ヒナだったら小一時間もしないうちに仕事終わるだろ? 押し付けて逃げ出してきた私たちが言うのもなんだが。
 ……え、雪路が? 何かを察したように周囲で聞き耳を立ててる気配がしたって?
 なるほど、美希、ナイス判断だ。もし雪路にこの焼きイモ会のことを嗅ぎつけられたら、イモ全部を1人で平らげかねないからな。


 しかしあれだな、ヒナが来ないとなると私たちだけじゃ食べきれないかもな。
 えっ、他のメンバーにも声はかけてみたけどダメだったって?
 千桜はバイトで早く帰った? 愛歌さんは寒空のなか立ち尽くすのは遠慮するって?
 そっかー、それじゃ仕方ないな。でも兄貴を呼んだら雪路と同じパターンになりそうだし、おじいちゃんを焚き火に近づかせるのは危ないしな。
 どっかに暇そうな女の子はいないもんか。……あ、おい、泉どこへ行く?


 おぉ、これはこれは歩君じゃないか。その手に持ってる袋は焼きイモか? そうかそうか君もイモ好きか、歓迎するぞ歩君。
 ナイスだぞ泉、よく歩君を連れてきてくれたな。そういや歩君はうちの神社のクイズ大会クイーンだったっけ、参加資格は十分ある。
 え、何をしてるのかって? 見りゃ分かるだろ、焚き火だよ。落ち葉を燃やすついでに焼きイモを焼いて食べるんだよ。
 ……お、おいおいどうした歩君? 何を泣いて……え、感激した?
 焚き火なんて生で見るの初めてだって? 団地住まいの自分にとってはお店で買うのが当たり前で、焚き火なんて絵本の中でしか見たことないって?
 あ、いやそんなにお礼を言われても……私たちにとっては焚き火なんて子供の頃からの恒例行事だし。


 とか何とか言ってるうちに火が燃え広がってきたな、そろそろいいだろ。イモを入れよう。
 あ、歩君は初めてだから、説明しておいた方がいいかな。
    1.イモはこの串を通してから、焚き火にかざすこと。直接地面に突き立ててもよし、串を手で持ってあぶってもよし。
    2.自分で焼いたイモは、必ず自分で食べること。他人の串を盗むのは反則。
 焼きイモごときでルールなんてと思うかもだけど、子供のころは串なしでイモを手掴みしようとして火傷するやつとか、
自分のが黒コゲばかりだからって他の人の生焼けイモを奪い取ろうとするやつがいたもんでな。こういう暗黙の了解ってのができたんだ。
 ……ん、泉、なんで涙目でこっちを睨む? 誰もお前のことだなんて言ってないだろ?


 どうだ歩君、この煙の匂い? 石焼きイモとは違って、焦げたみたいな臭さがあるだろ?
 これこそがお店の焼きイモとは違う、自然の風合いってやつだよ。この手作りな感じがたまらないんだよな。
 もちろん焼くのを失敗する時もあるし、生焼けと焦げ目が混ざり合って美味しいところは少しだけってこともあるけど、
だからこそ美味しいところの味は格別だし、次こそは上手に焼けるよう頑張ろうって気になるってもんじゃないか。
 ……え、意外? お金持ちはそういう苦労と無縁だと思ってたって?
 心外だな歩君。望めば簡単にプロの味を食べられる私たちだからこそ、こういう苦労が贅沢ってもんじゃないか。
 さ、そろそろ焼けたぞ。ほら一口だけかじってごらん、私のイモをさ……これが落ち葉集め十余年のベテランの味ってもんだ。


          **


 はふはふ、よぉしみんなペースもだいぶ上がって来たよな? それじゃそろそろ、本日のメインイベントと行きますか。
 実はみんなには内緒で……ハヤ太君をここに呼んだのだ! ついさっき携帯でメールを送ったから、もうすぐ来るよ。
 ふっふっふっ、君たち手放しで喜んでいていいのかな?
 君たちは今までたっぷりと焼きイモを食べていたのだぞ? お腹の中に恥ずかしいガスが溜まっているのだぞ?
 このタイミングで男の子を呼ぶことがどういう事態を引き起こすか、想像できないわけではあるまい?
 はぁーっはっはっはっ、見よこの完璧な策略を! 貴公らは既に我が策略の糸にからめ取られていたのだ!
 ……鬼呼ばわりとは心外だな美希。泉はいじめられるのが好きなんだから、これくらいでいいんだよ。巻き添えの歩君には気の毒だけどな。


 よぉ、待ってたぞハヤ太君。ナギ先生もお供に連れてきたか。えっ主従が逆? いいんだいいんだ細かいことは。
 さぁ輪に入ってくれ、じゃんじゃん食べてくれ。ハヤ太君だったら胃袋は女の子並みだろうから遠慮することないぞ。
 あぁ、すまんな気が回らなくて。せっかく寒い中を駆けつけてくれたんだから焼けるのを待ってなんかいられないよな。
ほら泉、ハヤ太君とナギリンに焼けた分を回してあげなよ。
 ん? どうしたどうした、泉にしては妙に無口じゃないか?
 おやおや、歩君は喜ぶと思ってたのに、なんか辛そうじゃないか? 顔に汗までかいて。
 なにか我慢してることでもあるのか? せっかくハヤ太君がいるんだ、体調が悪いなら介抱してもらったらどうだ?

  ぷぅ。

 な、なんだよ美希、怖い顔でこっちを見て? 私の顔に何かついてるか?
 歩君もどうした、急にこっちに視線を向けて? ハヤ太君の方を見てなくていいのか?
 えぇい、白状してしまえ泉、いまのお前だろ? 恥ずかしがったって分かってるんだぞ!

 ……すみませんすみません私ですごめんなさい今のは私ですオンナとして失格です笑ってください馬鹿にしてください蔑んでください……
 あれ、ハヤ太君いつのまに傍に? 生理現象だから仕方ない? 自分もするんだから恥ずかしくなんかない?
 逆にこういうとこが見られて、朝風さんのことが身近になったような気がするって?
 ……う、うぅ、ハヤ太君いい子だなぁ。これが男の子の器量ってもんなんだなぁ。さすがは私にゾッコンなだけはあるな。

  ぷぅ。

 い、今のは違うぞ、私じゃないぞ? 誰だ泉か、歩君か?……って、えっ、美希、お前か今の?
 ……あ、ごめんハヤ太君。責める気はないし他人の失敗を喜んでるわけでもないんだ。そうだよな、私にはそんな権利ないよな。
 そうだそうだ、気にするなよ美希、これは単なる生理現象……ってハヤ太君の移動早っ! いつのまに美希とあんな距離にまで!
 おっ、自分のお尻に手を当てて鼻で嗅いでのけ反るジェスチャーまで! 音はしなくても自分もやってるというアピールだな。
自分も泥にまみれることで美希の劣等感を軽減しようという作戦だな! さすがは紳士のハヤ太君、そこに痺れる憧れるぅ!

  ぷぅ。

 今度は歩君かっ!
 おおっ、ぽっと頬を染めたお下げ髪が可愛いなっ! ハヤ太君が気にしないと分かってはいても赤面してしまう、これぞ微妙な乙女心!
 駆け寄るハヤ太君に赤い顔のまま照れた笑いを浮かべる歩君、落ち込んでる様子がないのが救いだな。
 それにしてもハヤ太君も大変だな、こうやって次々とフォローして回らなきゃならないなんて。

  ぷぅ。

 真打ちが来たーっ!!
 顔に手を当てて逃げ出そうとする泉、慌ててそれを追いかけるハヤ太君。泉の足で逃げ切れるわけなんて無いけど、
たぶんあの子は意識せずにやってるんだろうな。そういうのを素のままやれるのが泉の魅力なんだろうな。
 おっと、涙目の泉を慰めようとハヤ太君が肩に手を置いているぞっ! 狙った通りの微笑ましい光景なんだけど、
なんか腹が立つなぁ。泉をからかって遊ぶつもりだったのにこの悔しさはなんだ? 私も変に誤魔化したりせずに、
顔を隠してしゃがみこむくらいの振舞いを見せた方が良かったのかな?


 あれ、ナギリンどうした? 急にがつがつと焼きイモにかじりつくなんて?


Fin.

タイトルメモリーズノットフェイド
記事No114
投稿日: 2008/11/02(Sun) 20:24
投稿者絶対自由


 秋と云う季節には様々な過し方があると思う。
 芸術の秋――絵を描くなど様々だ。ナギがやりそうなことだな。いやアイツの場合は違うか。芸術……なのか? あれは。
 食欲の秋――何処からか、焼き芋屋の聞き慣れた声が響いている。歩とか今頃追い掛けてるかもな……
 スポーツの秋――ま、年中無休引きこもっているような連中しか知らないオレには解らないね。ああ、でもあの生徒会長なら今頃練習しているかもな、きっと。
 さて、そんな秋の一日な訳だが……どういう訳か、目の前にはナギが居るわけで……
「何で此処に居るんだ?」
 新しく入荷したビデオやDVDのチェックをしながらオレは聞いた。こいつが此処に来るなんて余程の時か、退屈な時にしかこない。ビデオやDVDをレンタルする時には何時もハヤテかマリアさんだからな、本人が来ることは滅多にない。
「何故って、お前に用があるからだ。用が無かったら私は来ないぞ、余程のことが無い限り」
 だろうな。
「私はだな……これを聞きに来たんだ」
 と、ナギは珍しくハヤテに頼る事無くオレに頼っている。どういう風の吹き回しか。
 ナギが取り出したのは一つのカメラだ。何時だったか、ナギが初めての給料で買ったやつだ。まだ持っているとは驚きだ。コイツは飽きっぽいからな、もう埋れていたかと思ったけどな。
「失礼な! 私はそんな事はしない!」
 そうかね。
 大体、カメラのことなら随分前に説明しただろうが。それに忘れたんならハヤテに聞けばいいじゃねぇか。態々オレの所まで来なくても。
「うるさいっ! どうでもいいだろう!」
 で、そこでなんでキレるんだよ……まぁ良いか。どうせ整理なんて何時でも出来るし、したとしてもサキがぶっ飛ばしちまう可能性もあるからな……。で? 何が聞きたいんだ?
「うむ。秋と云う事で、紅葉の写真でも撮って見ようと思ってな。それでだ、お前に上手い風景写真の撮り方を教えてもらおうと思って来たんだ」
 だから、そういうのはハヤテに聞けよ。と、言いたくなったが、まぁ大方良いカッコしたいとか云う考えだろうから、その辺りは無視するとするか。
「風景写真と言ってもな……風景写真つうのは、写真の撮り手と、その写真を見たヤツが感動を共有できればそれで良い写真なんだよ。他の写真もそうだ、使うマシンに拘りがあったとしても最終的にはそれがものを言う。
 お前はその写真で撮りたいんだろ?」
 ナギはコクリと肯いた。
「ならお前が、観て、感動した、これを残しておきたいって思った写真を撮ってみろよ。写真なんて、それで良いんだよ」
 むぅ、と腕を組んでナギは唸る。
 その内納得したのか、ナギはそのまま、邪魔したな、と言って出て行った。全く今の言葉の為だけに来たのか? DVDの一本ぐらい借りてけよ。折角ガン●ム00のブルーレイDVD入荷したってのに……

 ……と、まぁ、ナギが出て行った後思ったわけだが……
 オレも写真の一つや二つ撮って見るか……久しぶりに。
「サキー」
 取り敢えず行くんだったらサキも連れて行くか、と云う念に駆られてオレはサキを呼ぶ。確か今倉庫の方で他の入荷したDVDを整理している筈なんだが……
 まさか、また滅茶苦茶にしてんじゃねぇだろうな……
 倉庫に行くと、案の定、ビデオとDVDの山に埋れているサキが居た。おい! 大丈夫か!?
「ああ若。すみません」
「いや、怪我は無いか?」
 散らばったビデオやDVDを拾いながらサキを起こす。全くしょうがないヤツだな。ま、今に始まったことじゃねぇけど。
「……若、今とても失礼なことを考えませんでした?」
「な、何でそう思うんだよ」
「女の勘です」
 使いどころを間違えているような気がするけどな……女の勘とやらを。
「そんなことより! 写真撮りに行くぞ! 写真!」
 他所を向いて叫ぶ。
「は? 写真、ですか?」
「ああ。偶にはいいだろ? それにお前の写真って、あんまないしさ」
 そう理由を作って、オレとサキは店を出た。どうせ客なんて来ないさ、悲しいことだけどな。

     ■■■

 場所は公園にした。周りの木の葉が紅葉で紅や黄に染まっている。今が丁度見事と云う訳だ。もう少しすると今度は散り始める。まぁ今でも結構散ってるけどな。
「此処で良いか。サキ、其処の木の下に立ってくれよ」
「あ、はい。きゃっ!」
 あーあ、また転んでやがる。本当に何も無いところでも転ぶんだな。
「大丈夫か?」
「はい……すみません」
 全く……これだからほっとけねーんだよ。何時まで経ってもコイツはこうドジで、こけてばかりで――。偶に何でだか知らねぇけどすねたり、怒ったり。コイツのことはしっかりオレが守ってやんねぇと……
 って、何考えてんだ、オレ!
 今は写真だ! 写真!
 カメラを構え、ピントを合わせる。
「サキ、なんかポーズとってもいいぞ」
 はい、と返してくる。と、サキは別段ポーズを取るわけでも無く、片手を上げ、ピースを作って、笑顔でカメラを見る。
 ……まぁいいか。
 オレはカメラのボタンを押して、シャッターを切った。

     ■■■

「で? どんな写真が撮れたんだ?」
 DVDを借りに来たナギと一緒に来たハヤテに聞くことにした。ナギは今頃エヴァンゲ●ヲンのDVDやスク●イドのDVDなんかを見てるんだろうよ。
 ハヤテは持ち前の笑顔をそのままに、懐に入っていた写真をオレに見せた。
「いやぁ、良く撮れてるでしょ?」
 確かにまぁ、良く撮れているな、ナギにしては。……てかこれ敷地内だろ!? 外になんて出てないだろ!?
「流石にまた山に行くわけにも行きませんし……クマが出てくるかもしれませんよ?」
 もう直ぐ冬眠の季節だからな。餌を蓄えている可能性が高いが……それにしたって手ェ抜き過ぎだろう!
「まぁお嬢様にはそれが精一杯と云う事で……」
 確かにな、ナギにはそれが精一杯だろうな。納得してオレはナギが持って来た大量のDVDを袋に詰める。……ておい、まだ借りるのかよ。まぁいいけどよ。
「若ぁ! これもです、ってきゃあ!」
 またやりやがった。仕方ねぇな。
 オレはサキの元に駆けて行って、ぶちまけたDVDを拾い始める。
 昔から変わらねぇ、あのポンコツメイド。
 放っておけねえ、大切な家族。


 撮った写真は小さい額を買って中に入れておいた。
 何時か写真は色あせてしまうかもしんねぇけど……

 思い出だけは色あせない……なんて、柄じゃねぇや。

タイトル第17回批評チャット会ログ
記事No115
投稿日: 2008/11/03(Mon) 00:27
投稿者双剣士
参照先http://soukensi.net/ss/
11/2(日曜)に開催された、批評チャット会のログを公開します。
 今回は六角坊さんが初参加してくれました。文字チャット初参加ということで
慣れないところも散見しましたが、以前から自分のブログで雪路SSを書いて
おられる方だけに作品についてはほとんど言うことなし。第11回以来久々の
3作品批評というのにスムーズに話を進めることが出来ました。
 ただ管理人の自分が喋りすぎて、他のお2人が遠慮しちゃってるような
感じがしました。次回からはしっかり進行役を勤めなきゃ。

http://soukensi.net/odai/chat/chatlog17.htm